世界の日本酒ブーム、トロントに到来!
2012年4月、古川国家戦略相が「日本酒と焼酎はコメと良質な水という日本が誇るべき産物から生まれた文化であり、輸出産業として世界を席巻できる可能性を秘めている」と述べた。日本酒や焼酎を「国酒」と位置づけ、海外展開の後押しをする方針を明らかにした。トロントでは日本酒の知識と魅力を多くの人に知ってもらうために、オンタリオ州の主な酒エージェント10社が集まり、Sake Institute of Ontarioが発足。5月31日にはおよそ30の酒造会社の協力のもと、100種類の日本酒とトロントを代表する6店のレストランの競演、「KAMPAI TORONTO – Festival of Sake」が開催される。
世界の中の日本酒普及活動
オーストラリア・シドニーに「Tetsuya’s」という高級レストランがある。この店は常に世界的なレストランガイドの上位にランクされ、半年先までほぼ満席状態が常に続き、世界のセレブ達が常連の店。オーナーシェフでオーストラリア屈指の料理人として知られる和久田哲也氏は、日本から一流の地酒を空輸し、ワインとともにコース・メニューの一部に取り入れ、フレンチと日本酒の融合を実践している。また酒蔵の職人を囲んだ試飲会を開催したり、現地の食のオピニオン・リーダーやマスコミを多数招き、和久田氏の料理とともに日本の地方の伝統的な酒蔵の銘酒を紹介する夕食会を開くなど日本酒の普及に海外から貢献している。和久田氏は2010年にシンガポールに出来たカジノ内に「Waku Ghin」を出店し、そこでも日本酒の普及に積極的に取り組んでいる。このように世界では、海外で活躍する日本人シェフをはじめ、有名シェフらが日本酒の素晴らしさに魅せられ、自身のレストランで日本酒とのマッチングを紹介しており、我々も比較的容易にその体験ができるようになっている。
なぜトロントで日本酒ブームの予感!?
トロントではGUUの出店により、一気に居酒屋ブームに。GUUは福島の奥の松とコラボし、オリジナルラベルの日本酒をローカル層に向け発信。エグリントンにあるトロント居酒屋の先駆者Finは非常に沢山の種類の日本酒を売りにし、季節ごとに日本酒と合わせたマッチング・フードの提供なども試みている。またダウンタウンにある日本人の支持が高いKOYOIでは熱燗を二種置き、熱燗の持つ本来の旨さを多くの人に広めようとしている。また今年は東京で30店舗を経営する、ねじべえの進出や、バンクーバーの大繁盛店の金魚の出店も噂されており、あらためて日本酒が一つのコンセプト・キーワードとなりそうだ。
また16&17Pで紹介しているが、トロント屈指の高級レストランConoeやNORTH44、オイスターバーで有名なPure Spiritsなどではオンタリオの地酒である泉とコラボしたり、メニューに組み込んでいる。同時に日本食をフュージョンさせた新しいスタイルのコンセプトレストランが登場しており、先駆けとしてKiやblowfish、AMEなどが日本酒を強力なコンセプトの一つとしており、このようなアップマーケット向けのお洒落でモダンな日本をコンセプトにした店が増えてきていることが、日本酒とローカル層を結びつける強い架け橋になるであろう。
復習!日本酒の種類
「純米酒」
精米歩合70%以下の白米、米麹及び水のみを原料として造られ、醸造アルコールや糖類などを使用しない米だけの日本酒。使用されている米の旨みが特徴。
⇒コクがある純米酒は油料理にピッタリ。肉料理、油炒めがよく合う。また乳製品、例えばチーズに合うのは純米酒がイチオシ。バターソテーなどの濃厚な洋風料理にもピッタリ。
「吟醸酒」
精米歩合が60%以下、つまり精米前のお米から60%の量になるまで精米をおこなった米を使って作られる。さらに色合い・風味が良いものである必要がある。つまり、原料から仕上がりまで一定の基準を吟味されたもの。
⇒香りを楽しみたい吟醸酒には肉などの脂が濃いものはあまりできない。日本酒の良いところとして生魚など、魚介類の臭みを気にしなくていいというポイントがあるので、魚の塩焼きなどで合わせてみては。
「純米吟醸酒」
吟醸酒のうち、醸造用アルコールを添加していないものをとくに純米吟醸酒という。一般に、他の吟醸酒に比べて穏やかな香り(控えめな香り)となる。
⇒刺身、寿司など比較的全般の料理との相性がよく、またコクもあるのでやや脂のある天ぷらなどもおすすめ。
「大吟醸酒」
吟醸酒のうち、精米歩合50%以下の白米を使用し、香味及び色沢が特に良好なものをいう。芳醇な香りと淡麗な味はまさに日本酒の芸術品と言われている。フルーティで華やかな香りと、淡くサラリとした味わい。
⇒香りが命の大吟醸。一杯目は何もつままずにお酒を楽しむのがおすすめ。二杯目からは香りを邪魔しない料理や、淡白な魚の昆布締めなどがおすすめ。
「純米大吟醸酒」
