金メダルを獲るコツ8|オリンピック選手もサポートするカナダ公認マッサージ・セラピストが教える身体と健康【第87回】
今回は金メダルを獲るコツの実話エピソードをお話します。
エピソード1 伸び悩むサッカー選手
幼少期からサッカーの才能が認められプロサッカーチームのユースで有望選手としてキャリアを積んできたが、最近原因不明の絶不調状態に陥り心も折れそうな状態の選手。
青嶋 「この絶不調期に、どんな練習してんの?」
選手 自身ありげに 「とりあえず走り込んでます」
青嶋 「なるほど!足見ればわかるね」 「サッカーの理論に反しちゃうかも知れないけど、明日から走るのをやめたら?」
選手&親 「唖然???」
と言った会話からスタートしたサッカー選手のサポート。
コツ1. まずは走り込むのをやめてもらい、選手の体のニュートラルポジションを見極める
毎日走り込んだ大腿四頭筋は見た目には「かっこ良いっぽい」ですが、その硬さや全身の疲れ具合から総合的に判断すると走り込んでいる事がマイナスでしか無い可能性がある(本人は、微塵もそんな事は考えた事が無い)。
コツ2. 選手に特訓で疲れた体と効率よくコンディショニングして休めた体で練習する違いを実感してもらう
【2回目の会話】
選手 「昨日ゲーム中の走った距離を計測したら、普段より30%多く走ってました!」 「走るスピードも上がってます」
青嶋 「サッカー理論に反して無い?」 「特訓辞めたんだからパフォーマンス落ちるべきじゃ無い?」
選手 「????」
コツ3. コンディショニングの有効性を実感してもらう
【数週間で劇的に絶不調から復活した時の会話】
選手 「最近調子良いので、前でプレーさせてもらいゴールに絡むことが多いが、ヘディングで外国人選手にボディサイズの違いで負けてしまうので、自分は胸で受けて下にボールを落として処理しているんです」
青嶋 「本当に負けてる?」 「ここで垂直跳びしてみて!」 「天井かするくらいね!」 「オッケー、足首と膝10分マッサージさせて!」
…………10分後…………
青嶋 「もう一回跳んでみて!」
選手&親 「唖然!!!」
手のひらがべったり天井に触ったからです。
コツ4. この様なアプローチから選手本人にコンディショニングした方が得であると認識してもらう
コツ5. 最大の頭痛の種を取り除く
パフォーマンスが安定してFWでプレーする機会が増えてきた際の悩みは、ゴールの決定能力が求められること。
青嶋 「何が一番問題?」
選手 「昔のように良いボールが蹴れない」「自信がないので他にボールを渡してしまう」
青嶋 「それは100%ゴール決まらない。蹴って無いから!」 「いつ頃から良いボールが蹴れない?」
選手 「3年くらい前から」
選手のママ 「この子がシュートを蹴ると、いつも転んでカッコ悪い!」
青嶋 「人工芝だと余計コケる?」
選手 「そうです」
青嶋 「シュート前の3歩の動画撮らせて」「ボール蹴る時、軸足の膝が外にブレるね!」
…………膝の調整10分後…………
選手 「アレッ?」 「安定しました」
その後はゴール前でボールを他人に渡すことなく、コーチから信頼されるようになりました。絶不調が技術面だけでなく、コンディショニングの悪さから来ることも多い例です。
エピソード2 バレリーナの悩み
青嶋 「今日はどこか痛いとこがあるの?」
バレリーナ 「痛いとこは無いけど、足首のポイントするポジションを直して欲しい」
つまり、足首をポイントした際に、俗に言う「甲が出る」ポジション=足首が真っ直ぐ並行の位置を超えて爪先が下がり、甲が浮き上がったように見えるポジションまで行きたいというリクエストです。
友達は足首を機械で強引に引っ張って伸ばして怪我が続出しているので、怖くなりクリニックに訪れてくれました。
コツ1. 足首を緩める理屈を理解してもらう
基本的に足首を甲側に引っ張る筋肉が硬いので希望する足の裏側に動かす事が出来ない=甲側の筋肉を緩めるだけでポイントポジションが改善する可能性が高い。
この処置は残念ながら10分で終了しないので理屈と方法を説明して、本人に継続してアプローチしてもらう必要があります。
バレエクラスでいつも先生に注意されていたバレリーナが数ヶ月後には、足首引っ張りマシンを利用している友人たちから「どうやってポイントポジションなおしたの?」と質問攻めに合うほどになりました。
「脛の筋肉緩めただけ!」と本当のことを言っても「意地悪!」と全く信用してもらえなかった本当のお話です。
エピソード3 フィギュアスケーターの致命傷
日本からやって来たフィギュアスケーター。初回のミーティングで「この子は、試合の時いつも足が腫れて靴に入らないくらいなんです!」と笑顔で話してくれるママ。多分「それくらい歯を食い縛って練習に耐えて、やっと世界レベルに上がってきた」と私に訴えたかったのだと思いましたが、私にはコンディショニングに対する認識ゼロとしか思えないので、同行しているスケート連盟のスタッフに問いただすと実は色々な問題を抱えていると白状しました。
担当されていたドクターから詳細データ提供と説明をもらうと厄介な問題を抱えているのが判明。このように有名アスリートのサポートを依頼されて大喜びして引き受けたら、すでに致命傷を抱えていて自分が担当してから試合で結果が出せずに選手が引退。
サポート依頼の名目で、責任(貧乏くじ)を押し付けられただけなどという話は業界ではよくあります。今まで全くコンディショニングをした事が無いと思われるスケーター親子の考え方を一から説明するのは時間がかかる作業ですが、面倒と思われたこのプロジェクトをサポートしたメリットは、コンディショニングに対する認識ゼロの親子に説明して納得してもらった経験が、その後多くのスケーターをはじめアスリートやトロントの患者さんに反映されていることです。
今回の金メダルを獲るコツは、「コツは一つでは無く、人それぞれ」と言うことです。つまり、コンディショニングといっても全ての人にベストな方法は存在せず、いかにして自分に合った方法を見つけるか(見つけてもらうか)がポイントです。
ベストなコンディショニング方法を見つけるコツ
コツ1. 自分の体を知る
関節の動きや筋肉に強さなど自分の体の状態を正確に把握することにより、自分の取り組むべきポイントが明確になります。
コツ2. 自分の苦手を知る
練習や試合において自分の苦手とするプレーや動きを見つけて、体の動きの悪さが苦手の原因となっていないか観察する。苦手と思っていたプレーが、実は体が硬くて動いていなかっただけなど良くある話です。
コツ3. 改善方法を知る
あまり難しい方法を取るのでなく、体の動きを基本に考える。筋肉や関節に触れる、観る、動かすなど、自分の感覚を使った方法はポイントを逃さず正確度が高く、変化を実感し易いなど多くのメリットがあります。
コツ4. 長続きする方法をとる
コンディショニングは、長期間継続出来なければ意味がありません。目的とするコンディショニング効果が得られる自分なりの方法を見つける。技術的問題が発生した時に練習するのではなく、過去の映像などを元に、もう一度上手くいくイメージを組み立て直して、そのイメージに体を合わせていくといった方法が上手く行くケースもありました。性格、生活環境、ボディーサイズなどからベストな方法は異なるので、経験豊富な人にアイデアの相談をするのも良いでしょう。