世界がアートで満たされていったなら 第32章
「本当にJe Suis Charlie? 批評という抑制力の必要性。」
1月7日にパリの新聞社シャルリーエブド(Charlie Hebdo)が襲撃され、12名が失命した事件は、世界を震撼させた。不特定多数を狙ったテロではなく、風刺画を専門とする新聞社を狙った殺人事件。この事件がきっかけで多くの問題が表面化し、世界各国で物議を醸している。
シャルリーエブド風刺画に問題がなかったか、、、ということが、広く表現を営みとする人たちの間では議論されているようだ。風刺画としてもかなり極端な表現があり、憤りを感じた人は少なくないかもしれない。だとしても、そこに殺人を正当化出来る理由はないだろう。しかし、それでも非暴力のペンの力に対して暴力が制裁を加えるという悲惨な出来事が起きた事に対して、我々はどうしていけばいいのだろうか。自粛の道を選ぶのか、徹底的に表現の自由にこだわるのか。
ソーシャルメディアを通じて、人々は、「Je Suis Charlie=私もシャルリーだ」と宣言する事で、言論の自由が不滅である事、死亡した12人への追悼、そして反テロリズムの武器を持つ事を選んだ。。。しかし、それは、一部の人々であったのかも知れない。反発するように今度は、「Je Ne Suis Pas Charlie=表現の自由は無制限の自由ではない」という人々が現れた。
シャルリーエブドが取った答えは、更なる疑問を投げかけるとことなった。再開号にイスラム教開祖の預言者ムハンマドの風刺画を載せたのだ。 そして、1月16日には「Je Suis Muhanmad=私はムハンマド」という一連の動きに対するデモがイスラム諸国でわき起こった。
敵対する考え方が衝突しエスカレートした先にあるものは、破壊でしかない。何事でもそうかもしれないが、共存して均衡を保つということが非常に大切になってくるように思える。均衡を保つという事は、表現の自由を規制して制限するということでは断じてない。官が民を規制するという構図の先にもまた破壊が待っているからだ。ここで言う破壊とは、行き着くところ戦争である。
では、規制をせずにどのように均衡を保つ事が出来るのだろう。それは、冷静に物事を見極める批評に他ならない。
批評とは、表現の自由に対する、同じく自由な表現の一つの形である。表現対表現の構図であれば、より理にかなった表現が広がりを見せ、また広がりを見せたその表現に対しても批評があるので、均衡というよりは、動きのあるオーガニックなイノベーションへと生産的に形を変えて行く事が出来るのではないだろうか。
日本の某テレビ番組では「フランス連続テロ」という見出しで特集を組んでいた。フランスに行っても大丈夫?日本国内への影響は?フランスは複雑な移民の状況。日本の少子高齢化で移民は増えるだろう。その時に人種や宗教の異なる人たちとうまくやっていけるのだろうか、、、と専門家がゲストに語っていた。シャルリーエブド事件は、日本とアジア周辺諸国、或いはカナダでの日系カナダ人コミュニティにとっても他人事ではない。あなたはこの事件どう考えますか?
Today’s his WORK
debris/瓦礫
ヨーロッパのキュレーターたちによるグループOu Un Po(オウンポ)の日本での活動に参加して共同で出版されたポストカードのシリーズ。
武谷大介 Daisuke Takeya
トロントを拠点に活動するアーティスト。現代社会の妥当性を検証するプロセスを通じて、その隠された二面性を作品として表現している。ペインティング、立体作品、インスタレーションなどその作品形態は多様で、国際的に多岐に渡る活動を展開。展覧会に、くうちゅう美術館、石巻線アートリンク、OuUnPo ゴジラと不死鳥、六本木アートナイト2013、福島現代美術ビエンナーレ2012、 MOCCA、 国際交流基金トロント日本文化センター、在カナダ日本国大使館、プーチコーブファンデーション、ニュイブロンシュ(2006,2007)、六本木ヒルズクラブ、森美術館、京都芸術センター、ワグナー大学ギャラリー、SVAギャラリー、ソウルオークション、在日本カナダ大使館内高円宮殿下記念ギャラリー、北九州市立美術館アネックス、セゾンアートプログラム/セゾン現代美術館、テート東京レジデンシーなどがある。
その他の活動に、大地プロジェクト共同ディレクター、遠足プロジェクトキュレーター、女川アートシーズン実行委員、明日:アーティストフォージャパン共同ディレクター、元アートバウンド大使 、元日系文化会館内現代美術館プログラミングディレクター、元にほんごアートコンテスト実行委員長、元JAVAリーダーなど、アートを媒体としたコミュニティーの活性化に取り組んでいる。 カナダでのレプレゼンテーションは、クリストファーカッツギャラリー(www.cuttsgallery.com)、 著書に「こどもの絵(一茎書房)」がある。
www.daisuketakeya.com