世界がアートで満たされていったなら 第36章
縄文文様のなぜ。5000年前のPatternは、現代のデザイン。
新潟県の魚沼地方の津南町に約1ヶ月間の滞在制作をした。テーマは縄文。その文様の謎を解明しようと努力する過程をインスタレーション作品にしてみた(英語だと同じpatternなのだが、模様ではなく文様)。タイトルは『縄文トンネル』。ノーベル文学賞受賞の川端康成氏の有名な小説「雪国」の序文にある「国境の長いトンネルを抜けるとそこは雪国であった。」のようにトンネルを抜けて現在、過去、未来を辿り、日本文化の本質に繋がる縄文文化に想いを馳せた。
縄文時代は、土器や竪穴式住居くらいなら皆知っている今から約1万6,500年前からなんと1万年も続いたとされる(ちなみに平成は、今年でわずか27年目)文化。稲作による定住以前の移住生活の中の過酷な自然条件下でどうやって同様の文化が長く続いたのだろう。ちなみに魚沼地方は、日本随一の豪雪地帯で、雪の中、遠距離を移動していたとは考えにくい。冬の間5ヶ月間も竪穴式住居にずっといたなら、かなり暇だし、縄文土器の立体的な文様を長期間かけて制作していたんだなろうな。と、分析していくと物語や伝説を表しているようだと思われた。例えば文様の中に組み込まれたとんぼの目をした顔のようなデザイン。目だけある土器もあれば頭部や口がある土器もあり、にっこりと見る者に笑いかける。縄文時代、雪で目を悪くしないようにピンホール式のサングラスを使っていたらしいが、もしかしたら縄文時代にも伝説や妖怪が信じられていて、そこに登場する生き物なのかもしれない(表情だけ見ると人間らしくないw)。発掘された破片になった縄文土器には、部位が遺跡のどこからも発掘されず、土器を意図的に壊して部分的に持ち去った(或は破壊した)可能性もあるとの事。。。過酷な自然と共生の中でのアミュニズム(生物・無機物を問わないすべてのものの中に霊魂、もしくは霊が宿っているという考え方)が浸透していたと考えられる。
縄文人の営みは、僕たちには想像する事しかできない。インスタレーションでは、学術的にではなく、あくまでもアートの表現として、現在の津南の風景や現代の営みから縄文文様を構成しうる要素を抽出してみた。 積雪量を示すポールの赤黄のパターンや雪の壁の層。そして、「トンネルクラブ」という90年代NYクラブシーンも設置してみた。キースへリングなどの新人アーティスト達が、大富豪や著名人と結ぶミックスカルチャーと呼ばれる出会いの場であったのだが。。。どうも地方のカラオケスナック風になって来たので、結局演歌を流す事に。 例えば、新沼謙治の「津軽恋女」歌われているのは7種の雪。。。極めて重要なんだそうです(地元の演歌好きによる)。と、どうも全く縄文と関係なさそうで、関係者に怒られてしまいそう。しかし、縄文も平成も文化は文化。日々の生活の中からデザインが生まることに変わりはない。人類がそれほど進化していないとすれば、現代人も縄文人と近い感性を持っているのでは。縄文のPatternは、平成の世界にもどこかで息づいているはず。
Today’s His Work
縄文トンネル
2015年、ミクスドメディアインスタレーション。現在の魚沼地方の雪の壁、タイムマシン的な「トンネルクラブ」、縄文の自然の世界、未来の想像の世界という4つの世界観を縄文文様の解析を試みる一つの作品として提示した。6月7日まで新潟県津南町の縄文資料館なじょもんにて展覧会『縄文トンネル』開催中。
najomon.com
武谷大介 Daisuke Takeya
トロントを拠点に活動するアーティスト。現代社会の妥当性を検証するプロセスを通じて、その隠された二面性を作品として表現している。ペインティング、立体作品、インスタレーションなどその作品形態は多様で、国際的に多岐に渡る活動を展開。展覧会に、くうちゅう美術館、石巻線アートリンク、OuUnPo ゴジラと不死鳥、六本木アートナイト2013、福島現代美術ビエンナーレ2012、 MOCCA、 国際交流基金トロント日本文化センター、在カナダ日本国大使館、プーチコーブファンデーション、ニュイブロンシュ(2006,2007)、六本木ヒルズクラブ、森美術館、京都芸術センター、ワグナー大学ギャラリー、SVAギャラリー、ソウルオークション、在日本カナダ大使館内高円宮殿下記念ギャラリー、北九州市立美術館アネックス、セゾンアートプログラム/セゾン現代美術館、テート東京レジデンシーなどがある。
その他の活動に、大地プロジェクト共同ディレクター、遠足プロジェクトキュレーター、女川アートシーズン実行委員、明日:アーティストフォージャパン共同ディレクター、元アートバウンド大使 、元日系文化会館内現代美術館プログラミングディレクター、元にほんごアートコンテスト実行委員長、元JAVAリーダーなど、アートを媒体としたコミュニティーの活性化に取り組んでいる。 カナダでのレプレゼンテーションは、クリストファーカッツギャラリー(www.cuttsgallery.com)、 著書に「こどもの絵(一茎書房)」がある。
www.daisuketakeya.com