世界がアートで満たされていったなら 第44章
POP 星になったボウイ。
グラムロックの旗手として世界を圧巻し、長きに渡って世界の音楽シーンを牽引してきたデヴィッド・ボウイが1月に69歳で永眠した。Facebookなどのソーシャルネットワークでは、世界中のファンによる彼の死を悲しむ投稿が現在でも続いている。日本では大島渚監督の戦メリこと「戦場のメリークリスマス」や「ラビリンス」といった映画で役者としての彼をご存知の方も多いだろう。僕自身は、ジギースターダストを初めて聴いた時の衝撃を今でもよく覚えている。 最新アルバムからのシングル「Lazarus」のPVでは、主演した映画「地球に落ちてきた男」のポートレートと同じコスチュームで、歌い始めが「見上げてごらん。ぼくは天国にいるよ」と意味深で、動画サイトのVevoでは最高視聴数を記録するなど、 彼は死後も我々に夢を与え続けている。
ボウイは、大の現代美術ファンとして知られている。1990年代に世界を圧巻した英国のYBA Young(British Artists)を紹介した大規模な展覧会「Sensation」では、作品解説のナレーションを担当し、ロンドンの美術大学の卒展のプライベートヴュー(オープニング)にも頻繁に顔を出し自国からのアーティスト育成に貢献した。また、最後の伝説的ペインターとして知られるバルチュスへのインタビューがモダン・ペンター誌に掲載されたり、アメリカが誇るニューペインティングの旗手ジュリアン・シュナーベル初監督作品の「バスキア」では、アンディーウォーホール役を演じるなど幅広いアート界との人脈が伺える。
同じく1月に69歳で亡くなった俳優アラン・リックマンもネットで話題だ。映画「ダイハード」や「ハリーポッター」のシリーズで有名な彼だが、個人的な彼のベストは、「Closet Land(1991)」だ。石岡瑛子のコスチューム、フィリップ・グラスの音楽と豪華なのだが、出演はリックマンとマデリーン・ストウの二人だけ。リックマンの演技力は、当時から素人が見てもずば抜けたものだった。
POPカルチャーというのは、文字通り飛び出すような刺激的なものではあるが、どこか現実離れした夢見心地のもののような気がする。この二人の死が、世界中の多くのファンたちを悲しませている理由の一つは、夢から現実に引き戻されたような衝撃ではないだろうか。
日本では、SMAPの解散報道で持ち切り。まさかSMAPが解散する事態を誰が予想しただろう。あまちゃんが終わって視聴者が「アマショック」になったという逸話ではないが、解散が現実のものとなれば、「スマショック」が起こる事は間違いないだろう。時代が変わり、POPなものはその役目を終えて新たな流行に塗り替えられる。その繰り返しの中で、長く語り継がれるスターはそう沢山いる訳ではない。ファンの一人として、ボウイは星になったのだと信じる事にしようかと思う。。。
Today’s his WORK
Venice, graphite on archival paper
武谷大介 Daisuke Takeya
武谷大介は、トロントを拠点に活動するアーティスト。現代社会の妥当性を検証するプロセスを通じて、その隠された二面性を作品として表現。ペインティング、立体作品、インスタレーションなどその作品形態は多様で、国際的に多岐に渡る活動を展開。展覧会に、福島ビエンナーレ2014(’12)、新宿クリエイターズフェスタ2014、六本木アートナイト2013(’12)、Artanabata 織り姫フロジェクト(仙台)、女川アートシーズン(宮城)、くうちゅう美術館(名古屋)、MOCCA(トロント)、国際交流基金トロント日本文化センター、在カナダ日本国大使館、ニュイブロンシュ(トロント、’06、’07)、六本木ヒルズクラブ、アートフォーライフ展(森美術館)、京都アートセンター、ワグナー大学ギャラリー(NY)、SVAギャラリー(NY)、ソウルオークション(韓国)、在日本カナダ大使館内高円宮殿下記念ギャラリー、セゾンアートプログラム(東京)、メディアーツ逗子など多数。今年は、トロント市内クリストファーカッツギャラリーにて個展開催予定
大地プロジェクト共同代表、遠足プロジェクト代表。過去にアートバウンド大使 、日系文化会館内現代美術館理事、にほんごアートコンテスト実行委員長、JAVAリーダーなど。カナダでのレプレゼンテーションは、クリストファーカッツギャラリー(www.cuttsgallery.com)、 著書に「こどもの絵(一莖書房)」。www.daisuketakeya.com