2021年の不動産マーケット予想|そこが知りたい!不動産のプロが教える賢いカナダライフ【第34回 】
新年明けましておめでとうございます!本年も皆さまにとって健康、安全で幸多き一年となりますよう祈念申し上げます。今年も弊社スタッフ一同尽力いたしますので何卒よろしくお願い申し上げます。
今回は2020年の不動産マーケット状況を振り返り、2021年の予想についてお話したいと思います。
昨年1月号で2020年の予想をした際には、今後も継続した賃料アップと貸し手市場が続くであろうとお話させていただきましたのが、コロナウイルスの出現と感染拡大によりその予想とは全く反対となる結果となりました。
図1、図2は住宅賃貸における、2019年第4四半期(2019Q4)から2020年第3四半期(2020Q3)までのGTAにおける各部屋タイプ別の平均賃料の実績です。
2020年振り返り
賃料は第2四半期から減少
トロント市は借手市場
2019年末から2020年第1四半期にかけて、コロナウィルスが感染拡大しロックダウンがされるまでは、賃料は前年に引き続き上昇傾向でした。ロックダウンにより人の流れがストップしたことで、春の不動産シーズンを迎えた4~6月においても賃貸マーケットは降下していき、コンドミニアムでは全タイプの部屋における平均賃料は初めて前年度比ダウンとなりました。その傾向は第3四半期においても続き、9月から新しい借手が見つかることを期待していたオーナーたちの予想は裏切られました。マーケットはさらに冷え込み、本来であれば1年のうちで最も賃料が上がる7~9月の第3四半期であるにもかかわらず、第2四半期よりも平均賃料は悪化、前年同期比に比べても約9~16%の大幅ダウンとなりました(図1参照)。
タウンハウスの賃貸状況もコンドミニアムと同様に第2四半期から第3四半期にかけて平均賃料は低下したものの、3BRなどの大きめの部屋においては若干のアップとなりました。これはダウンタウンのコンドミニアムに比べてタウンハウスはそれほど退去が進まなかったこと、コンドミニアムからタウンハウスへ住み替えをする人が増えたことなどが原因と思われます(図2参照)。
特にダウンタウンのコンドミニアムを中心に、借手を探す賃貸募集が急増しました。第3四半期におけるリスティング数(賃貸募集物件数)は、前年同期に比べて倍以上増加した、113%アップとなりました。
弊社が今年の賃貸仲介実績を通じて何より感じたのは、ダウンタウン~ノースヨークのエリアにかけては、平均賃料が100~300ドルほど低下したこと、これまでには起こりえなかった絶好の借手市場であったことでした。通常だと2か月分以上のデポジットを求められたケースでも2か月分でOKとなったり、多少先の入居日でもOKになったり、賃料の値引き交渉が通ったり、と今までではなかなか叶わなかった事項がOKになり、まさに借手が物件を選べるマーケットだったと思います。
ダウンタウンから郊外へ
空室率の変化
在宅勤務の定着を背景に、今年はダウンタウンのコンドミニアムの空室が増える一方で、郊外への住み替えが進みました。このことは2019年末には0.7%だったトロントの空室率が2020年第3四半期には0.9%とアップした反面、2019年は1%だったPEEL地区、0.8%だったYORK地区、1.1%だったDUHRAM地区が、それぞれ0.4%、0.3%、0.4%と軒並み大きく空室率が減少していることからもうかがえます(図3参照)。夏には、ダウンタウンのコンドミニアムは1か月近く空室が続いている物件がある一方で、ミシサガやリッチモンドヒルのタウンハウスや戸建ての良物件は数日で無くなってしまうというケースもありました。
一方、住宅の売買マーケットは4、5月には一旦落ち込んだものの、6月から徐々に回復を見せ、不動産平均価格はパンデミック前よりも上回り、7月には成約件数においても上昇傾向に転じました。7月以降も成約数は前年同期比に比べて増加しているとともに、不動産平均価格においては2020年1月~11月まで全ての月において前年同月比よりアップしたことは、トロントの不動産マーケットの底堅さを物語っていると思います(図4参照)。
2021年予想1: ダウンダウンのコンドミニアムの低賃料は夏頃まで続く
カナダ政府は2021年、2022年において、移民の受け入れを40万に増やすと発表しています。今後ワクチンが普及し、再び人の流れが戻ってくることが予想されますが、世界の国々との往来が通常に戻るには一定の時間がかかると見込まれます。来年の9月をめどに経済活動や教育状況を通常に戻ることが予想されますので、それまでの間は、ダウンタウンのコンドミニアムの供給過多の状況は続くことが予想され、借手市場が続くことが予想されます。
予想2: 郊外への住み替えは続く
在宅勤務が定着したことにより、2021年も引き続き在宅勤務を奨励したり、出勤と在宅のバランスをとる企業が続くことが予想されます。そのため、他人との接触が多いコンドミニアムを避けたり、居住空間のサイズアップを図るため、郊外における戸建てやタウンハウスの賃貸の需要は2021年も継続するものと思われます。今年同様、ミシサガやオークビル、リッチモンドヒル、マーカムなど車でダウンタウンに行きやすい郊外のエリアでの賃貸マーケットは貸手市場が続き、賃料もアップするものと思われます。
予想3: オーナーの自己使用による退去要請
コロナ禍によるビジネスへの影響で賃料を払えない人や住宅ローンを払えなくなる人も顕著化すると思います。2020年にもお客様の実例として、貸していた物件にオーナー自身が住むことになり、急に住み替えを余儀なくされたケースがいくつかありました。この可能性は2021年も継続すると予想されます。また賃貸マーケットの悪化により、「貸せないなら売ろう」と思うオーナーも増えています。現在マンスリー契約である場合、現在のオーナーや物件を買った新しいオーナーから「自分が住むから出てって」と言われれば60日以内に退去しなければなりません。そのため、来年前半等に契約更新を控えている方は、再度1年間の賃貸契約を結んだ方がいいのか、マンスリー契約の方がいいのか、ご自身の状況に応じて十分にご検討ください。
予想4: ルームシェアやベースメントアパートのニーズ拡大
昨年の予想の際には、賃料高騰を背景にルームシェアが増加するのではないかとお伝えしましたが今年は特に海外からの学生がトロントに来なかったことでダウンタウンのスタジオタイプや1BRの部屋は空室が急増しました。スタジオタイプの部屋は1600ドル程度で探せるようになったものの、政府の援助も終わり、コロナ禍で収入減に悩む人たちが増えていることから、今後は学生に限らずルームシェアや賃料の手ごろなベースメントアパート物件へのニーズは増えていくと思われます。
コロナ禍が続く2021年は予想できない部分も多くありますが、皆様と良物件との出会いが沢山ありますように!
- ● LOBLAWS loblaws.ca
- ● LONGOS longos.com
- ● METRO metro.ca/en
- ● WHOLE FOODS wholefoodsmarket.com
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データ出典: Toronto Real Estate Board