「カナダでまさかのシングル・ママ・ライフ」Natural Japaneats・オーナー 前澤千紘さん カナダ歴:15年|私のターニングポイント第32回
カナダ歴:15年
職業:Natural Japaneats・オーナー
お餅や大福の美味しさをトロントで広めている前澤さん。2010年ごろからファーマーズマーケットに出店し、オンタリオ州産の苺を使った大福や地元の食材を活かした餅菓子が好評だ。そんな彼女のターニングポイントは突然すぎる夫との死別だ。
カナダ人の最愛の夫に突然の余命宣告
2009年にカナダ人の最愛の夫と結婚をし、幸いにも娘二人に恵まれとっても幸せに暮らしていました。2020年に念願であった小さなファームを購入し、トロント市内から田舎町に移り住み、
「さぁこれから自分たちで野菜を作り、スローライフを築いていくぞ~!」という時に、夫の脳腫瘍がみつかりました。
そして、その直後に余命宣告。
コロナ渦の通院が不便な中でも、生きる希望を捨てず、様々な治療法を探し続けましたが、その甲斐なく夫は旅立って行きました。もうすぐ2年が経とうとしています。
娘たちを連れて、日本へ帰国しようかとも考えましたが、彼女たちの希望と、私もこちらで仕事を続けたいという意思が固まり、今に至ります。
求めれば必ず駆けつけてくれる人がいる、
頼られることを喜んでくださる人がいる。
余命宣告をされた当初は、とにかく不安と恐怖で泣いてばかりいました。一方で夫はいつ何があっても良いようにと、残される私たちのために、淡々と終活を始めました。また、自らの病状を親戚や友人たち全てにすぐに告白し、少しでも力になってほしいと助けを求めてくれていました。お陰様で、たくさんの友人が通院の送迎を手伝ってくださったり、夫の話し相手になってくださりと彼は最後まで笑顔を絶やすことなく、過ごすことが出来ました。
辛いときは特に塞いでしまいがちな私ですが、そういうときこそ、周りに助けを求めなさいと夫から学んだ気がしています。求めれば必ず駆けつけてくれる人がいる、頼られることを喜んでくださる人がいる、ということを痛感しました。
今現在、田舎町のファームでひとり子育てをする中、ひとりでは乗り越えられない難題に多々出くわします。不安が拭いきれないときもあります。でも夫の残してくれたメッセージを思い出し、ひとりで抱え込まず周りの方々の力をお借りして、前へ進むことを心掛けています。
毎週、地元の人たちが「mochi!!」と朝早くから買いに並んでくれる
独身時代は、菜食料理に興味があり、アメリカの学校へ通ったり、各国の農家カフェで働いたりと、様々な環境で学びを続けておりました。カナダに移民後、小さな子供がいても出来る仕事をと思い、2010年夏よりファーマーズマーケットでの出店を始めました。
当初は玄米おにぎりや、焼き菓子のみの販売でしたが、ある日、日系のお客様から「おばあちゃんが昔作ってくれた大福が食べたい!」とご要望をいただき、それをきっかけに、オンタリオ州産の苺を使った大福や地元の食材を活かした餅菓子の研究を進め、種類を増やしてきました。
その頃は、餅の認知度はほとんどなく、興味本位で試してくださる方ばかりでしたが、今では毎週、老若男女の地元の方々が「mochi!!」と朝早くから買いに並んでくださっています。
日本のお餅の美味しさがカナディアンに認められつつあることを実感しています。
■ いまの自分に点数をつけるとしたら?
100点
今私は十分満たされているので、ここから溢れ出てくる幸せは周りの方々へシェア出来たらと思っています。
■ 学生時代のエピソード
高校三年生でニュージーランドに渡り一年間の交換留学をしました。日本の高校では部活に勉強に毎日忙しく過ごしていたので、現地でののんびりした生活が苦しく、また言葉の壁にもぶち当たり続け、ホームシックの日々。それでも、あの苦しかった経験とそこで迎えてくださったホストファミリーとの出会いは、私の人生の基盤となっています。
本当の娘の様に可愛がってくださり、NZ各地で様々な体験をすることができました。留学後も頻繁に連絡をとっており、数年おきにカナダにまで会いに来てくれます。私にとって第二の両親です。
■ もし人生をやり直せるとしたら、いつ?
やり直したいとは思っていませんが、戻れるならば夫にもっともっと感謝を伝えたいです。
■ 人生で大事なもの
どんなことが起ころうと、そこから学ぼうとする意欲を絶やさないことだと思います。良いことも悪いことも、自らに起こること全てに意味があると信じています。
■ 将来の夢・ライフプラン
私のこれまでの人生、様々な土地でたくさんの先駆者たちに教えをいただき、今の私があります。40代となりこれからは、私自身が若い世代に貴重な体験を提供できる人になっていきたいと考えています。そのためにも、カナダでのお餅の需要をますます増やし、同時に仲間も増やしていけたらと思っています。
-好きな本:エーリッヒフロム『愛するということ』、西野亮廣『革命のファンファーレ』
-尊敬する人:西任 暁子氏
-感謝している人と一言メッセージ:父と母。幼い頃からいつも今でも、最大の愛で包んでくれて本当にありがとう。
-カナダの好きなところ:多民族国家。自分が外国人だと感じないところ。