園長先生!気付けば息子も大きくなりました…第55回
「犬に名前をつける日① / パピーミル」
22年前に誕生した「池端ナーサリー・スクール」。その園長であり創設者の池端友佳理さんのそばにはいつも日系三世のご主人・マークさんと現在23歳で大学在住中の健人くんがいた。母親であり、教育者であり、また国際結婚移民をした友佳理さんとその家族の笑いあり、涙ありの人生をシリーズで振り返ります。
皆さんは「パピーミル」という言葉を聞いた事がありますか?犬が大好き、犬を飼っている、でも聞いた事がない…と言う方も多いかも知れません。
パピーミルとは「子犬工場」の事。営利目的で、特に人気の犬種(時にネコやその他の愛玩小動物)を劣悪な環境下で大量に繁殖させる悪徳業者(ブリーダー)のことを言います。最適な環境のもと純血統犬種を残す目的で適切な繁殖を試みる本当の犬愛好家ではなく、金銭欲のみの営利目的で犬の繁殖をする反人道的なブリーダーです。犬は命ある生き物として扱われる事なく、あくまでも「商品」であり、それも人の目に触れない場所での商品生産ですからその環境は想像を絶するほど酷いものなのです。
パピーミルでは、世の中で人気のある犬種、特に小型犬のヨークシャテリアやチワワ、プードルやマルチーズなどは場所も取らず生産可能ですから、大量生産されがちです。また、日本ではその時その時の流行に多々左右されますので、それによって大量生産される犬種も変わってきます。その犬達は小さなケージに入れられ、一歩も外に出る事なく一生をそこで過ごします。ワイヤーのケージが多く、毛布等が敷かれている訳でもなく、掃除される事もない錆び付いたワイヤーの上で寝、糞尿も同じ場所で垂れ流し状態です。食事は犬が餓死しない程度に与えられ、体の健康状態は考慮されず、母体の状態も顧みる事なく出産可能な限り繁殖が繰り返されます。母犬は仔犬に栄養を取られ痩せ細り、毛も体も糞尿まみれの中、仔犬の世話を懸命にしますが、ある程度仔犬が育つと引き離され、仔犬は売りに出されます。

母犬は、出産出来なくなった時点で処分されます。殺処分施設に連れて行かれるにしても、その数が多いと施設は受け入れてくれませんので、「処分」してくれる業者にゆだねられます。日本でも、犬の大量死体の放棄などがニュースで話題になっている事がありますが、その経由や実情等、詳細が知らされる事はありません。
さて、その仔犬達はどこで販売されているかご存知ですか?それは、ペットショップであり、インターネット上の販売サイトでもあります。幸い、カナダでは大手ペットショップでは生体の売買が無くなってきていますが、ネット上の売買サイトでは今も普通に流通しています。あたかも、自分の家で生まれたかの様に掲載して販売していますが、裏ではどのような状態なのか知る術もないのが実情です。日本では、まだまだペットショップ内のショーケースに仔犬(商品)を入れて販売するのが一般的で、可愛さ故に衝動買いをする人も後を絶ちません。需要があるからこそ供給元が繁盛するのです。
ですから、絶対にペットショップで衝動買いをしないで下さい!犬を探している場合でも、ネット上の売買サイトで犬を購入しないで下さい!「需要」が無くなれば、供給している悪徳業者も「商品生産」を諦めざるを得なくなります。
犬が欲しい場合、まず「里親」になる事を考えてみてもらえないでしょうか。たくさんの行き場を失った犬達が、新しい生活を、また生涯一緒にいてくれる家族を求めて待っています。日本ですとなおさら、まだまだ殺処分が主流ですから、命に期限がつけられ一刻一刻と期限の迫った、消えかかった命がたくさんいるのです。
そんな「犬の命」をテーマにした映画が日本からやってきます!3月10日木曜日、日系文化会館でトロント日本映画祭の一環、そして東日本大震災の5周年追悼イベントとして上映される事になりました。
『犬に名前をつける日』… 動物愛護センターから犬や猫を救い出している人々や、東日本大震災後に置き去りにされた動物を保護している人々の活動を約4年間にわたって取材した山田あかね監督のドキュメンタリードラマです。全てがドキュメンタリーではなく、ドラマパートでは小林聡美が愛犬を亡くしたテレビディレクターの主人公久野かなみを演じ、犬や猫たちの保護活動を追う取材の中で揺れる心が描かれています。
実は、私もこの映画上映の関係者として始めから関与させて頂いています。そのきっかけとなったのが、昨年愛犬を失ったあと、新しい家族として我が家に「養子」として迎え入れたパピーミル出身のビオラ。ビオラは7年間、ケージの中から一度も外に出た事がなく、出産を繰り返し、捨てられた母犬なのです。そんなビオラが我が家にやって来て…詳しくは次号でお話ししたいと思います。
池端友佳理ー 京都出身。大阪の大学看護科を経て同大学病院の産婦人科で看護師として経験後、1990年に渡加。伴侶は日系カナダ人三世。一人息子(大学生)の母。1993年に自宅で池端ナーサリー託児所を開設。1999年日系文化会館内に池端ナーサリースクールを設立。園長を勤める傍ら、カナダ唯一の産後乳房マッサージ師として活躍中。





