世界がアートで満たされていったなら 第25章
「IndependentでLocalなヒーロー、がんばれラフィ!」
よく派遣社員が正社員を目指してがんばるという話を聞く。正社員になれば給与などあらゆる面でメリットがある。しかし、組織に所属する事で確実に失う自由があるのも事実だ。アートの世界では自由に思考を巡らせ、自分のペースで活動する事が何よりも大事に思える時がある。
そんな自由の元、ケンジントン・マーケットを拠点に20年間も独自の発想と企画力で、トロントならではの文化を発信しているインデペンデントでローカルなキュレーターがいる。ラフィ・ガナゴーニアンがその人。デザインエクスチェンジで開催された、日本の人形・おもちゃなどをカナダに紹介したTokyo Dolls展や日本とカナダのインディーファッションショーであるNo Kimono展、ポップカルチャーの文脈で性について追求したExplicit Fantastic展、インドの60&70年代のタマーシャ様式の手書きのビルボードの展覧会であるBollywood、TIFFでのスーク・イン・リーやブルース・ル・ブルースの写真展、企業のアートコンサルティング、また、ケンジントンの自宅の一部を使ってKeep6 というコマーシャル・ギャラリーもやっている(自身の転居などに関わって場所を数回変更)。華麗に思えるその活動歴だが、自身で予算作成から作家選定まで全てやっているのだから、大変なものである。特に経済的な部分。しかし、美術館のキュレーターになることで定期収入が倍増しても、自由な発想で絶妙のタイミングでポップなプロジェクトを進めるのは難しくなってくる。いわゆる美術館の白壁の美しいスペースでの展覧会は、ここ10年来、批評の的になっていて「インスティチューショナリズム」と呼ばれている。AGOの従業員が総勢で500名ほどだから、経営を考えると来館者数でノルマを超えられるかどうかが一番の懸案事項になってしまっている=あまりクリエーティブな企画は望めない、という事。しかし、個人で進めるには総予算が限られてくるので、、、企画者の人脈が鍵を握る。通常到底頼めないようなアーティストにドンピシャのタイミングで参加してもらうには、、、20年の活動歴はあなどれません。
そんなラフィが、5月末より立ち上げたのが、「ケンジントンマーケット・アートフェア」。クイーン西通りなど、アーティストの多く居住している地域ではいわゆるオープンスタジオやアートウォークが盛んだが、未だケンジントンマーケットでは行なわれていない。ケンジントンはトロント随一の観光スポットになっているが、今までにユダヤ系移民、ジャマイカ系移民、中国系移民などがその文化に彩りを与え、カナダを代表する物書きやミュージシャン、アーティストが愛する町という事でもよく知られている。残念だが、そんな町にも大企業のフランチャイズが侵入を考えていて、それに対抗するために地元の有志が定期的に会合を開き、町を守ろうとしている。その一環で行なわれているのが、「Pedestrians Sundays」で、いわゆるホコ天。そのホコ天で先出のアートフェアも開催される。古着屋あり、市場あり、ストリートライブミュージックあり、パティオカフェあり、アートあり、、、ありありな素敵な日曜日は、ぜひケンジントンに!! ラフィの活動は長い年月をかけて確実に人々に伝わっているよ。。。ヒーロー、だから負けんな(お互いにね)!
ケンジントンマーケット・アートフェアについて詳しくは、keep6.ca/kmaf
Today’s his Work
アリスの歌舞伎町
『FUKUSHIMA アリスの迷い込んだ不思議の国』シリーズの続編で、東京都新宿区歌舞伎町の怪しい界隈に福島からアリスが迷い込んでしまったという設定。ケンジントンマーケット・アートフェアにて展示販売される。
武谷大介 Daisuke Takeya
トロントを拠点に活動するアーティスト。現代社会の妥当性を検証するプロセスを通じて、その隠された二面性を作品として表現している。ペインティング、立体作品、インスタレーションなどその作品形態は多様で、国際的に多岐に渡る活動を展開。展覧会に、くうちゅう美術館、石巻線アートリンク、OuUnPo ゴジラと不死鳥、六本木アートナイト2013、福島現代美術ビエンナーレ2012、 MOCCA、 国際交流基金トロント日本文化センター、在カナダ日本国大使館、プーチコーブファンデーション、ニュイブロンシュ(2006,2007)、六本木ヒルズクラブ、森美術館、京都芸術センター、ワグナー大学ギャラリー、SVAギャラリー、ソウルオークション、在日本カナダ大使館内高円宮殿下記念ギャラリー、北九州市立美術館アネックス、セゾンアートプログラム/セゾン現代美術館、テート東京レジデンシーなどがある。
その他の活動に、大地プロジェクト共同ディレクター、遠足プロジェクトキュレーター、女川アートシーズン実行委員、明日:アーティストフォージャパン共同ディレクター、元アートバウンド大使 、元日系文化会館内現代美術館プログラミングディレクター、元にほんごアートコンテスト実行委員長、元JAVAリーダーなど、アートを媒体としたコミュニティーの活性化に取り組んでいる。 カナダでのレプレゼンテーションは、クリストファーカッツギャラリー(www.cuttsgallery.com)、 著書に「こどもの絵(一茎書房)」がある。
www.daisuketakeya.com