2021年振り返り~賃料は第2四半期から増加、トロント市は貸手市場に戻る~|そこが知りたい!不動産のプロが教える賢いカナダライフ【第46回 】
新年あけましておめでとうございます!この新しい一年も皆様にとって健康で幸多き一年となりますよう祈念申し上げます。今年も弊社スタッフ一同尽力いたしますので何卒よろしくお願い申し上げます。
新しい年を迎え、今後の不動産マーケットが気になるところですが2021年の不動産マーケット状況を振り返り、2022年の予想についてお話したいと思います。
2021年は第3四半期を迎えダウンタウンでの賃貸ニーズが高まりを見せた
2020年から引き続き2021年第1四半期頃まではコロナウイルスの感染拡大の影響により、ダウンタウンやノースヨークでのダウンタウンの賃料は100~500ドルほど急落しました。一方で、ノースヨークやミシサガ、ニューマーケットなど住宅地のタウンハウスや戸建ては賃貸ニーズも急増し、賃料もニーズもアップし続けました。
第2四半期に入り、人の流れも戻り始めるとともに春の不動産マーケットのシーズンも迎え、活発な売買マーケットに伴い、夏に向けて賃貸も復活の兆しを見せ始めました。第3四半期を迎え、トロント大学はじめ各学校は通学を発表したことで、7月から一気にダウンタウンでの賃貸ニーズは高まり、コロナ前と同じ、あるいはそれ以上の争奪戦の様相を呈しました。
特にダウンタウンでは昨年コロナ禍での入学を一年延期することを許可したこともあり、夏は学生の方のお部屋探しのニーズがさらに増えたように感じました。一年で最も人の動きがあり不動産も流動性の高い時期は6月末~8月末の2か月間と思いますが、当該期間を振り返りますと、まさに1~2週間ごとに物件の選択肢が少なくなり、賃料はアップしていったことを覚えています。
例えばダウンタウンの2BRはファミリーの方にとっても、ルームシェアをする学生の方にとってもニーズの高い間取りとなり、良物件には複数のオファーが殺到し、2500ドルの募集金額が3000ドル以上に吊り上がることも珍しくありませんでした。ある時はヤングブロア駅近くの1700ドルの良物件にオファーしようとしたところ、オーナーエージェントから「もうこれ以上はオファー入れないでほしい。金額も驚くほど高くなったよ」と言われたこともありました。
2021年第3四半期の平均賃料は前年同期比に比べて約2.4~6.4%のアップ
2021年第3四半期の1BRの平均賃料は2060ドルでした。これは、コロナ前の2019年第3四半期の1BRの平均賃料2262ドルに比べてまだ追いついていない数字ではありますが、ダウンタウンの一部のニーズの高いエリアなどを中心として、賃貸マーケットの復活を肌で感じました。またノースヨークの賃貸取引もダウンタウンほど急増はしていないものの、良物件は数日で無くなるというコロナ前の状況に戻っていきました。
一方、取引件数については、2020年のコロナ禍によりダウンタウンの賃貸物件が在庫激増でしたが、その状況も人々の流れに伴い改善され、2021年第3四半期おける取引件数は前年度比11・6~22・7%のアップでした。2020年第3四半期の全体のリスティング(募集)件数は3万4860件数、取引件数は1万4019件、成約率約40%でしたが、2021年第3四半期の全体のリスティング件数は2万3522件数、取引件数は1万6121件、成約率68・5%と大幅アップしました。
引き続き市内から郊外へ、空室率の変化
2021年も在宅勤務がまだまだ続くなか、郊外への住み替え人気は続きました。2020年末には0.9%だったトロントの空室率が2021年第3四半期には1.7%とアップした反面、2020年は0.5%以下だったPEEL地区、YORK地区、DUHRAM地区が、それぞれ0.9 %、0.8 %、0.7 %、HALTON地区は0.2 %とかなり低い空室率となりました(図参照)。HALTON地区は郊外でもいいから、自分の手の届く価格での物件を買いたいと思う人が増えたとともに、オーナーによる自己使用も増えたのではないかと推察します。
住宅の売買マーケットは2021年2月に初めて平均不動産価格100万ドルを超えるという記録を達成した後も上がり続け、2021年の最高値は11月の約116・3万ドル、前年同月比の最高値は4月の32・9%でした。毎月100万ドル以上の平均価格となり、堅調な活発さをキープしています。2021年4月には前年同月比約4.6倍、5月には2.6倍となる取引件数を記録しました。
2022年予想
予想1 ダウンダウンの賃料はコロナ前の価格に
オミクロン株の感染拡大と今後の人の流れがどうなるかが懸念されるところですが、今後ブースター接種が広がること、経済活動を完全に止めるロックダウンの状態に戻る可能性は低いのではないかと予想されます。また1月や2月までオンライン授業を発表している大学やカレッジが秋に向けては通学体制に整えていくと思われます。そのため、ダウンタウンのコンドミニアムの賃料は秋ごろをめどにコロナ前の賃料相場まである程度戻っていることが予想されます。
予想2 郊外での住宅人気は続く
2022年も在宅勤務を継続する予定の企業は少なくありません。そのため、引き続き郊外における戸建てやタウンハウスの賃貸の需要は今年も継続するものと思われます。昨年同様、ミシサガやオークビル、リッチモンドヒル、マーカム、オーロラ、ニューマーケットなど車でダウンタウンに行きやすい郊外のエリアでは、売買も賃貸もオーナー市場が続き、価格も賃料もアップするものと思われます。
予想3 オーナーによる賃料アップ
コロナ禍で通常相場よりも100~500ドル低い賃料で貸したオーナーたちが、契約更新を機に賃料アップを求めるケースが予想されます。オンタリオ州ガイドラインに基づけば2022年の賃料アップ率は1.2%ですが、例えば2000ドルの賃料を2050ドルにしてほしい、など上限を超えて賃料アップを求め、訴えてくるオーナーも増えるのではないかと思います。
また新築の場合には、現在のマーケット状況に照らして大幅アップを求める可能性もあります。
オーナーから規定や予想より多い賃料アップを求められたら、まず同じ建物や付近の類似物件の現在の賃料相場を把握したうえで、オーナーと交渉しましょう。また、賃料をアップしたいために「売るから出てって」と言って追い出し、新たなに高価格で募集をしようとするオーナーも出てくると思いますのでご注意ください。
予想4 商工物件の空き増加
政府政策によるレストランや施設における人数制限等が続いた場合、飲食店をはじめとする店舗ビジネスへの影響がさらに出てくると思います。コロナ以来、すでに街のあちこちでLEASEの看板を多く見かけるようになりました。規制は続くが補償が低い場合、ビジネスセールや商工物件のリースやセールの案件もさらに増えることが予想されます。テイクアウト、デリバリーも引き続き高いニーズがあると思われますので、ビジネス形態やロケーションの変更も今後増えていくでしょう。
オミクロン株等コロナウイルス感染の懸念は続きますが、2022年はウィズコロナな不動産市場に向けて復活し成長すると思われます。今年も皆様にとって良物件との出会いが沢山ありますように!
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