第63回 なぜ文部科学省は英語教育改革に失敗したのか|カエデの多言語はぐくみ通信

小・中・高校の英語学習指導要領が2020年から順次変わりましたが、以前にも増して学校英語が難しくなったと、SNS上では親や教師たちの阿鼻叫喚が聞こえてきます。なぜ文部科学省は日本の英語教育を難しくしたのでしょうか。
覚える事が多すぎる
文部科学省は、アジア最下位レベルにある日本人の英語でのコミュニケーション力向上を目標に掲げました。しかし、現行の制度では児童・生徒に過度な負担をかけ学習意欲をいっそう損なう結果になっています。
新学習指導要領では、小学5・6年生の英語が教科化され、新出単語が600〜700語、中学校では1600~1800語、高校では1800~2500語と、以前の中・高校合計約3000語から最高5000語と1.6倍に増えています。内容も高度化し、小学校に中学2年で習っていた不定詞が、中学校に高校の現在完了進行形、仮定法、原形不定詞が下りています。それにより入試の難易度がさらに上がる可能性もあります。
また、小学英語から中学英語へのギャップが激しく、小学校では英語に慣れ親しむことに重点を置いていたのが、中学1年の教科書は小学校での学習内容は読み書きも含め既習の前提で作られおり、中学入学初めからどんどん先に進みます。
その結果、小学生の「英語嫌い」が2013年度の23.7%から2021年度には31.5%に増え、2023年度の学力調査では、中学3年の英語4技能のうち「話す」の平均正答率が2019年度に比べ18.4ポイント低い12.4%となりました。そして、早くから塾やおうち英語を始めていた家庭の子どもとの英語力の二極化が起こっていて、基本オールイングリッシュで進めることになっている中学での授業がさっぱり分からない生徒がたくさんいます。
新英語指導要領を作ったのは誰?
2016年に、大学教授、教育長、小中高校長や楽天の三木谷社長も含む11人のメンバーを有する「英語教育の在り方に関する有識者会議」が9回の会議を持ち、日本の英語教育をどうするべきかを話し合いました。
その纏めである「グローバル化に対応した英語教育改革の五つの提言」や9回分の議事録を文部科学省のサイトで読んでみました。各2時間を9回、合計18時間の会議では、良い意見も散見されるものの纏まるはずがなく、結局、新学習指導要領は文部科学省の官僚たちが作成したことは明白で、有識者会議はただのジェスチャーだったようです。
文部科学省はなぜこのような無理筋の学習指導要領にしたのでしょうか。私が考えられるのは、英語ができない子の切り捨てとエリートの育成です。小学5・6年生で週2時限、中学で週4時限、高校で週3~4時限という授業時間で英語を話せるようになるのは到底無理です。ならば、目標を高く掲げて、金銭的にも余裕があり英語塾に通わせることのできる家庭の子どもの英語力を伸ばす方が、国の支出も安く手っ取り早いと舵を切ったのでしょうか?考えたくはないですが、それしか思い浮かびません。
現行学習指導要領のどこが間違っているのか

大人になってから英語を習得し、子どもたちをトリリンガルに育てた私から見ると、現行の英語の学習指導要領は間違いだらけに見えます。
【ルー語OKにする】
英語のインプットが極端に少ないのにいきなりオールイングリッシュで発話はできません。「トランスランゲージング」という、バイリンガル教育で使う、英語・日本語と分けず、学習者が知っている言葉を使って発話を促す手法があります。いわゆるルー語です。バイリンガル児もまずはルー語状態から話し始め、すべて英語や日本語での会話に成長させていきます。日本語禁止の授業ではなく、英語で知ってる部分は英語で、難しかったら日本語で代用もOKというユルい状態にしないと外国語は口から出てきません。
【新出単語は激減させる】
英語ネイティブが日常会話で使う英単語の90%は2800語でカバーできます。NEW GENERAL SERVICE LISTにそれらは収められていて無料でダウンロードできます。英語学習者なら2000語程度でかなり日常会話ができるようになるでしょう。
私もカナダで長年英語を使って働いてきましたが、5000語も使って仕事なんてしていません。大きな語彙数よりも、簡単な単語の組み合わせのコロケーションに力を入れるべきです。「go away」や「come from」など、よく使う単語の組み合わせがたくさんあるので、厳選して教えるとよいでしょう。
【小学高学年は幼児ではない】
小学英語では体系的に文法は教えず、場面ごとの会話を聞いて自然にルールを体得させるらしい…無理です。会話を聞いてルールを発見する言語習得ができるのは幼児から小学低学年までです。小学4年以上の子どもは論理的にすっきり理解したいと考えるので、ある程度の英文法、日本語との対比や英語の語順のルールを教えないと、子どもは霧の中で道を見つけるような状態で学習しないとなりません。
【アジアの国を参考にする】
EF English Proficiency Indexという非英語圏の国別英語力ランキングで、日本は113か国中92位でアジア圏でほぼ最下位レベルです。韓国は50位、台湾は最新のランキングにはありませんが40位レベルで、若者はほぼ誰でも英語を話せます。PISA(OECD15歳生徒の学習到達度調査)に2025年から英語が加わる事が決まっていて、現在トップレベルの日本の順位が下がることは確実です。アジア諸国の英語対策を参考にしてはどうでしょうか。
学校英語が異常に難しくなり、英語嫌いの子どもを増やすという状態は文部科学省の大きな失態です。次の改定では現実的な方法を取り入れられることを切に願います。
【参考】 文部科学省「グローバル化に対応した英語教育改革の五つの提言 」
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/102/houkoku/attach/1352464.htm
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