世界がアートで満たされていったなら 第26章
遠足プロジェクト
@Canadian West Coast津波が繋いだ2つの岸辺。
本誌でもたびたび紹介している『遠足プロジェクト』。6月19日から9月8日までカナダ西海岸のBC 州の州都ビクトリア市のBC州海洋博物館(The Maritime Museum of BC)に巡回展示されている。『遠足プロジェクト』は東日本大震災で被害を受けた被災地に送られた支援物資のうち利用されずに余ってしまった中古のランドセルをカナダと日本から総勢70組のアーティストが移動式アートギャラリーとして作品化し、日本の被災地をはじめ全国を巡回しながら、復興への支援と訪れた町の課題、震災の風化、自然災害への備えなどについて考えるプラットフォームとなり、ネットワークを形成していくプロジェクトである。日本での約20カ所への巡回を終え、ビクトリア市はカナダ国内二つ目の巡回先となる。
西海岸での展覧会が実現した背景には、博物館が独自に実施しているFBを通じて日本からの瓦礫をアーカイブしていく 「瓦礫プロジェクト」の存在があったのだが、地元のアーティストや小学生による作品とともに、震災による津波で日本の東北地方からバンクーバー島のトフィーノに流れ着いた瓦礫(日本とのやり取りで正式に認定されたもの)も同時に展示されている。東日本大震災では推計で500万トンの瓦礫が太平洋に流れ出されたとされているが、カナダやアメリカの西海岸では今後流れ着くと予想される日本からの瓦礫による生態系への影響が危惧されている。そのため日本政府からも100万ドル(約9400万円)沿岸部の清掃のための「瓦礫清掃見舞金」という名目で資金援助がなされた。
しかし、繋がりはそれだけではない。バンクーバー島の人口約1万8千人ほどの町、ポートアルバーニも実は1964年のバンクーバー島地震によって引き起こされた大きな津波の被害に遭っているのだ。町は深い入江の奥に存在しそれが津波の引き金となったのだが、 建築物は壊滅的な被害に合い、55軒の家が流され、375軒が被害を受けたという(Wikipediaより。)幸い津波が町に到達するまでにかなりの時間を要したため町民は十分な時間をもって避難する事が出来たという。今年はちょうど津波から50周年であり、また、実はカナダ西海岸も今後大きな地震が起きる可能性があるという事で、自然災害への備えという側面からも、震災後の日本から学ぼうという動きがあるのだ。ちなみにこの町は北海道の網走市と姉妹都市になっており、毎年網走市ではカナダとの親交を深めるパーティーも開催されているという。
ビクトリアの町を歩いていると多くの日本からの若者たちの談笑が聞こえてくる。遠足プロジェクトはほんのきっかけ作りなのだと思う。今後も日本の被災地とカナダ西海岸のネットワークが築かれていくことを願う。カナダ西海岸の平和な美しい環境いつまでも。
Today’s his Art
aline, 2004, oil on canvas, 15 x 10 cm
「こどもの絵」シリーズの肖像画。
「こどもの絵」は、美術講師、また画家として、生徒の内面と創造力を推し量るためにこども作品の模写と平行して制作されたプロジェクト。
武谷大介 Daisuke Takeya
トロントを拠点に活動するアーティスト。現代社会の妥当性を検証するプロセスを通じて、その隠された二面性を作品として表現している。ペインティング、立体作品、インスタレーションなどその作品形態は多様で、国際的に多岐に渡る活動を展開。展覧会に、くうちゅう美術館、石巻線アートリンク、OuUnPo ゴジラと不死鳥、六本木アートナイト2013、福島現代美術ビエンナーレ2012、 MOCCA、 国際交流基金トロント日本文化センター、在カナダ日本国大使館、プーチコーブファンデーション、ニュイブロンシュ(2006,2007)、六本木ヒルズクラブ、森美術館、京都芸術センター、ワグナー大学ギャラリー、SVAギャラリー、ソウルオークション、在日本カナダ大使館内高円宮殿下記念ギャラリー、北九州市立美術館アネックス、セゾンアートプログラム/セゾン現代美術館、テート東京レジデンシーなどがある。
その他の活動に、大地プロジェクト共同ディレクター、遠足プロジェクトキュレーター、女川アートシーズン実行委員、明日:アーティストフォージャパン共同ディレクター、元アートバウンド大使 、元日系文化会館内現代美術館プログラミングディレクター、元にほんごアートコンテスト実行委員長、元JAVAリーダーなど、アートを媒体としたコミュニティーの活性化に取り組んでいる。 カナダでのレプレゼンテーションは、クリストファーカッツギャラリー(www.cuttsgallery.com)、 著書に「こどもの絵(一茎書房)」がある。
www.daisuketakeya.com