園長先生!気付けば息子も大きくなりました…第42回
「父、母の姿」
21年前に誕生した「池端ナーサリー・スクール」。その園長であり創設者の池端友佳理さんのそばにはいつも日系三世のご主人・マークさんと現在23歳で大学在住中の健人くんがいた。母親であり、教育者であり、また国際結婚移民をした友佳理さんとその家族の笑いあり、涙ありの人生をシリーズで振り返ります。
明けましておめでとうございます!!それにしても、一年という年月の経つのが早いこと、早いこと!!この前、私が年女になったと思った所なのに、もう次の年になってしまうなんて…。本年度も何卒よろしく申し上げます!
さて早速で、また新年早々なので私の父が亡くなった日の事を話すのも何なのですが…今日はその父の話をしたいと思います。父はクリスマスイヴに他界したので、その後、私はクリスマスの雰囲気がとても苦手でした。周りがクリスマスで賑わい、クリスマスソングが否応なしにあちこちで聞かれる季節が近づくと、父が亡くなってすぐの頃は寂しくて悲しくて、このシーズンが本当にいやでたまらなかったのです。でも、1月は健人が生まれた月!お正月が来ると、健人の生まれた時の事を思い出し、その成長ぶりを見る事で気持ちが癒されていったものです。父の悲しい想い出から抜け出せるまで随分かかってしまいましたが、今ではクリスマスソングも悲しくなくなりました。
そんな昨年末、父の命日が近かったある晩、とっても不思議な夢を見ました。夢の中で私は子供だったんだと思います。悲しくて泣きじゃくっている私のそばで、父が笑顔で寝そべっていました。泣き止まない私に向かって、一生懸命、つまらない(子供の頃見ていた吉本新喜劇の)ネタを言って、私を笑わせようとしているのです。泣きべそをかいてた私がいつのまにかププッと吹き出して笑うと、父もとても嬉しそうに一緒に笑っていました。そこから急に場面が変わって、マークと健人になったのです。しかめっ面で泣いている健人に向かって、今度はマークが必死でつまらないジョークを言い、それによって健人が笑い、私も大笑いしてその自分の笑い声で目が覚めたのでした。なんだか暖かいものがこみ上げて来て、もう一度目を閉じて、続きをみたいと思ったくらい幸せな夢でした。
もうすぐまた健人の誕生日がやってきます。健人が生まれた時には色々な想いがありました。結婚する前の私は、結婚は遅くて良い。結婚しても旦那さんと思う存分楽しい時間を過ごしていたいから子供は別にいなくても良い…。と言う考えの人間でしたので(今の私からは想像もつかないと思いますが)、自分が思ったより早く結婚し、予想外に子供も出来た事に対し、気持ちが付いていっていない状態でした。お腹の中で日に日に大きくなる赤ちゃんはそれは愛おしく、出産を待ちわびる反面、生活の段取りもままならぬまま、英語もあまり話せず、文化と習慣の違いなどで正直、不安で不安でたまりませんでした。それでも、健人が生まれて来た事によって今までに味わった事のないほどの喜びを感じ、未熟な私たち夫婦は温かい家庭を作ろうと改めて決心したのでした。
しかし、今までの子供のいなかった頃の生活とは一転しますから、私も浮き沈みが激しかったものです。今から考えると若かったマークも色々我慢している所がたくさんあったんだろうと思います。にも拘らず、私の産後ウツにも、ちょっとした時のかんしゃくにもうまく対応してくれて、うまく私の感情をコントロールしてくれていたと、心から感謝してやみません。
マークはお母さんを若い頃に亡くしています。闘病生活が長かったマークのお母さんの姿が私の産後の姿にオーバーラップされて見えたのかも知れません。マークはお母さんから多くの事を学んだといつも言っていました。
母親は” いつも子供のためにそばにいる、強くて、それでいて子供に愛情を注いであげられる一番優しい人で、最も尊敬できる存在” だから、リスペクトしてやまないと。
マークはそんな母の姿から学び、大切な家族を守り思いやりのある家庭を築いて行こうと必死に努力してくれたのだと思います。そのマークの姿が、私の亡き父の姿を思い出させるものでもあるのです。本当にビックリする程性格が私の父によく似ているマーク。出会った頃から、まるで父のそばにいる様な安心感があったからこそ、彼を選んだのかもしれません。そして、健人にとっても非常に良い父親です。
子供はいつも親の姿を見て育っているものだと思います。随分変わって来ているとは言えども、子育ては母親の仕事と言う考えがまだまだ強い日本。しかし、子育ては夫婦が協力してお互いを労って初めて成り立って行くものだと思います。今から結婚を考えてらっしゃる方には特に、この感謝の気持ちと相手を労る思いやりの気持ちを忘れず、優しい家庭を築いて行って欲しいと心より願っています。そして、これは今月23歳になる健人に対しての母の想いでもあるのです。いつか、私の父の様な、そしてマークの様な父親になってくれる事を願って…。
池端友佳理 ー 京都出身。大阪の大学看護科を経て同大学病院の産婦人科で看護師として経験後、1990年に渡加。伴侶は日系カナダ人三世。一人息子(大学生)の母。1993年に自宅で池端ナーサリー託児所を開設。1999年日系文化会館内に池端ナーサリースクールを設立。園長を勤める傍ら、カナダ唯一の産後乳房マッサージ師として活躍中。