Glass Half Full #10 K.Y.
Wild Wingというカナダのスポーツバーチェーン店でマネジャーをしてた時の話です。コズバーグという小さな町から来た赤髪の19歳の女の子。当時彼女の履歴書はサブウェイサンドイッチでの経験だけ。しかし人一倍やる気があったため彼女をサーバーとして雇いました。バーで働いた事がなかった彼女だったので、サービングやバーテンディングをゼロからトレーニングしました。それから3年が経った今、そんな彼女から嬉しいメールが届きました。トロントで名が知られている某スポーツバーでマネージャーとして雇われたそうです。そして昔の上司からの推薦状(reference letter)が必要とのことでそれを書いてほしいと頼まれました。またそのメールには3年前に対しての感謝の気持ちも綴られていました。自分が雇い育てあげた子の成長はやはり嬉しいものです。しかしそれとは裏腹な意見を抱いていた私の近親はこう言い放ちました。「その子は奈々子からの推薦状をもらうために完全に胡麻を擂っているね」と。全くそう考えていなかった私には衝撃の一言でした。
私たちの文化は社交辞令やお世辞のように、思ってもいないことを、自分の利益をはかるため、円満なお付き合いのためなら、平気で口に出来ます。もはやそれは器用で計算高い私たち日本人の社交能力であります。また同時にそれは相手の事を気遣うことが出来る、繊細な心配りが出来る私たち特有のホスピタリティー文化でもあります。ホストやキャバクラの様な接客業が繁栄するのはそんな文化の存在があるからかもしれませんね。
それとは逆に自己主張が強く、周りに合わせることが上手ではない北米人は同調性に欠けがちです。しかし私達の様に空気を読む必要がない北米文化ではあまり重視されないようです。気を遣わずカジュアルな彼らだからこそ、とても人懐っこく、赤の他人に平気で話しかけられる柔軟性に優れたコミュニケーション能力を持っています。
そんな「協調性」に対する全く異なったそれぞれの価値観。そんな価値観の違いに気が付けていますか?どうやったらカナダ人の友達が出来るようになるかと相談されることが多々ありますが、一番の近道は、英語習得よりも、そんな協調性に対する価値観の違いに気が付くことが大切だと思います。
カナダ人ってホントKYだよねぇと日本人同士が話しているのを耳にした事が幾度かあります。それはむしろ私たちの方ではないでしょうか?周りの空気を読み過ぎて、肝心である相手の“価値観が読めていない”、そんなKYにはなりたくないものです。
Nana Akimoto
– Teashop 168 Annex店 オーナー兼店長・モデル
1987年横浜生まれ。2007年にカナダへ留学。Georgian College卒業後、某スポーツバーや日本食レストラン等でマネージャーを勤める一方、モデルとしてカナダの新聞や雑誌をはじめ、シンガポールとベネズエラの大手出版社との撮影もこなす等、国際的に活躍もしている。2013年初夏にはバブルティーフランチャイズチェーンで知られるTeashop168 のAnnex店を展開し、今現在オーナー兼店長を勤めている。将来自分のレストランを開けることが夢である。