世界がアートで満たされていったなら 第27章
第27章「I ♥NY 美術館の街ニューヨーク。」
飛行機ならトロントから1時間少々で行けるニューヨーク(NY)は、まさに美術館の街。ブロードウェイなどの各種劇場とともに観光産業の中心を担っている。
まず、押さえたい美術館は、メトロポリタン美術館。パリのルーブル美術館と1、2を争う世界最高峰のコレクションを持った20世紀型美術館としてのアートの聖地である。入場料金は、AGOより少しお高い25USドル。しかし、これはSuggested(目安)の値段で、もしお金に余裕がないなら1ドルでも入館できる。NYに省エネ旅行の時は、まずここに行くべし。
メトロポリタン美術館のあるセントラルパーク沿いの五番街近辺は、「ミュージアムマイル」と呼ばれ、1マイル(約1.6キロ)の歩いていける距離の中に美術館がひしめき合っている。グッゲンハイム美術館、フリッツコレクション、ホイットニー美術館、、、とそれぞれに丸1日必要なほど多彩な作品が所蔵されている。ここに来れば古代文明から最先端の現代美術の動向まで大筋は押さえる事が出来るだろう。
美術館がメジャーリーグだとしたら、その予備軍として個人経営のコマーシャルギャラリー(画廊)がひしめくチェルシーがある。元々各種卸の倉庫街であった大きなスペースに世界屈指のガゴシアン(秋に村上隆個展の予定)、ペース(現在チームラボの個展開催中、写真家の杉本博司や奈良美智も所属)、ルーリング・オーグスティン(横浜トリエンナーレのディレクターの森村奉昌が所属)など、世界屈指の老舗が軒を並べている。スペースだけ見ると美術館とほぼ変わらないほどでかいが、なるほど、ここから作品が世界の巨大アートマーケットに進出するのだ。80年代にはSOHO(South Of Houston Streetの意)がアートの中心だったが、地上げが進み、チェルシーへ移動。しかし、チェルシーも既に飽和状態で、ロワーイーストサイドや、ブルックリン、ロングアイランドシティー(クイーンズ)にアートシーンは移動しているようだ。
ロワーイーストサイドの象徴的存在になっているのが、ニューミュージアム。比較的無名なアーティストや実験的な展覧会を開催しているこの美術館は、日本が世界に誇る妹島和世と西沢立衛によるユニット【SANAA】が設計を担当。箱を積み上げたようなこの建物は、ローワーイーストサイドのバワリー通りにあって異様な雰囲気を醸し出している。この建物の設計を評価されSANAAは、建築界のノーベル賞と言われるプリツカー賞を2010年に受賞している。 また金沢21世紀美術館の設計で妹島和世氏はベネチア建築ビエンナーレでも金獅子賞(最高賞)を受賞している。ニューミュージアムでは現在【Here and Elsewhere】という「アラブの、そしてアラブからの」現代アートの展覧会が開催されている。各種の紛争でマスコミをにぎわしているアラブ諸国だが、アートを通じてその実態に少し近づけるかもしれない。
ワシントンポスト紙によると、アメリカには、スタバ(11,000軒)とマクド(14,000軒)を足した数よりも多い美術館があると言われている(35,000館)。 トロントでももっと気鋭のアートに触れる機会がもっと欲しい。いや、でも、やっぱりI ♥NY。この夏は聖地にアートを観に行こう!
Today’s his art
GOLD Coating / コートの金塊
金(GOLD)とは、光沢ある素材の美しさであり、普遍的な価値である。廃棄物を金色のコートでコートする(覆う)ことで価値観を問う彫刻作品。袖から中を覗く事が出来る。8月21日から開催される『新宿クリエーターズフェスタ』にて発表される。
武谷大介 Daisuke Takeya
トロントを拠点に活動するアーティスト。現代社会の妥当性を検証するプロセスを通じて、その隠された二面性を作品として表現している。ペインティング、立体作品、インスタレーションなどその作品形態は多様で、国際的に多岐に渡る活動を展開。展覧会に、くうちゅう美術館、石巻線アートリンク、OuUnPo ゴジラと不死鳥、六本木アートナイト2013、福島現代美術ビエンナーレ2012、 MOCCA、 国際交流基金トロント日本文化センター、在カナダ日本国大使館、プーチコーブファンデーション、ニュイブロンシュ(2006,2007)、六本木ヒルズクラブ、森美術館、京都芸術センター、ワグナー大学ギャラリー、SVAギャラリー、ソウルオークション、在日本カナダ大使館内高円宮殿下記念ギャラリー、北九州市立美術館アネックス、セゾンアートプログラム/セゾン現代美術館、テート東京レジデンシーなどがある。
その他の活動に、大地プロジェクト共同ディレクター、遠足プロジェクトキュレーター、女川アートシーズン実行委員、明日:アーティストフォージャパン共同ディレクター、元アートバウンド大使 、元日系文化会館内現代美術館プログラミングディレクター、元にほんごアートコンテスト実行委員長、元JAVAリーダーなど、アートを媒体としたコミュニティーの活性化に取り組んでいる。 カナダでのレプレゼンテーションは、クリストファーカッツギャラリー(www.cuttsgallery.com)、 著書に「こどもの絵(一茎書房)」がある。
www.daisuketakeya.com