世界がアートで満たされていったなら 第33章
性とアート。SEXは「ゆめかわいい」?
yumemagic/より引用
セックス・ドラッグ&ロックンロール!!これはもう大昔のファンタジーの世界。現代は、もっとクール・クリーン&賢い。若者は何かに熱中するような世界観をもはや持ち合わせていない・・・と思いきや実はそうでもないらしい。世界各国で熱狂的なファンを獲得している日本のKAWAII文化の中に、かなり今時のおじさんのメンタリティーと近い動きがあるらしい。 はあ~?と言われちゃいそうですが、どうなんでしょう?
国をあげて推進されているというカワイイ文化。一見、浅はかだなと思っていたのだが、最近は細分化が進いんでいるらしく、その一部の動きは現代社会に対する鋭い洞察がなされている。そこに政治経済ネタ好きの今のおじさん世代(昔はガチロックな方たちも)とJK(女子高生)世代を含む20代前後の女性との同等な価値観を垣間みる事が出来る。
「ゆめかわいい」というカワイイ文化の中での新しい動きがそれである。今のところ、他のカワイイ文化と同じように主にファッションやデザイン上の表現なのだが、主な特徴は、「メルヘン+病み」の表現の形であること、 紫、ピンク、青、水色などのパルテルカラーを基調としている事、月や星、ほぼ信仰とは関係ない十字架や六芒星などの宗教のイコンなどがカワイイ表現されていることなどである。
筆者が注目したいのは、表面のカワイイ部分ではなくて、題材となっている病みの表現の部分。 セックスや人間の堕落、錠剤(ドラッグ)のオーバードーズの表現を絡めている・・・って当時のロックンロールと一緒だ(現代のおやじたちよ~!)!!やはり新しい表現の出現には同等の要素が含まれるものなのだろうか。社会でマジョリティーになれないカワイイ文化の担い手の中で、逆境や屈折からメルヘンを求める新しい価値観を持つ人たちが出て来たという事なのだろう。彼女らに話を聞くと、どうやら、コスプレイヤーたちや海外で人気のKAWAII文化とは一線を画するという事らしく・・・例えば、精子が卵子に取り込まれるその瞬間がデザインされ、水玉模様のようなシュシュとして使われていたり、ゆめかわいいキャラがパンツ丸出し、という表現が超かわいいのだそうだ。
所変わって、おじいちゃん、おばあちゃんの原宿と呼ばれる巣鴨。毎日大勢のお年寄りで賑わっている。地蔵通り商店街は、若者に人気の原宿の竹下通りにあたるともいわれている。おじいちゃん、おばあちゃんの好きそうなファッション店や靴屋さんやおせんべい屋さんや食堂と並んで、幸福の赤パンツが、恥ずかしげもなく堂々と売られている。そういえば、江戸の頃はふんどし一枚で人前に出るのは普通の事だった。ふんどし(赤パンツ)丸出しとゆめかわいいパンツ丸出し表現には共通点がありと思うのは、筆者だけではないだろう。 2013~14年にイギリスの大英博物館で開催され大絶賛された「大春画展」で展示された作品のような日常の春画は、実は嫁入り道具として庶民が結婚する時に持参する風習があり、性教育の教材としても重宝されていたのだそうだ。当時の娘たちが「この春画超かわいい!」と盛り上がっていたとしても、想像に難しい事ではない。
停滞気味のKAWAII文化の先を切り開いて行くのは、ひょっとするとこの「ゆめかわいい」動き、あるいは、その先にあるものなのかもしれない。その動きは、自由な表現が可能な社会あっての賜物であり、ポルノグラフィーとして制限されるべきものではないだろう。
Today’s his WORK
Abandon
1990’s, oil on canvas, approx. 180 x 130 cm, private collection, the U.S.A.
ニューヨークのスクールオブビジュアルアーツ在学中に制作された人物画。写真を使わずに実際にモデルを見ながら描かれた作品。他の多くの人物画とともにアメリカのコレクターに収蔵された。
武谷大介 Daisuke Takeya
トロントを拠点に活動するアーティスト。現代社会の妥当性を検証するプロセスを通じて、その隠された二面性を作品として表現している。ペインティング、立体作品、インスタレーションなどその作品形態は多様で、国際的に多岐に渡る活動を展開。展覧会に、くうちゅう美術館、石巻線アートリンク、OuUnPo ゴジラと不死鳥、六本木アートナイト2013、福島現代美術ビエンナーレ2012、 MOCCA、 国際交流基金トロント日本文化センター、在カナダ日本国大使館、プーチコーブファンデーション、ニュイブロンシュ(2006,2007)、六本木ヒルズクラブ、森美術館、京都芸術センター、ワグナー大学ギャラリー、SVAギャラリー、ソウルオークション、在日本カナダ大使館内高円宮殿下記念ギャラリー、北九州市立美術館アネックス、セゾンアートプログラム/セゾン現代美術館、テート東京レジデンシーなどがある。
その他の活動に、大地プロジェクト共同ディレクター、遠足プロジェクトキュレーター、女川アートシーズン実行委員、明日:アーティストフォージャパン共同ディレクター、元アートバウンド大使 、元日系文化会館内現代美術館プログラミングディレクター、元にほんごアートコンテスト実行委員長、元JAVAリーダーなど、アートを媒体としたコミュニティーの活性化に取り組んでいる。 カナダでのレプレゼンテーションは、クリストファーカッツギャラリー(www.cuttsgallery.com)、 著書に「こどもの絵(一茎書房)」がある。
www.daisuketakeya.com