グルメの王様のおしゃれ美食道 第29回「楽しい魚スープの世界」







トロントの中華料理店で良く見かける「湯」ですが、既にお気づきのように「お湯」ではありません。中国料理のメニューを見ると、文字が日本語と同じ場合、どうしても日本語として読んでしまいます。中には何とかして解読しようとメニュー相手に悪戦苦闘する好奇心旺盛な人もいて、これも面白文化ですね。でも「湯」は、字は体を現す、ということにはなりません。
「湯」はご存知の方も多いと思いますが、中国語では一般的に「タン」と言われ、中国食文化の主役の一品には間違いありません。
宴会のコース料理では、フランス料理でも近年はスープが少なくなってきた感がありますが、中国料理では「湯」ありのコースは未だに健在です。
先程中国料理の食文化と申しましたが、いわゆる「湯」専門店的なお店では、仕事の合間に、特に元気が出るスープを飲んでいる人々をよく見かけます。ここに中国料理の特徴である医食同源をみる気持ちです。
今回ご紹介するは、魚の湯で知られる人気店、その名も「一品魚湯」。お店に入ると可愛い魚ちゃんがまるで空を飛んでいるようなインテリアに驚かされます。
お薦めはやはり濃厚な魚スープ、つまり魚湯です。日本には魚のスープだけ食べる習慣があまりありませんが、昔からスープでそのお店の力が分かるとも言われ、新鮮な食材が不可欠な料理ゆえ、そのお店と料理人の姿勢が問われる難しい料理でもあります。
この魚スープを中心とした「一品魚湯」では、流石にスープには拘りと自信を持っており、そのスープを目指してダウンタウンから車を走らせる人も多くいます。
スープは料理の基本でもあるので、その美味しさに比例して他の料理も中々味わいのあるものとなっています。
今回は魚シリーズというより海の幸シリーズ的な料理を味わってみました。お馴染みの魚シュウマイは、とても大人しい味でした。そして魚のすり身のフライ。これも新鮮さが追求される料理ですが、このお店では至ってカジュアルな料理として登場します。
そして海と言えば魚と共に話題になるのが貝です。これも定番のあさりのブラックビーンソース炒めを注文してみました。基本に忠実な味ですね。そして先程の主役のスープが冷めない内に、これも同店お薦めの麺もオーダーしてみました。麺と言ってもここではベトナム料理店でもよく見かける、半透明の麺です。具は色々ありますが、この麺に良く合う牛肉のスライスと魚のペーストをリクエスト。当然こちらも魚のスープが使われているものの、ちょっと面白い試みで、自分でスープの濃度を調節してみようと、先程の魚スープを加えて見ました。想像以上の味に満足。
お昼時には、このお店の味わい深い魚スープを求める客ですぐ満席になってしまい、何となく魚スープファン大集合の感があります。帰り際ふと先程の天井のお魚ちゃんたちを見上げると、何となく楽しそうに泳いでいるように思えました。

エッセイスト・生活礼儀情趣導師(生活開発プロデューサー)
1947年東京大田区に生まれる。成城学園出身。フランス料理界、ナイトクラブ界、中国料理界の大御所として多くの逸材を育てた父と、料亭経営の傍ら歌舞伎の舞台にも立った祖父の下で育つ。美食歴59年究極の美食家。紳士の中の紳士。ベストドレッサー。生活信条は「明るく・楽しく・仲良く」超楽天主義者。トロント在住。





