世界がアートで満たされていったなら 第29章
World filled with ART
第29章「POWER TO THE PEOPLE市民が考えるエネルギーの形」
原子力発電所再稼働、反原発、脱原発、放射脳、推進派、デモ、新生エネルギー、、、といった言葉がネットや新聞に飛び交っている。2016年の「新電力元年」という電力業界再編に向けてエネルギーについての議論が活発になって来ている証拠だろう。東日本大震災、福島第一原子力発電所の事故からもうすぐ4年が経とうとしている。 2020年の東京オリンピックを成功させるためには、今後日本が対峙すべく課題は山積みだ。
『POWER TO THE PEOPLE』というプロジェクトを立ち上げた。トロントのキュレーター/アーティストのエメリー・チャンガーが鏡文字にした作品を旗印に、パワーを様々な角度から考えるプロジェクト。POWER TO THE PEOPLEは、言わずと知れたジョン・レノンの名曲。日本語のウィキペディアによると、「革命をテーマにした非常にシンプルな曲。労働環境の改善を求めるのならば、それを実際に行動に移せという強いメッセージが込められている。」という。富士ロックの全コンサート後に流される曲として聴いた事がある人もいるだろう。展覧会は、中立的な立場でエネルギーの未来を考える企画で、さすがに革命を起こす意図ではありません(笑)。
会場は、東北の被災地最大の都市仙台市に居を構える東北電力本社直営の市民スペース。市民とともに歩むべき電力会社が、市民と共に未来のエネルギーについて考える展覧会を開催するという、ごく当たり前、、、のはずが、設営完成後の打ち上げ中に一本の電話がかかって来た。参加作品の1つが「不審物に見える可能性があるため、撤去してほしい。」という。市民がエネルギーの未来について考えるきっかけとなる展覧会で、来場者が展示作品を観る機会ゼロでの設営完了後一般公開直前の撤去要請。制作したアーティストに話をしたら、意味がわからないので、書面にてどういう事なのか教えて欲しいという。会場側はそれには答えられない。と、押し問答が続き、結局展示第一日目から道路に面するガラス窓、正面入り口にシャッターが降りて、誰も会場に入れないという異様な形に。会場側は撤去要請を崩さず、主催者の僕たちは、表現の自由という憲法で定められた権利を剥奪された事になるので、応じる事は出来ず。それでも展示はしています、というスタンスを取ったものの、開催から3日間もシャッター開店状態。展覧会の予告も含めて新聞各社、全国版のテレビ番組でも取り上げられる事態に。話し合いは毎日行なわれ、会場内で囲いを作ったり、大きな注意書きをつけるというこちらからの申し出には応じてもらえず。会場側の提示して来たのは、キャプションなどは付けずに作品を別室に移動しての展示。それは撤去そのものだが、きちんとキャプションをつけて展示という最低条件を付けて合意に至った。展覧会の中止の可能性もあったが、結果的に開場できて良かった。
このやり取りのプロセスは肯定的に見る事も出来るが、残念なのは、「市民に意見を問う」という民主主義の基本、あるいは「表現の自由」という日本国憲法で定められた基本的人権に検閲がかかった事だ。裏を返せば、市民の潜在POWERが脅威であるということだが、参加アーティストの真摯に向き合ったひとつひとつの表現を見れば、エネルギーと権力とは、おなじPOWERでも癒着すべきではない事は明白なのだが。。。展覧会は今後も形を変えて巡回する。
POWER TO THE PEOPLE ホームページ
Today’s his Art
GOLD Coating
mixed media installation at MEDI-ARTs Zushi 2014
メディアーツ逗子にて展示されたインスタレーション。会場前を歩くと見ている自分が目に入る、金色のコートの迷路のような部屋。
武谷大介 Daisuke Takeya
武谷大介は、トロントを拠点に活動するアーティスト。現代社会の妥当性を検証するプロセスを通じて、その隠された二面性を作品として表現。ペインティング、立体作品、インスタレーションなどその作品形態は多様で、国際的に多岐に渡る活動を展開。展覧会に、福島ビエンナーレ2014(’12)、新宿クリエイターズフェスタ2014、六本木アートナイト2013(’12)、Artanabata 織り姫フロジェクト(仙台)、女川アートシーズン(宮城)、くうちゅう美術館(名古屋)、MOCCA(トロント)、国際交流基金トロント日本文化センター、在カナダ日本国大使館、ニュイブロンシュ(トロント、’06、’07)、六本木ヒルズクラブ、森美術館、京都アートセンター、ワグナー大学ギャラリー(NY)、SVAギャラリー(NY)、ソウルオークション(韓国)、在日本カナダ大使館内高円宮殿下記念ギャラリー、セゾンアートプログラム(東京)、メディアーツ逗子など多数。来年には、トロント市内クリストファーカッツギャラリーにて個展開催予定。
大地プロジェクト共同代表、遠足プロジェクト代表。過去にアートバウンド大使 、日系文化会館内現代美術館理事、にほんごアートコンテスト実行委員長、JAVAリーダーなど。カナダでのレプレゼンテーションは、クリストファーカッツギャラリー(www.cuttsgallery.com)、 著書に「こどもの絵(一莖書房)」。www.daisuketakeya.com