歴史遺産の街、ユニオンビル(Unionville)―散策とハイキング |紀行家 石原牧子の思い切って『旅』第50回
ふた昔前にマーカム(当時Markham Township)に住んでいたことがある。ユニオンビルは美容院や毛糸屋さん、図書館、友達と食事をするレストランがあって私の生活圏に入っていた。雪の積もった日には友達家族を誘って土手からトボガンでトウーグッド池(Toogood Pond)めがけて滑った。子供と一緒に奇声をあげていたのがつい先日のようだ。久々にハイキングを兼ねて行ってみた。
18世紀後半ドイツの企業家がマーカムに移住して製粉工場を建設したことから部落が生まれた。1845年に郵便局ができたのを機にTown of Unionvilleと正式に呼ばれるようになる。旧ユニオンビル駅に隣接したスティヴァー・ミル(Stiver Mill)穀物倉庫はまちの歴史の象徴。1900年頃鉄道が敷かれ、穀物が各地へ輸送されるようになりマーカムの経済発展に寄与してきた。この鉄道線は現在はGOトランジットが活用し通勤客をトロントへ送り込んでいる。爆発的な人口増加で実際に使用されている駅はHwy407とKennedy Rd付近の広い場所に移転している。単線で旧駅は小さく遮断機も短いから気がつかない人が多い。警報がなったら電車が通過するまで待機しよう。
ユニオンビル観光はWarden Ave.からHwy7を東に走り、Main Street Unionville(標識にUnionvilleが入れられた)を北に入ったところから始まる。道の両側はジンジャーブレッドと言われる装飾付きベランダや軒のある、サイズも形も異なった古い家屋が立ち並ぶ。電車の踏切を超えたら商店街。右手の大きな旧製材所プレイニング・ミル(Planing Mill)は花屋、小物屋などの雑居ビルと化した。昔の田舎風の佇まいから変身し、街はお洒落なブティック、カフェ、レストランが小ぎれいに彩りよくメイン・ストリートを飾っている。観光地ユニオンビルはマーカム市(City of Markham)の歴史遺産に指定されているため、建物を改修するにも規制が厳しい。オーナーが何代もかわっても昔の個性ある建物がそのまま残されているのは嬉しい。コロナ禍で今店は閉まっているが、レストランやコーヒーはテイクアウト(カフェはスタバを含めて4軒)で営業している。ホリデーシーズンの名残か商店が優しく光の照明に包まれその可愛い輝きは黄色い街灯の光とともに歩く者の気持ちを和ませる。
ハイキングの話をしよう。商店街の北端になる十字路にギャラリーがあるが、左折すればToogood Pondを一周する西のコースだ。(池の手前に駐車場がある)右に渡ればルージュ・リバー・バレー・トレイル(Rouge River Trail)に入る長めの東方向コースがある(川沿いにも広い駐車場がある)。Toogood Pond廻りはダムにかかった橋を渡って左へ。雪解け後ツルツルに凍ってしまったトレイルはハイキングシューズでも足を取られてしまうので滑り止め(Traction gripで検索。10~70ドル)の装着は必須。足の早い人なら30分程度で廻れるが、私は写真を撮りながら歩くのでたっぷり1時間はかける。先日は枯れ木に扮装したオバケのQ太郎を見つけた。帰りは板張りの長い橋を渡ってToogood Pondの南側にでる。氷が張っていれば池は自然のスケート・リンクとなり、私が正月明けに行った時は若者たちがアイスホッケーの初滑りを楽しんでいた。普段は池の北側のスナック小屋が開いていて温かいものが口にできる。昔はパンケーキ・ブレックファストもやっていた人気の場所だが今は残念ながら閉鎖中。
たくさん歩くのが目的ならRouge Valley Trailのサインに沿ってブルース・クリーク・パーク(Bruce Creek Park)に入る。Kennedy Roadが見えてきたら引き返すのもよし、ガードをくぐってオースティン・ドライブ・パーク(Austin Drive Park)の奥まで足を伸ばすのもいい。橋、川、野原、トウヒ林(Spruce)、そしてワルドン池(Waldon Pond)と飽きない光景が待っている。雪の多い日に池も含めて安全に全行程歩くなら2時間は見たほうがいい。大事なトイレの話だが公園内のトイレは私が行った時はいつも閉まっていた。通常はギャラリー向かいのコミュニテイー・センター北壁にある公衆トイレが開いているはずだが、閉まっていることもあるので要注意。不安な人は行く前にどこかで済ませる対策をお勧めする。コーヒーはコースを終了した後のご褒美に。
石原牧子
オンタリオ州政府機関でITマネジャーを経て独立。テレビカメラマン、映像作家、コラムライターとして活動。代表作にColonel’s Daughter(CBC Radio)、Generations(OMNITV)、The Last Chapter(TVF グランプリ・最優秀賞受賞)、写真個展『偶然と必然の間』東京、雑誌ビッツ『サンドウイッチのなかみ』。3.11震災ドキュメント“『長面』きえた故郷”は全国巡回記念DVDを2018年にリリース。PPOC正会員、日本FP協会会員。www.makikoishiharaphotography.com
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