2025年の不動産マーケット予想|そこが知りたい!不動産のプロが教える賢いカナダライフ【第82回】
あけましておめでとうございます!皆様にとって、本年も健康で幸多き一年となりますよう祈念申し上げます。今年もどうかよろしくお願い申し上げます。
2023年に引き続き金利アップの影響を受けた昨年は、不動産市況的には冷え込んだ1年だったように思います。不動産マーケット状況を振り返り、今年の予想についてお話したいと思います。
図1、2は住宅賃貸における、2023年第4四半期(2023Q4)から2024年第3四半期(2024Q3)までのGTAにおけるコンドミニアムの各部屋タイプ別の平均賃料および取引件数の実績です。
2024年振り返り
賃料は全体的に下がり借手市場に
2023第4四半期には全ての部屋タイプで平均賃料が前年同期比で上がりましたが、2024年に入ると2024年第1四半期の3BR、第2四半期の2BR及び3BRを除いて賃料は低下しました。特に繁忙期である夏場の第3四半期において、全ての部屋タイプで平均賃料が前年同期比で下がったことが印象的です。2022年夏~2023年夏は住宅ローンの金利アップやコロナ後の人口流入の影響を受けて賃貸ニーズが一気に高まったため、平均賃料が急に上がりました。それに比べて昨年夏は平均賃料が少し下がり、高止まりで落ち着いた状況になったように見受けられます。
一方、取引件数は2023年第1四半期のスタジオタイプを除いて、全ての部屋タイプと期間において上昇傾向になりました。この背景として、募集件数(リスティング数)が各期間において前年同期比46%~51%アップであったことが挙げられます。リスティング数が多くなった理由としては、オーナーが売却したかったけれど売れずに貸出しに変更したことや、コロナ後に完成したコンドミニアムの引き渡しなどが増えたことなどが背景にあります(図1、図2参照)。
賃料アップに関する事例
昨年の賃料アップに関する事例として、オンタリオ州のレントコントロールの適用を受けない物件が多くなったと感じました。オンタリオ州は毎年、オーナーが賃料をアップすることのできる上限を規定していて(レントコントール)、今年も昨年に引きつづき2.5%となっています。しかし2018年11月以降に完成した新しい建物はレントコントロールの適用外のため、築4~6年を迎えた物件もレントコントロール外の物件が増えたと実感しています。昨年に引き続き住宅ローンの返済に苦慮するオーナーが多い中、オーナーから前年比5%~10%、或いはそれ以上の賃料アップを告げられたお客様もいらっしゃいました。その場合、オーナーと交渉し下げてもらったり、話し合いの末双方妥協できる賃料に落ち着くケースもありました。今年も新しいコンドミニアムの増加とともに、各エリアでこうしたケースは増えていくことが予想されます。
売買マーケット振り返り
2022年から2024年の平均不動産価格および成約件数を見てみましょう。この3年間の中で最も高い平均不動産価格は2022年1月~5月の120万ドル台でした。住宅ローンが高金利になった後は120万ドル台にはまだ戻っていませんが、2024年は110万ドル台だった月が10ヶ月ありました。2024年で最も高い平均不動産価格を記録したのは5月の約116・5万でしたが前年同期比では約3%ダウンの結果となりました。スローとはいえ2024年後半から少しずつ回復の兆しが見えているようにも思えます。
取引件数としては、3年間で最も多かったのは金利が上がる前の駆け込み需要を背景に2022年2月、3月が最も高く1万件前後でした。次いで2023年5月は約9000件を記録しています。2024年において最も取引件数が多かったのは4月の7070件ですが、前年同期比では約6%ダウンの結果となりました(図3、図4参照)。
売買マーケットにおいて2024年に最も売買件数が多かった物件種別は戸建て(Detached)で、全体取引件数の45・4%を占めています。最も売れた価格帯は100万ドル~125万ドルの物件で戸建て売買件数の22%を占めています。また2番目に売買件数が多かったのはコンドミニアムで全体取引件数の27・6%、最も売れた価格帯は60万ドルから70万ドルの物件でコンドミニアム売買件数の24%を占めています。これは2023年と同様の結果となりました(図5参照)。
2025年予想1: 借手にとってチョイスのあるマーケットが続く
2024年中の募集物件の急増による平均賃料低下と借手市場は今後も少し続くと見込まれます。政府の移民政策やビザの審査要件が厳しくなったことから、今後州外や海外からの人口が従来通りには増えてくことが見えにくいのが現状です。そのためこれまでのような顕著な不動産不足から、賃貸マーケットにおける需給バランスが均衡を保つように思われます。また、住宅ローンの金利が今後下がれば、賃貸から売買へとニーズが移行することも予想されます。
予想2: お手頃物件の売買人気が続く
金利切り下げの予想はされているものの、その結果がマーケットに反映されるには少々時間がかかることから2025年前半はまだ買手市場が続くかと予想します。ローン返済に苦しむオーナーにとっては売れるものなら売ってしまいたいと自分の希望価格よりも下げて売却するケースもまだしばらく続くかと思います。自己使用・投資用ともに、50万ドル~100万ドルの間の物件として、ダウンタウンのコンドミニアムやトロント郊外の戸建ての物件購入の人気は今後も継続することが予想されます。
予想3: 外国人の住宅購入禁止令と空室税
2023年1月から2年間として始まった外国人の住宅購入禁止令が2024年末で終了となるはずでしたが、2026年末まで2年間延長となりました。また2023年からはじまった空室税の申告にかかる罰金例などの実例も生じており、2024年中はまだ調整期間でしたら、2025年にはさらに厳しくなるのではないかと予想します。
予想4: オフィスと店舗
コロナ後のハイブリッドタイプの勤務スタイルが続いていることから、オフィスの空室率は昨年同様の状況が継続すると予想します。既存のオフィスを活用し住宅に改装する政府案も今後の動向が注目されます。トロント市内における店舗については、2023年、2024年とコロナ後の回復が見られ、人気エリアをめぐる店舗ニーズは高く、市況は今年も活発化することが予想されます。
今年も皆様のお役に立てるよう、住宅物件、商業物件に関する様々な情報をお伝えしていきたいと思います。いつでもお気軽にご相談ください。