カナダの野菜や果物を使ったベジタリアン・クッキングガイド
ジュニア野菜ソムリエ 沢野さんの誌面
ベジタリアン教室
トロントでベジタリアン教室を主宰している沢野さん。日本・石川県のベジタリアン・レストランで腕を磨いた沢野さんにカナダやオンタリオの野菜やフルーツ、料理の魅力についてレクチャーしてもらった。
多くのレストランでベジタリアンのオプションもありベジタリアンだからと言って大変だと思うことは私はあまり感じない。
トロントのベジタリアン専門のレストランでは多文化らしく豆で作られたベジバーガー、フォーやパスタなどの麺類、ビーガンのチーズを使ったガレットや蕎麦が入ったサラダ、野菜の玄米お寿司などいろいろな国のエッセンスが入ったベジタリアン料理が楽しめる。
その中でも印象に残っているのがトロントに来てから初めて知ったファラフェルという中東のベジタリアン料理だ。この料理は簡単に言えばヒヨコ豆のコロッケでスパイスや香草が使われている。ピタパンにたっぷりの野菜と共に挟み、タヒニと呼ばれる白胡麻のソースをかけて食べるが、植物性100%と思えないほどボリュームもあり大好きなベジタリアン料理になった。
ファラフェルという言葉すら聞いた事がなかったため新しく出来た流行の料理かと思っていたがファラフェルの歴史は深くイスラエル建国時まで遡る。食べられている地域も広範囲に渡り、国によって使う豆も若干異なったりと面白い。今まで多くの人に愛されてきた料理だというのが頷ける。
そんなファラフェルはトロントのあちこちにありファーストフード感覚で親しまれている。日本でも気軽にファラフェルが食べられる日がくることを願う。
トロントは世界の美味しいベジタリアン料理で溢れているように思う。これからの新しいベジタリアン料理との出会いにワクワクする。私はこちらに来る前にトロントのベジタリアンレストランでは主に何が使われているのか気になっていたが意外にも豆腐が人気らしく豆腐や厚揚げがよく使われている事に少し驚いた。
日本では大豆で出来たお肉のような食感のソイミートがよく使われ、肉の食感、味に近付けていかにベジタリアンではない人でも満足できるかということに力を入れているように思うがトロントはいたってシンプルである。
そしてカナダに住んでいるのだから北米原産の野菜を食べるのも私の楽しみのひとつ。私の一番好きな言葉で身土不二という言葉がある。人間の身体と土地は切り離せない関係にあると言う考え方で、その土地で育ってきた野菜や果物はその土地に住む人の体に一番合っている。
ベリーやこごみ、グランドナッツが北米原産の野菜だが特にグランドナッツはインディアンのスタミナ源と言われたほど栄養価が高い。厳しい冬もこの大地の恵みを受けて育った野菜で体の中から温かくして乗り越えたい。
毎日新しい発見ばかりで飽きることのないトロントのベジタリアンライフをこれからも満喫していきたい
つくってみよう「ベジタリアン料理!」
■ オイスターマッシュルームとジャガイモのトルティージャ
(直径9cmのプチフライパン)
卵……6個
グリュイエールチーズ……60g
オイスターマッシュルーム……150g
ジャガイモ……小1個
塩、コショウ……少々
サラダ油……適量
オリーブオイル……適量
- ジャガイモは皮をむき、5ミリの輪切りにして水にさらす。オイスターマッシュルームは手でさく。
- 熱したフライパンにオリーブオイルを入れオイスターマッシュルームと水気をよく切ったジャガイモを炒め塩こしょうを少々加える。ジャガイモが透明になったら火を止めてあら熱を取る。
- ボウルにグリュイエールチーズをすりおろし、卵、炒めたジャガイモとオイスターマッシュルーム、塩をひとつまみ加えてよく混ぜる。
