第64回「駐在VS永住」の溝って本当にあるの?|カエデの多言語はぐくみ通信

SNS上などで、海外に暮らす日本人の「駐在組と永住組」という2つのグループの溝がしばしば話題に上ります。本当に私たちはお互いに分かり合えないと感じているのでしょうか?「永住組」の立場から書いてみたいと思います。
駐在組は永住組と仲良くしたい?

知らない土地に越して来たら、「現地のことをよく知っている日本人と仲良くしたい」と思うのは自然なことでしょう。言葉の壁や文化の違いに戸惑うことが多ければ、現地の情報を教えてくれる永住組は心強い存在です。
子どもたちがまだ小さかった頃はトロントには駐在者も多かったので、補習校や現地校で駐在家庭と知り合う機会も多くありました。駐在中の数年だけでもカナダでの良い思い出を作ってほしいという気持ちで、子どものお誕生会や大人の飲み会を開いたり、自宅に呼んだり呼ばれたりをしていました。まわりも永住や駐在と分け隔てなく交流していたように思います(トロントでは)。
ただ、中には、駐在ならどうせ帰ってしまうので付き合わないと決めている永住者もいるかもしれません。駐在組が現地の情報収集や交流のために永住組と仲良くしたいと思うのと同じように、永住者の私は、駐在家庭に仲良くしてもらいたいと思っていました。駐在家庭の子どもたちが持ってくる日本の今のカルチャーや流暢な日本語を、自分の子どもたちに教えて欲しいと思ったからです。そのように、お互い持ちつ持たれつの関係だと思っていました。
永住組は上から目線なのか?
永住組が新しく来た人に「上から目線」という話もよく聞きます。ただ、そのように受け取られてしまうのは、永住者が海外で長く暮らしていくうちに身に着いた、はっきりした物言いが与える印象が原因かもしれません。永住者が初対面で、「駐在ですか?永住ですか?」と聞くのは、私もそうですが、それによって付き合い方を決めるというよりは、相手との会話の糸口や興味の方向性を掴むためといった方がよいでしょう。
永住組の中にも、細かく分けると、国際結婚組と日本人移住組があります。両者の交流は特に違いはないように見えますが、国際結婚同士や日本人家庭同士ならではの共有できる話題や悩みはもちろんあるので、それぞれのグループで固まる方が心地よい人はいるでしょう。そして、近年は、教育移住や永住目的の家族移住なども増えてきていましたが、最近カナダがビザ発行や永住権取得条件の難易度を引き上げたため、このグループは、カナダに残るか日本に帰国するかの大きな決断を迫られています。
駐在生活が終わると人間関係も終わり?
駐在生活を終えて帰国または他国へ移動すると、現地永住者とのつながりも切れるのでしょうか?これは、私の経験ですが、ほとんど切れると言ったほうがよいでしょう。帰国や移動後は新しい生活に追われたり子どもの受験準備に忙殺され、物理的にも心理的にも以前の関係が遠のいてしまうことは理解できます。「人生の節目ごとに人間関係も変わっていく」のは駐在や永住のせいではなく、ごく自然なことです。
ただ、今はSNSの普及で帰国後も繋がり続けることが容易になっているので、交流が続く関係も増えていることと思います。事実、成人した私の子どもたちは昔の同級生とSNSで繋がっているので、日本に帰省する度に旧交を温めているようです。国境さえも易々と超えて繋がり続ける彼らは頼もしい限りです。
「どうせ帰ってしまうから付き合わない」「子どもが卒業すれば付き合いは終わり」など、交友関係に対するスタンスは人それぞれです。ただ、頑なに条件を決めてしまうと素晴らしい出会いの機会を損失してしまうかもしれないので、自然体で接し、ライフステージや相性などで柔軟に決めるとよいと思っています。
海外日系人社会は縮小するの?
2024年、カナダ政府はビザや永住権授与の難易度を上げ、移住のハードルを引き上げました。トルドー首相時代の移民ウエルカム政策による移民増大と住宅価格や家賃の高騰、失業率増加への批判に対する政策転換です。それにより日本人もカナダ移住が難しくなり、永住を断念し帰国する人も見られるようになりました。移住条件の厳格化はカナダだけではなく、トランプ政権下のアメリカはもちろん、イギリスも、入国のための英語力の強化と永住権取得のための滞在年数を2倍の10年に引き上げることを決めました。
既存の日系人コミュニティーでは高齢化が進み、企業の海外駐在員や日本からの長期滞在者も減少傾向にあります。ここに移住条件の難易度が上がり、カナダを含む海外の日系人社会はその規模を縮小していくのではないかという懸念が私にはあります。
そんな中で、「駐在VS永住」といった対立構造を煽る発信はナンセンスで、むしろデメリットの方が大きいでしょう。生活スタイルや人生設計が違っても、異国の地で同じ言語や文化を共有できる仲間がいるというのは、非常に貴重なことです。立場が違っても、海外での日系社会を盛り立てる日本人として、協力できることはたくさんあるはずです。
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