グルメの王様のおしゃれ美食道 第19回
第十九回目 「四川料理応援団長」
中国料理の世界への誘いとして、これから順次ごく一般的な分類方法ながら北京・上海・広東・四川の四大料理をご紹介したいと思います。まず始めに取上げるのが、「四川料理」。四川料理といえば陳健民。マーボードーフを始め数々の四川料理を独特な見地から日本に紹介定着させた偉人です。料理番組でもお馴染みでしたが、今は息子の健一くんが師である父の偉業を継ぎ「料理の鉄人」になるなど立派に大成し、喜ばしい限りです。
四川料理は我が家とも大変縁が深く、陳さんが日本に来た時の身元保証人として、当時は他地方の料理に比べ後発だったこの四川料理に最大級の賛辞を贈り応援したのは、日本の中国料理業界の首領と慕われた父でした。今では語り継ぐ人もいませんが、実は陳さんはウチのナイトクラブでも大活躍しました。
子供の頃、ナイトクラブというと西洋の物で、フランス料理界出身の父なら西洋料理だけなのが当たり前なのに、どうして中国料理を出すのか尋ねると笑いながら「ホステスが箸を使ってお客様にサービスすると特に外人が喜ぶ。」と答えたことを思い出します。
大昔映画ロケの為日本を訪れたボブ・ホープが著書I OWE RUSSIA $1200 の中で「その夜は東京のナイトクラブ『紅馬車』で1時間ばかり遊んだ。『紅馬車』は、アメリカ流のフロアーショーと、色々な国のホステスが数百名いることが売り物だ。中国とハンガリーの温血美人がハシでシチュウ料理を食べているのを見かけたが、こんなのは、さしあたり東洋のザザ・ガボールというところか。(弘文社)」ということは、ボブ・ホープもジョン・ウェインもはたまたエリザベス・テーラーも陳さんの四川料理を食べたかも知れませんね。

今回、今は亡き陳さんのお店、東京の四川飯店にマーボードーフを食べに行きました。他にこれも陳さん考案の海老のチリーソース煮を始めバンバンジイ等に出会い感激を新にしました。他の料理がとても繊細かつ上品なのに対し、このマーボードーフだけは、本当に素朴な味で、陳さんの心が生きておりちょっと胸が熱くなりました。伝統とはこういう料理のことを言うのでしょう。
当地での四川料理は同じく後発で、残念ながら四川料理と言えばここ!と言うお店がまだありませんが、よくお話しするB級グルメを意識した入門編では何軒か四川料理をうたったお店を見つけることが出来ます。四川は中国での合言葉は?「川」で、当地では「京」と称される北京の料理と共に提供される場合が多く、その場合は「京川」となります。因みに上海は「滬」。広東は「粤」との別名を持っているので、次回は店名を注意深くご覧になって下さい。
料理としてのお薦めは、お馴染み豚肉とキャベツの味噌炒め(ホイコーロ)。料理を担いで売ったことからその名がついた、本来はあえソバの担担麺。そして牛肉の唐揚げ。ちょっとしたアトラクション付きの海鮮おこげ料理もトロントで食べられますので、一度お試し下さい。四川料理の醍醐味は言うまでも無くその「辛さ」。夏の辛さもおつなものです。
辻下 忠雄
エッセイスト・生活礼儀情趣導師(生活開発プロデューサー)
1947年東京大田区に生まれる。成城学園出身。
フランス料理界、ナイトクラブ界、中国料理界の大御所として多くの逸材を育てた父と、料亭経営の傍ら歌舞伎の舞台にも立った祖父の下で育つ。美食歴59年究極の美食家。紳士の中の紳士。ベストドレッサー。生活信条は「明るく・楽しく・仲良く」超楽天主義者。トロント在住。





