グルメの王様のおしゃれ美食道 第43回
「飲茶ヌーベルバーグ」






ご存知のように、飲茶(お茶を飲みながら点心と言われる数々の軽食を楽しむ)という独特な習慣は、中国広東香港を中心に発展しました。近年は年配者に限ったことのようですが、朝起きるとすぐ料理店に行き、お茶と点心を家族や友人たちと楽しむ。午後は若者向けという考えもありますが、とにかく広東系の人々は1日に何度も飲茶を楽しむようで、これは日本にはない思想。正に中国食文化ですね。
当地トロントの中国料理のレベルの高さはいつも感心しますが、当然飲茶に相応しい名店も多く誕生しました。飲茶の主役は点心とお茶ですが、各店それぞれ一工夫凝らしている姿は、私が好きな言葉「切磋琢磨」に通じるところがあります。二昔近く前ですが、スカボローに中国本店を訪れたエリザベス女王を江沢民主席が迎える宴席の写真を掲げた中国料理店があり、こちらの飲茶は、顧客が専用茶器を預けることができるかなり高級感のあるお店でした。とにかく当地の中国及び香港系の人々の「食」に対する意欲は旺盛で、これこそがレベルを高くしている要因です!そして情報の伝達が速く、美味しいお店の話題は、瞬く間に広がります。
様々なお店に何度か足を運んでいる内に、そろそろちょっと個性的な飲茶店に行って見たいという衝動に駆られる方もお出でかも知れません。その願いを叶えてくれるのが、「茶楼」です。英語名CHA LAUは、College 北/ Yonge西、地下鉄カレッジ駅のすぐ近くにあります。
入るとすぐ気が付くのはその個性的な内装です。正にサムシング・ディファレント。これはきっと楽しい点心が食べられるに違いない、という期待感が広がります。
お茶のメニューは竹の蛇腹風に作られてあり(中に解説書)、これも珍しいですね。お茶の種類は他店に比べ少ないながら、点心のメニューの独創性には目を見張ります。やや上海シリーズ的ですが、上海料理店で必ず出される齋菜に湯葉と枝豆を加えたワンタンは綺麗で、見た目にも食欲をそそられます。そしてお馴染みの小籠包。毎回申し上げる様に小籠包後援会会長を自認する私ですが、梅肉の小籠包は初めてお目に掛かりました。そして意表をついたタロ芋入りの春巻きも中々味わい深いです。それから海老と白身魚のすり身の揚げボールも、実はつい先日ロンドンのスペインタパス料理店で味わったものを彷彿とさせ、何となく不思議な感じがしました。
またこれはメイン料理とも言える名物、鶏の手羽先のから揚げの中に中国お得意のもち米を入れてあるところなど流石ですね。そして広東香港点心といえば腸粉。勿論このお店にもありますが、いつも慣れ親しんでいる中身が牛・豚・海老ではなく、何と繊細な食材を使ったベジタリアン向け。これにはびっくりです。さて甘味は…可愛いミニカボチャを象ったデザート。そして見た目にも楽しい三色水晶包。このお店と他店の違いは料理それぞれに小さなソースや調味料が付いてくる所です。そしていわゆる作り置きをしないといわれる頑固さも人気の秘密のような気がしました。
「茶楼」は我々日本人にとっての新しい飲茶文化。本当に楽しく食事をするにはもってこいのお店ですね。
辻下忠雄 エッセイスト・生活礼儀情趣導師(生活開発プロデューサー) 1947年東京大田区に生まれる。成城学園出身。フランス料理界、ナイトクラブ界、中国料理界の大御所として多くの逸材を育てた父と、料亭経営の傍ら歌舞伎の舞台にも立った祖父の下で育つ。美食歴59年究極の美食家。紳士の中の紳士。ベストドレッサー。生活信条は「明るく・楽しく・仲良く」超楽天主義者。トロント在住。