- フライパンを中火で熱し油を入れる。フライパンの内側にも油を塗っておく。3を流し入れ菜箸で数回かき混ぜる。ごく弱火にしアルミホイルをしっかりかぶせて卵が固まるまで50分程じっくり火を通す。
- 表面まで固まってきたらフライパンの直径よりも大きいお皿をかぶせ、フライパンごとひっくり返しフライ返しでフライパンにそっと戻す。5分程焼いたら完成。お好みでエストラゴンのアイオリソースを添える。
「オイスターマッシュルーム」は、日本では本ヒラタケと呼ばれるキノコ。別名アワビタケとも呼ばれるように歯ごたえがあり風味も良い。
■ ケールサラダ
ケール……4枚
ゆで卵……1個
トマト……1/2個
アボカド……1/2個
クルトン……適量
エストラゴンの
アイオリソース……大さじ3
パルミジャーノチーズ……適量
コショウ……適量
塩……ふたつまみ
レモン……1/4個
- ケールはボウルに水をためてきれいに水洗いし、水気をよく切る。固い茎は取り除き葉を食べやすい大きさにちぎってボウルに入れる。
- 塩をふたつまみ入れて少ししんなりするまでよく揉む。コショウとレモンも絞り入れてさらによく揉む。
- 器に盛りつけ、四等分に切ったゆで卵、スライスしたアボカドとトマト、お好みでクルトンを散らす。アイオリソースをかけ、パルミジャーノチーズをたっぷりかける。
青汁の原料として知られるケールはキャベツの原種に近い結球しない品種です。ビタミンCとカロテンが豊富。
■ エストラゴンの簡単アイオリソース
マヨネーズ……大さじ3
オリーブオイル……大さじ1
ニンニク……1/2かけ
エストラゴンのみじん切り……小さじ1
- ニンニクはすりおろし、エストラゴンはみじん切りにする。マヨネーズとオリーブオイルを加えてよく混ぜる。
「エストラゴン」は、タラゴンとも呼ばれ、フランス料理によく使われるハーブ。ピリっとした辛みがあり香りも強いので風味付けに使えます。食欲増進や胃腸を整える効果、鎮痛作用もあるといわれています。
■ フムス
乾燥ひよこ豆……1/4カップ(50g)
タヒニ(白ごまペースト)……大さじ2
オリーブオイル……大さじ2
ひよこ豆の煮汁……大さじ3〜
レモン汁……小さじ1
ニンニク……1/2かけ
塩……小さじ1/3
パプリカパウダー……少々
仕上げのオリーブオイル……適量
パセリ……適量
- 乾燥ひよこ豆は一晩水につけておく。
- 水を替え、塩を少々入れて中火から弱火で30分茹でる。煮汁は残しておく。
- フードプロセッサーに煮汁を切ったひよこ豆とニンニクを入れて回す。
- タヒニ、レモン汁、オリーブオイル、塩を入れて回す。煮汁を入れて固さを調節する。
- お皿に盛りつけてパセリを飾りオリーブオイル、パプリカパウダーをかける。
トロントのスーパーで手に入るタヒニは濃厚な白ごまペースト。油が分離していますがかき混ぜて使います。甘みを加えてパンに塗ったり、胡麻和えやドレッシングにも出来る万能調味料です。
■ スプリットピースープ
(2人分)
スプリットピー……90g
たまねぎ……1/8個
ニンニク……1/2かけ
にんじん……小1/2本
セロリ……1/3本
ズッキーニ……1/4本
ソイハム……2枚
水……400ml
オリーブオイル……大さじ1
ローリエ……1枚
タイム……少々
白ワイン……30ml
塩、コショウ……適量
パルミジャーノレッジャーノ……お好みで
- ニンニクはみじん切りにしその他の野菜、ソイハムは5mm程度に角切りにする。豆は洗ってザルにあげる。
