ハッキリした原因なしの慢性的な痛みや、動きの悪さは改善できる可能性が十分ある!|オリンピック選手もサポートするカナダ公認マッサージ・セラピストが教える身体と健康【第88回】

以前から転倒して膝を痛める事が多い患者さんが、膝のお皿が亜脱臼(膝のお皿が飛び出てしまう状態)してしまい大変という連絡が来ました。現在日本にいらっしゃるために文章によるアドバイスをさせて貰いました。
現在はサポーターで保護して安静にしている状態で、膝を保護し、安静にするという保存療法で様子をみるのは初期対応として良いと思われますが、その延長線上に改善へのレールはあまり見えてきません(幸運を祈る感じです)。
ここでもう一歩積極的にアプローチするため、TAD式コンディショニングを提案させてもらいました。
1.足首を緩める
捻挫を繰り返し、癖になっていると言われましたが、捻挫は癖になるというより捻挫を繰り返すコンディションが長年改善されていないと捉えた方が良いと思います。
膝下脛の外側に位置する前脛骨筋を緩めて、足首の可動域を向上(柔らかくする)させることにより、捻挫が起こる状況を回避する確率を上げます。すなわち足首を捻っても捻挫しない+膝に負担をかけない=亜脱臼防止といった効果を期待できます。
方法は脛骨(脛の骨)の外側に位置する前脛骨筋を緩めるだけです。この筋肉が足首の背屈と内側に引っ張る機能を果たすため、ここが緊張していると足首のポジションが内側に向いてしまい、日常生活で足首を外側に捻りやすくなってしまいます(リラックスして仰向けに寝た時足首が内側に引っ張られているのを確認することが多い)。
足首を緩める方法
前脛骨筋を膝下から足首まで深くマッサージする(写真1)のが確実に足首を緩める方法です。長い筋肉であり、その半分は腱なのでストレッチではほぼ伸びません。
マッサージ前に足首を床の方に押して動き(角度)を確認してマッサージ後に足裏で床が触れること(写真2)を毎回確認すると確実性が増します。
2.大腿四頭筋のバランスを整える
現在されている保存療法で筋肉や腱がしまってお皿を支えてくれるという発想には限界があるように思います。もう一歩積極的にアプローチするアイディアとして大腿四頭筋のバランスを整える方法があります。大腿四頭筋は名前の通り、4つの筋肉のグループで構成されており、各筋肉の緊張に違いが発生します。大腿四頭筋が膝上で腱となりお皿を押さえ込んで膝下にくっついています。
最後は膝を曲げた時にお皿の下に棒状に触れるのが大腿四頭筋の腱です。これをつまんで左右に引っ張って緩めたり、お皿の上5cmくらいの位置を横に一直線に深くマッサージしていくとゴリゴリした部分と、そうでない部分に触れます。
そのゴリゴリをマッサージで取ると結果的に大腿四頭筋の筋緊張バランスが良くなる=腱のバランスも良くなります。お皿の部分を力で抑えるのではなく、逆に十分なバランスの良い柔軟性を持たせることにより膝の動きに余裕が出来て亜脱臼を防止出来たら?というアイディアです。
このケースで皆さんにお知らせしたかった事は、怪我をした場合に色々な医療機関やセラピストによる対応は、基本的に間違いはないと思いますがそれが十分であるかは判らないということです。先述したこの膝蓋骨亜脱臼のケースでは、患部を保護するだけでは将来的な亜脱臼防止策にはならないということが判断できます。
仕事の繁忙期にいつもギックリ腰になるのが癖になっているという患者さんがいます。一般的にギックリ腰は筋肉を伸ばして炎症させてしまった状態なのでギックリ腰が癖になっているのでなく、ギックリ腰になりやすい体のコンディションが改善されていないので、仕事が忙しくなり疲れが溜まると同じ様な時期に同じ問題を繰り返しているというのが正しいと思います。
対処として考えられるのは、まず腰の関節の動きを良くすることです。なぜならば、関節を緩めると、その周りに存在する筋肉は基本的に緩んでしまうからです。一般的に筋肉を緩めるにはたくさんストレッチすることが挙げられます。それでも効かなかったら、他の方法を探すと考えがちですが、全く違う発想として関節を緩めて間接的に筋肉を緩める方法は、とても有効です。
根本的解決策につながるコンディショニングの考え方として、症状を抑えた後は、怪我をした原因を見つけて対策を行います。
1. 関節の問題
関連する関節(肘の問題の場合、肩や手首の状態)の動きが悪いとか、間違った関節の使い方がある(古傷のある部分を使わない動きの癖がある)など考えられます。
2. 筋肉の問題
緊張している筋肉から問題の動きを見極めます(日常生活の中で、一定動作を繰り返したり、長時間同じ姿勢を取るなどにより一定の筋肉に慢性的に負担をかけます)。
3. 姿勢や動きを確認
鏡に自分の姿を写して肩の高さや頭の位置などバランスの悪いところがないか確認します。緊張して姿勢に影響している筋肉や痛みをカバーしている筋肉を見つけます。
4. 正確性
コンディショニングにおいて、「この辺」という曖昧な言葉は省かなくてはいけません。肩の辺、膝の辺といった曖昧なポイントのアプローチで問題が解決することはありません。SNSの動画情報においても自分のコンディションにピッタリあった情報を見つけるのは困難です。似たようなコンディションの情報では十分な結果は得られないことを知っておくべきです。
5. QuantityよりQuality
最近の傾向として、自分を追い込んでハードエクササイズに励むほど、良い結果がついてくるという感じがしますが、そうとは限りません。コンディショニングにおいては、ハードなメニューをこなすことが目的ではなく、問題点を改善することが目的なので、量をこなすのでなく、正しい動きと正しい量で正しい結果が伴なうことが大事です。必要以上に負荷をかけると怪我を誘発したり、効率が悪くなります。
6. 怪我は防げる
上記のような方向性でコンディショニングを行うと、突発的なアクシデント(転倒、インパクトなど)は防げませんが、多くの場合、怪我は防げます。
例: 運わるく石につまずいて、「グキッ!」と足首を思いっきり捻ってしまった場合は、次のような結果が考えられます。
ケースAになるかケースBになるかは本人のコンディション次第であり、頭を使ってコンディショニングをすれば、足首を捻挫しにくい状態を作ることは可能です。
7. 「もう歳だから!」は関係ない
肩や膝の動きが悪いのを「歳だから」で片付けられるケースが多いです。
実際には歳のせいで動かないのでなく、体が手入れされていないだけというケースも多いです。本人が治す意思が無ければ100%治らないので諦めに入ってしまうのは非常にもったいない話です。
まとめ
基本的に関節の問題があるなど、ハッキリした原因なしの慢性的な痛みや、動きの悪さは改善できる可能性が十分あります。体の動きの悪さは、痛みはメンタル面にも影響が大きく、日常生活において全てが消極的になってしまう傾向があり生活の質が落ちてしまいます。
長年コンディションが変わらないので諦めるのではなく、改善出来る部分は改善して不自由の少ない生活を目指した方が良いと思われます。自分で判断できない時は経験豊富なマッサージセラピストなど専門家に相談しましょう。





