園長先生!気付けば息子も大きくなりました…第52回
「言霊のパワー」
22年前に誕生した「池端ナーサリー・スクール」。その園長であり創設者の池端友佳理さんのそばにはいつも日系三世のご主人・マークさんと現在23歳で大学在住中の健人くんがいた。母親であり、教育者であり、また国際結婚移民をした友佳理さんとその家族の笑いあり、涙ありの人生をシリーズで振り返ります。
前回は、「現代では抱き癖はない、赤ちゃんは思い切り抱っこして無視せず話しかけてあげて欲しい」という旨をお話ししましたが、今回はそれに関連した内容です。
インターネットを見ていると、面白くて興味深い記事をたくさん目にします。『ロックを聴かせた味噌汁』や、『モーツァルトをもろみに聞かせて発酵させて作ったお酒』やら…。音楽を聞かせて食べ物の味を良くしたり、野菜や鶏卵などの収穫量を増やしたりすることはなんと昔から行われているそうで、それらを音波栽培と言うそうです。また、微小な振動によってワインが美味しくなったりと、なるほど、色々な科学的根拠を元に食べ物に工夫を凝らしている様です。
また、それと似た様な事で別に興味深く読んだのは、ご飯に話しかけるという実験でした。随分前から言われている事の様なのですが、私が読んだのはごく最近です。
そして、その実験とは次の様なものです。3つの煮沸消毒したそれぞれの瓶に炊きたてのご飯を入れます。1つ目には「ありがとう」や「I love you」など、愛情のこもった言葉をかけ続け、2つ目の瓶には「ばかやろう」など悪い言葉をかけ続けます。3つめの瓶は完全に無視します。日が経つにつれ、3つのご飯に変化が生じます。優しい言葉をかけ続けたご飯はなかなか腐らず、良い状態を維持し続け、悪い言葉をかけ続けたご飯や無視し続けたご飯は、青や緑やオレンジ色のカビが繁殖し、最後はべちゃべちゃと汁っぽくなってしまった、という事なのです。
しかも、色形だけでなく、臭いまでも3つには大きな差が出たという事でした。愛情のこもったご飯はみかんの腐った様な臭いできついものではなかったのに対し、他の2つは蓋を開けたとたん悪臭を放ち、とてもにおいを嗅げる気にならなかったと実験した人たちは言っています。
私は興味を抱いたものの実際に自分で実験してみた訳ではないので、自信を持って大きな事は言えないのですが、ネット上でこの実験をしていた人は結構たくさんいて、どの人も同じ様な結果になっていたというのです。しかも、これは日本語だけに限らず、英語やフランス語とどの言語でも同じ結果だとの事。本当に、面白いなー、と思いましたし、ナーサリーでもぜひ試してみたい実験の1つです。
が、もちろん、これが科学的根拠の元で何がどうなっているのかと言われると、正直、私にも全く分かりませんし、実は実験した人の思い込みなのかもしれません。
ただひとつ、以前から私が強く思っている事は、動物や子供達はもちろん、大人であっても日々繰り返しかけられる言葉の大切さ、重さについてです。これは、実際に言葉を声に出して言う事だけに限らず(実際、声の出せない人でも態度で示せれば同等の価値と判断します。)、毎日、愛情いっぱいに「I love you」を言葉(態度)で降り注いでもらった子供は心身共に豊かに成長する事でしょう。逆にネガティブな言葉ばかり聞かされて育つ子は心の病んだ子になるかもしれません。大人でも同じでしょう。家族や同僚から優しい言葉をかけられて日々過ごせば、やる気満々、活力の源になるでしょう。
『言霊』って、ちょっとオカルトチックで怖い感じですが、私はこの言葉が結構好きなんです。この意味は日本では「言葉に宿ると信じられている霊的な力」との事です。
声に発した言葉が、何らかの影響を与えると信じられていて、良い事を言うと良い事が、そして悪い事を言うと悪い事が起きたり、自分に振り返って来たりすると言われています。
言葉の持つ力は非常に大きく、私は他人にも自分にも、人の口から出て来る言葉が周りの状況や実生活、全ての環境に影響するのは間違いないと思っています。
特に子供の頃、ふと言われた言葉がずっと残っている事ってありますよね。子供の心は繊細ですから、大人の何気ない言葉が大人になってまでも残り、なおかつ後々にまで影響している事は多々あります。特に影響力の強いのは両親、学校の先生、友人達です。本人は大した事がないつもりでも、子供にとっては一生を左右する大それた言葉になる事もあり得るのです。大人達はそれを心して子供達と付き合って行かないといけません。
言葉は種(たね)の様なものです。そこからどんどん、芽が出て膨らんで花が咲きます。そしてまた、言葉は光や水の様な栄養素の存在でもあります。言葉をどんどん吸収して、すくすく育ち、それがやがて実を結ぶのです。子供達や身近な大切な人達に優しく愛情のこもった言霊を浴びせてあげて下さい。その言霊はきっと自分にも跳ね返って来るはずですから。
池端友佳理ー 京都出身。大阪の大学看護科を経て同大学病院の産婦人科で看護師として経験後、1990年に渡加。伴侶は日系カナダ人三世。一人息子(大学生)の母。1993年に自宅で池端ナーサリー託児所を開設。1999年日系文化会館内に池端ナーサリースクールを設立。園長を勤める傍ら、カナダ唯一の産後乳房マッサージ師として活躍中。