第73回「失われたカナダ人救済法Bill-C3が施行されました」|カエデの多言語はぐくみ通信
カナダ人と結婚した国際結婚家庭にも大いに関係のある法律が施行されました。今までの法律とどのように違い、そのメリット・デメリットは何でしょうか?
何が問題だったのか

以前の私のコラム記事、第37回「あなたの孫が『失われたカナダ人』になるかもしれないと知っていますか?」や第48回「失われたカナダ人裁判のその後」でご紹介した、カナダ国籍の問題を是正するであろう法律Bill-C3が、2025年12月に施行されました。このカナダ国籍法は、カナダ人と結婚したり、将来カナダ国籍を取ろうとしている人にも影響があります。
親がカナダ人であるにもかかわらず、カナダ国籍を持てなかったり、あるいは失ってしまった『失われたカナダ人(Lost Canadians)』を救済し、また、今後カナダ人の子どもとして生まれる人に、法律による不利益を生じさせないようにとの意図が、このBill-C3にはあります。
カナダ国籍法は何度か改正されています。ただ、血統主義で受け継がれていた国籍が、2009年の保守ハーパー政権によって、カナダ国外で生まれたカナダ人の国籍の継承を一代限りにするとして大きく変わりました。カナダ人の親が外国生まれ第一世代で、その子どもがまた海外で生まれた第二世代の場合に、自動的に国籍が与えられなくなったのです。
しかし、2009年以降も、個別の対応でカナダ国籍を回復できるケースや法の手直しはありました。それでも、一定の人々が法の網から漏れてしまい、無国籍状態になる子どもも存在しました。それらの人々が、この『二世切り捨てルール』が違憲であると裁判を起こし、2023年にオンタリオ州最高裁がそれを認め、カナダ政府に法の改正を求めたのです。今回、裁判所の決定から2年を経て法律が施行されたことになります。
私の子どもたちもカナダ国外生まれ第二世代であり、もし2009年以降に生まれていたら、この法律が適用されていたでしょう。また、海外生まれカナダ育ちの彼らの子どもがもし海外で生まれたとしたら、自動的にカナダ国籍は与えられない状態だったのです。
Bill-C3で何が変わるのか
さて、Bill-C3で何が変わるのでしょうか?大きく2つ挙げられます。
❶ ファーストジェネレーション制限の撤廃
これまで、国外で生まれたカナダ人の子どもが国籍を受け継げるのは初代のみという制限が撤廃され、いわゆる第二世代以降も「条件付き」で国籍を取得できるようになりました。
❷ サブスタンシャル・コネクション要件
施行後、国外で生まれた第二世代以降の子どもが国籍を受け取るためには、親が出生または養子縁組前に、通算3年(1095日)以上カナダに物理的に滞在していたことを証明しなければなりません。この『サブスタンシャル・コネクション』テストは、カナダとの実質的な関わりを重視したものです。
新しい法律で影響を受ける人数について、正確な数字を出すことは難しいとしながら、カナダ議会予算局の推計では、2024年の評価で、今後5年間で約11万5千人が影響を受ける可能性があるとしました。
新しい法律の問題点
Bill-C3は広範な救済を実現した一方で、当然ながら批判や懸念の声も存在します。主な論点を見てみましょう。
❶ 『便利なカナダ人』問題
一部の市民や団体は、新法が国籍のハードルを下げすぎていると懸念しています。「カナダ国籍の価値が薄れる」「カナダに貢献しないで国籍だけを取る『便利なカナダ人』が増える」といった意見も散見されます。こうした意見には、近年、存在感を大きくしているある移民コミュニティーに対しての懸念が表れています。
❷ 3年は長いのか短いのか
将来の世代に適用される新しい要件では、親が出生前に「通算」3年間カナダに滞在していなければならないという条件が設けられています。一部議員からは、「継続的」に5年の滞在が適当という意見が出ましたが退けられました。「3年は短すぎる」、逆に「長すぎて実質的な制限になっている」という相反する批判があります。長い?短い?皆さんはどのように感じるでしょうか?
❸ 国際養子縁組の扱われ方
新しい国籍法Bill-C3で、国際養子縁組と国内養子縁組の扱いを違えることは、国際法(ハーグ条約)の原則に反するという意見もあります。国外で養子となった子どもがカナダ国籍を得るには、養子縁組を望む親が『サブスタンシャル・コネクション』テストに通る必要性があます。このテストは国内養子縁組の親には課せられないので不公平であるという見解です。政府は細かな部分まで検討する時間がなかったとしていますが、今後も議論を残しそうです。
まとめ
Bill-C3は、長年カナダ国籍を巡って存在してきた『失われたカナダ人』という制度上の不合理を是正し、これまで国籍を得られなかった人々やその子孫に公平な機会を与える画期的な法改正です。
ただ、様々な懸念や心配、不平等感を持つ人も一定数いて、今後、実際の法運用や実績次第で評価が分かれるでしょう。もちろん、これですべてがうまく行くわけではなく、今後も議論や改定が継続する可能性があります。
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