世界がアートで満たされていったなら 第45章
UtopiaじゃなくてEutopia?@カナダテキスタイル美術館
カナダテキスタイル美術館にて、Eutopia展が5月29日まで開催されている。遠足プロジェクトのランドセルアート作品8点も展示されているので、トロント近郊の方は是非会場に足を運んでいただきたい。恐らく、日本のランドセル(アート作品に生まれ変わっているが)がトロントで展示されるのは、初めてだろう。遠足プロジェクトからは、過去にトロントでも作品を発表しているアーティストのさとうりさ、「タノンティア」と名付けられた無名の津波の被災地で瓦礫撤去作業活動をしているタノタイガ、中村ケンゴ、樋口佳絵、ダイアン・マリー、アタナス・ボズダロフ、先日開催されたアーティストプロジェクトの入り口に巨大なバナー作品を展示したハッピースリーピー、アレックス・マクロードのランドセルアート作品が展示されている。
カナダテキスタイル美術館は、国内唯一のテキスタイルに特化した美術館である。約二千年分のテキスタイルの一万三千の所蔵作品は、美術館ホームページにて、タイプ、宗教、素材、技法、年代別に検索できるようになっている。カナダを知る上で、また異なった発見があるかもしれない。最近よく耳にするテキスタイルという言葉。テキスタイルとは、「織物およびその原料。広義では糸から生地までを含める場合もある(Fashion Pressより)」の事で、 近年ではテキスタイルアーティストとして活躍している作家も多い。前回のベネチアビエンナーレ日本館代表だった塩田千春氏は無数の鍵と赤い糸を多用した作品で世界中からの観客を魅了したが、この作品も素材から見るとテキスタイルアートと呼べるかも知れない。
さて、展覧会のタイトルの「eutopia」という言葉は、「現実世界にある良い場所」の意味で、「utopia」という「実現不可能な楽園」の対義語に当たる。展覧会キュレーターのファーラさんによると、「テキスタイルには、日常的生活の文脈中にある普遍的な文化を伝える機能があり、その中には、ジェンダーや人種などのアイデンティティ、政治的あるいは経済的なスタンスも含まれています。遊び心を持ちつつ、批判的な視点も持ちながらローカルでもグローバルでもある社会に介入している作品を今展覧会では紹介しています。」とのこと。
震災から5年、元々被災地に支援物資として送られたランドセルが、日本とカナダのアーティスト達によってアート作品となって旅している遠足プロジェクト。果たしてトロントのコミュニティーにどう映るのだろう。当時トロントで数多くあった支援イベントやプロジェクト、、、現在でも被災地では復興への厳しい道程が続いている。海外からも引き続き支援できる事って何だろう。考える事は尽きない。
Today’s his WORK
今月半ばよりFirst Canadian Place Gallery(100 King Street West) にて開催されるグループ展、『City of Dreams』に出品されるカナダ沿岸の流氷の油彩画作品の制作途中風景。タイトル何にしようかな(笑)。。。
First Canadian Place Gallery
myfirstcanadianplace.ca/events/calendar/category/art-exhibitions
武谷大介 Daisuke Takeya
武谷大介は、トロントを拠点に活動するアーティスト。現代社会の妥当性を検証するプロセスを通じて、その隠された二面性を作品として表現。ペインティング、立体作品、インスタレーションなどその作品形態は多様で、国際的に多岐に渡る活動を展開。展覧会に、福島ビエンナーレ2014(’12)、新宿クリエイターズフェスタ2014、六本木アートナイト2013(’12)、Artanabata 織り姫フロジェクト(仙台)、女川アートシーズン(宮城)、くうちゅう美術館(名古屋)、MOCCA(トロント)、国際交流基金トロント日本文化センター、在カナダ日本国大使館、ニュイブロンシュ(トロント、’06、’07)、六本木ヒルズクラブ、アートフォーライフ展(森美術館)、京都アートセンター、ワグナー大学ギャラリー(NY)、SVAギャラリー(NY)、ソウルオークション(韓国)、在日本カナダ大使館内高円宮殿下記念ギャラリー、セゾンアートプログラム(東京)、メディアーツ逗子など多数。今年は、トロント市内クリストファーカッツギャラリーにて個展開催予定
大地プロジェクト共同代表、遠足プロジェクト代表。過去にアートバウンド大使 、日系文化会館内現代美術館理事、にほんごアートコンテスト実行委員長、JAVAリーダーなど。カナダでのレプレゼンテーションは、クリストファーカッツギャラリー(www.cuttsgallery.com)、 著書に「こどもの絵(一莖書房)」。www.daisuketakeya.com