We love Beer | トロントの居酒屋風雲児【第29回】
4月の半ばでも雪が積もったりとトロントはかなり長い冬でした。ようやく春らしい日が続いていますが、このまま暖かくなってほしいものです。日も伸びてきてこれからは良い季節になります。これから夏に向けてビールの美味しい時期です。早くパティオでビールをグイグイ飲みたいものです。まぁ夏じゃなくても毎日飲んじゃいますが。
ビールといえばここ最近はクラフトビールの人気が続いていますが、オンタリオ州でも百軒近いマイクロブリュワリーがあり、年々LCBOでの売上も伸びているそうです。もちろん日本でも人気があり、全国で三百軒を超える醸造所が現在あるそうです。以前では小規模な醸造所のビールは地ビールなどと呼ばれる観光地のお土産や町おこしのためのビールといったイメージでしたが、ここ最近では手間暇をかけてつくったこだわりのビールといったイメージの方が強くなってきたかと思います。カナダや他の国と比べると日本は酒税法の縛りがあるためにビール造りも色々と大変なようですが、先月4月から酒税法が改正されたことにより色々な変化があったようです。
今回のこの改正は、ビールと発泡酒の境目を変えるのが目的と言われています。大きな変更点は2つ。1つは〝麦芽比率の引き下げ〟です。ビールと発泡酒の境目は麦芽比率と原料です。要は麦芽比率が高く、酒税法で認められた範囲内の原料を使えばビールですが、これからは麦芽比率がもう少し低くてもビールと認めましょうという事になります。ビールは基本的に麦芽、ホップ、水、酵母が原料ですが、日本はここに副原料として麦、米、とうもろこしなどを加える事を認めています。有名ブランドだと麦芽100%はエビス、サントリープレミアルモルツ、キリン一番搾りなどですが、意外にもアサヒスーパードライやサッポロ黒ラベルは麦芽100%ではなく米やとうもろこしを使用しています。これまでは麦芽比率が全体の3分の2(約67%)以上でないとビールでなく発泡酒と定義されていましたが、これからは麦芽比率が50%以上であればビールになります。
2つ目は〝使用できる副原料の拡大〟です。今までは副原料は麦、米、とうもろこしなどに限られていましたが、今後は多様な香味を持つビールの製造が可能になるようにとの狙いから、果実や香辛料、ハーブ、野菜などの使用が解禁されました。牡蠣やお茶、鰹節なども原料と認められたのはこれからいろいろな可能性を感じます。以前は麦芽比率が67%以上であっても、認められた原料以外を使用していれば発泡酒扱いでした。そのためオレンジピールやコリアンダーを使用したホワイトビールは今までは発泡酒としての扱いでしたが、これからはビールと表記できるようになります。いままで本格的に作っていたのに発泡酒としか表記できなかったビール生産者の方達には朗報ですね。
まだまだ数は少ないですが、トロントでも最近では日本のクラフトビールが飲めるようになってきました。当店でもカナディアンのお客様からの人気は高いです。大手ビールメーカー以外でも美味しいビールは色々とあるみたいなので、色々と試してみたいですね。鰹節を使用したビール“Sorry Umami IPA”などはアメリカ市場を狙っての販売とのことなので、トロントでもこれから個性的な日本のクラフトビールが飲めるかもしれません。これからどんな個性的なビールが誕生してくるのか楽しみですね。
小笠原 克 Ogasawara Masaru
日本ではファッションブランドGapでアルバイトからマネージャーまで7年間勤務、新規店の立ち上げや日本売り上げNo.1店舗での管理職を経験し、2005年にワーキングホリデーでバンクーバーに渡加。ファッション業界からの転身となるが、調理師免許保持や両親の飲食関係の仕事の影響などもあり、大人気居酒屋Guuでワークビザを取得し男前店で副店長を務める。その後2009年トロントでのFC立ち上げ総責任者に任命されトロントへ。寒い冬でも毎日行列のできる大繁盛店となり、トロントの日本食パイオニアとなる。2014年にはKinkaFamily Inc.の副社長に就任し、居酒屋の他、ラーメン、寿司、焼き鳥などのブランドを管理、2015年10月末GuuとのFC契約終了とともに独立・起業。現在は世界で皆に愛される飲食店を開業できるようにと奮闘中。