大吟醸酒のうち、精米歩合50%以下の白米、米麹及び水のみを原料とするものいう。一般に、他の大吟醸酒に比べて、穏やかな香りで味わい深い。大吟醸酒と純米大吟醸酒の違いは明確で、醸造アルコールをプラスしていれば大吟醸酒、そうでなければ純米大吟醸酒になる。ずっしりしたコクがあり、後味の良さが特徴。
⇒大吟醸と比べ、濃厚なので多少脂っこいものでも美味しく感じる。特に塩と相性がいい。
「にごり」
発酵を終える寸前の“もろみ”をまったく漉さないか、もしくは粗めの布で軽く漉すだけにして、素材を生かしたお酒。名前のとおり、澱が残るために白いにごりが残る。その味は濃厚、甘口という感覚が強いものが多い。アルコール度も普通の清酒よりも高く、どっしりした飲み口。また、発泡系のにごり酒はシャンパンなのかと思うほど軽やかで、女性や日本酒が初めてといった人に人気が高いのも特徴。
⇒にごり酒は色々な料理に合うのが特徴。ワインがあう食べ物であれば大抵はおすすめできる。
「古酒」
年月を置くと旨くなるのはワインやウィスキーに限ったものではなく、日本酒も上手に寝かせることによって独特の風味があふれ出す。古酒と呼ばれるには最低でも3年以上、大古酒と呼ばれるには100年は寝かせなくてはならない。
⇒パンチが効いた味わいなので濃厚こってり物にもまけません。ステーキや角煮などの肉料理がおすすめ。
「本醸造酒」
精米歩合70%以下の白米、米麹、醸造アルコール及び水を原料として造られた日本酒。昔ながらの造りで、燗酒としても美味しく頂ける。
⇒油が強い料理にも美味しく飲め、お互いを引き立てる。脂っこくてもさらっと流せるので油を使った魚介類料理に合う。
「原酒」
通常、日本酒は加水調整といって、原酒に水を加えてアルコール分を調整してから販売されるが、この加水調整をしないアルコール分の高いものが原酒。濃厚かつアルコール度が高いのが特徴。
⇒濃くてアルコール度が強いので脂の乗った魚に合う。
「生酒」
火入れを行っていない日本酒のこと。加熱していない分フレッシュで新鮮な飲み心地が特徴。
⇒繊細な味わいを楽しみたいので野菜スティックや山菜のおひたしなど味わいを邪魔しないものとベストマッチ。
酒サムライ、ご存知ですか?
日本の若手蔵元の取り組みにも注目したい。全国の若手蔵元で組織する日本酒造青年協議会は日本酒文化を日本国内のみならず、広く世界に伝えていくために、「酒サムライ」を結成している。海外では和食や日本酒の普及や評価は年々高まり、青年協議会では「酒サムライ」の称号を叙任し、叙任者と力を合わせ、日本酒の魅力を世界に発信している。左記の和久田氏やアメリカ人の日本酒伝導師として広く知られているジョン・ゴントナー氏、京都の有名料亭、菊乃井の村田氏など有名シェフや著名人が叙任されている。
毎年世界各地で行われている日本酒イベント。
昨年から今年にかけて注目を集めたイベントを一部紹介!
The Joy of Sake
www.joyofsake.jp
海外で催される最も大きな一般公開の利き酒イベント。2001年から毎年開催されており、ホノルル、ニューヨーク、東京の三都市で行われている。各都市200、300種類以上の銘酒を最高のコンディションで提供し、屈指のレストランがつくる本格的な日本料理やアジア料理と共に堪能することができる。
Japanese Food & Sake Collection
japanesefoodsakefestival.com
米国にあるJFCA (Japanese Food and Culture Association)が主催する日本食や日本酒を紹介するイベント。今年は1月に、ロスのヒルトンホテルで行われた。50を超えるブースでは、日本酒テイスティング・コンテストの他、日本料理の実演や寿司の大食いなども楽しむことができる。
The EAT-JAPAN Sake Awards
hyperjapan.co.uk
イギリス最大の日本文化に関するイベント。その食部門であるEAT-JAPANが独自に行っているSAKE AWARDS。このAWARDはイギリス史上最大の日本酒試飲会といわれている。
Festival do Japao
www.festivaldojapao.com
毎年約20万人以上が訪れるというブラジルの日本祭りで、ブラジル初といわれる大規模な日本酒の試飲会が行われた。日本から酒問屋を含めた7社の蔵元関係者が自慢の地酒を振る舞った。ブラジルにも大手酒造メーカーはあるが、吟醸酒などの味わい深い日本酒には滅多にお目にかかれなかったようで、この好反応に蔵元はブラジルへの本格的進出を検討しているようだ。
Sushi & Sake GALA
www.sushisakefest.org
シアトルに住んでいる日本人で知らない人はいないといわれているイベント。日系アメリカ人の歴史を後世に伝える活動をしている非営利団体『Densho』を支援するために考案された。今年度はシアトル選りすぐりの寿司店8店舗が寿司などを振る舞い、訪れた人々は『Choya Umeshu USA Inc.』や『Gekkeikan Sake (USA) Inc.』など約10社の日本酒と共に舌鼓を打った。