- 鍋にオリーブオイルを熱し、たまねぎ、ニンニクを香りが出るまで炒める。カットした野菜とハーブを入れ白ワインを加えて蓋をしてしばらく蒸し煮にする。
- 水と豆を入れて煮込み、沸騰したら蓋をして1時間程煮込む。灰汁があれば取る。
- ソイハムを入れて塩、コショウで味を整えしばらく蒸らす。
- スープ皿に盛りつけお好みでパルミジャーノレッジャーノをかけて完成。
「スプリットピー」とは乾かして2つに割ったエンドウ豆で水戻しの必要がなくすぐに調理出来る豆です。カナダの家庭料理で寒い冬にピッタリです。
■ ほおずきの実とリンゴのフィロパイ
(マフィン型6個分)
リンゴ……小2個
ほおずきの実……15個
きび砂糖……大さじ2
フィロ……3枚
オリーブオイル……大さじ2
カボチャの種……飾り用
アプリコットジャム……適量
【クレム・ダマンド】
オリーブオイル……20g
きび砂糖……20g
卵……1/2個
アーモンドパウダー……20g
ラム酒……小さじ1
- リンゴ2個分を5mmの角切りにし小鍋にリンゴと砂糖を入れて中火で水分がなくなるまで炒める。
- オーブンは180度に温めておく。
- その間にクレム・ダマンドを作る。ボウルにオリーブオイルを計り入れ砂糖を加えてよく混ぜる。卵はよく溶いて少しずつ入れ、よく混ぜる。
- ラム酒、アーモンドパウダーも加えて混ぜる。
- フィロは長方形にピザカッター等を使ってカットし、はけで1枚ずつオリーブオイルを塗り型にカップの形になるように何度も重ねて入れる。
- ほおずきの実は横に半分に切る。
- フィロで作った型にクレム・ダマンド、リンゴのフィリング、切ったほおずきの実を乗せアプリコットジャムを塗り、30分焼く。焦げやすいので途中で様子を見ながらフィロがきつね色になったらアルミホイルをかぶせる。
- 焼き上がったら刻んだカボチャの種を飾る。
トロントのファーマーズマーケットでよく見る食用ほおずきですが皮ごと食べられて甘酸っぱい味とフルーティーな香りがします。ビタミンAや鉄分が多く含まれています。
「フィロ」とはパイ生地の一種。小麦粉と水が原料の紙のように薄い生地。オイルを塗り重ねて焼くことでさくさくに。冷凍で売られています。
■ レモンクッキー
レモン……1/2個
レモン汁……小さじ1
きび砂糖……30g
油……20g
水……大さじ1
薄力粉……80g
アーモンドプードル……20g
【アイシング】
粉砂糖……50g
レモン汁……10g
エディブルフラワー……お好みで
- ボウルにレモンの皮の表面をすりおろしたもの、レモン汁、砂糖、油、水を入れ乳化するまで混ぜる。
- 薄力粉とアーモンドプードルを振るい入れ、ヘラでさっくりと粉っぽさがなくなるまで混ぜる。混ぜすぎると固くなるので注意。
- 練らないようにひとつにまとめラップの上で厚さ3mmに伸ばし、型で抜く。生地が固くなるので何度も伸ばし直さないようにする。
- 170℃に熱したオーブンで9分、フチにほんのり色が付くまで焼く。
- 天板の上で冷ます。
- ボウルに粉砂糖を振るい入れ、レモン汁を加えてゴムベラでトロっとするまで混ぜる。
- クッキーにアイシングを塗り天板に並べる。200℃のオーブンで50〜60秒入れて乾かす。
- エディブルフラワーやカボチャの種を飾る。
沢野 亜伊子
1989年石川生まれ。短大で栄養士免許を習得後、金沢のレストランやベジタリアンレストランにて調理やメニュー開発を行う。休みの日には石川県耕稼塾にて実践的な農業を学ぶ。特技は枯れ葉から堆肥を作ること。2012年ジュニア野菜ソムリエ習得。2013年ジュニアオリーブオイルソムリエ習得。昨年からトロントで野菜ソムリエ協会認定のベジタリアン料理教室を開催している。