世界がアートで満たされていったなら 第46章
SOCIALISM & SNS グローバリズム後の共有と共存の時代?
アメリカの大統領予備選が白熱している。この記事が出た時点でまた新たな話題で盛り上がっている可能性もあるが、今までくすぶっていた米国の膿みが表面に姿を表わそうとしている。
まずは、共和党のドナルド・トランプ氏。彼はメキシコからの不法移民に対して国境に壁を作る、ムスリム教徒の入国を拒否すべきだ…など人種差別的な政策や軍事に関しても極右の政策を掲げているのだが、彼独特のカリスマ性と企業体からの献金を必要としない莫大な個人資産を糧に自由な物言いで爆発的な人気を得ている。確かにエンターテイメント性は抜群である。見ていて飽きないが、笑えない(笑)。彼が大統領になったらどうなってしまうのだろう、と、考えただけで震えます。
一方で、民主党からは、ヒラリー・クリントン氏が初の女性大統領という悲願をかけて選挙戦を展開しているが、彼女がかすんでしまうような勢いで猛追しているのが、バーニー・サンダース氏だ。彼は、故マーチン・ルーサー・キングJr牧師のワシントンDC行進に参加したり、若い時分から抗議デモに積極的に参加して来た人権派であり、その一貫した政治理念が、特に若い世代に爆発的に受けているのである。彼の政策の主たるものは全国民が享受できる健康保険制度の実現で、約1%の超富裕層の蔓延と中流層の消滅への危機を訴え、それらの政策は社会主義(SOCIALISM)であると非難されている。社会主義のシステムは、北欧などを見ると現代の先進国では最も成功しているケースなのだが、アメリカ合衆国は旧ソ連と冷戦を通じて共産主義、社会主義と対決して来た国であるがため抵抗もあるようなのだ。
ここでソーシャルネットワーク(SNS)を見てみたい。Twitter、Facebook、インスタグラム、などは、ソーシャルと名にある通り、社会主義なのだ。ディカプリオも安倍首相もビヨンセも、、子どもも大人も、君も僕も、国籍、人種、宗教、社会的地位などなど、全ての枠組みを超えて皆クリック一つで同じように意見を言える。なので、アメリカ国民にも既に社会主義が日々の生活に溶け込んでいるのである。サンダース氏の若者世代を中心とした人気の広がりは、このネット上の社会主義によるものである。オバマ氏の台頭した2008年からに更に進化した形だ。
冷戦の終結と旧ソ連の崩壊、中国の台頭、中東の混沌とした状況…アメリカが世界警察として機能していた(実際には機能していたとも限らない)時代が過ぎ、TPP、TTIP、RCEP、FTAAPなどの締結により、今まで二国間で交渉して来た経済的なやり取りが、それぞれのグループ、つまりはソーシャルな場所でやり取りされるようになる。そこには、新たな秩序の形成が見込まれているが、既存のバランスは崩れ去り、それぞれの国の中での経済の仕組みは劇的に変わってくるのかも知れない。政治や経済に興味が無い人も、SNSだけでなく、リアルでも引きこもってはいられない時代がやってくるのである。
アメリカ大統領選の動向は、そんな新たな波がくる事を予感させる。これからは、全てが政治的でソーシャルな、グローバリズム後の新たな共有と共存の時代なのかも知れない(これってアートコラム?)。
Today’s his WORK
Unfinished City Working in Progress
early 2000, oil on canvas, 106 x 81 cm
武谷大介 Daisuke Takeya
武谷大介は、トロントを拠点に活動するアーティスト。現代社会の妥当性を検証するプロセスを通じて、その隠された二面性を作品として表現。ペインティング、立体作品、インスタレーションなどその作品形態は多様で、国際的に多岐に渡る活動を展開。展覧会に、福島ビエンナーレ2014(’12)、新宿クリエイターズフェスタ2014、六本木アートナイト2013(’12)、Artanabata 織り姫フロジェクト(仙台)、女川アートシーズン(宮城)、くうちゅう美術館(名古屋)、MOCCA(トロント)、国際交流基金トロント日本文化センター、在カナダ日本国大使館、ニュイブロンシュ(トロント、’06、’07)、六本木ヒルズクラブ、アートフォーライフ展(森美術館)、京都アートセンター、ワグナー大学ギャラリー(NY)、SVAギャラリー(NY)、ソウルオークション(韓国)、在日本カナダ大使館内高円宮殿下記念ギャラリー、セゾンアートプログラム(東京)、メディアーツ逗子など多数。今年は、トロント市内クリストファーカッツギャラリーにて個展開催予定
大地プロジェクト共同代表、遠足プロジェクト代表。過去にアートバウンド大使 、日系文化会館内現代美術館理事、にほんごアートコンテスト実行委員長、JAVAリーダーなど。カナダでのレプレゼンテーションは、クリストファーカッツギャラリー(www.cuttsgallery.com)、 著書に「こどもの絵(一莖書房)」。www.daisuketakeya.com