第16回 最近の原油価格上昇とカナダ株式の関係|みらいのカナダ株式投資大作戦
今回はカナダ株式のパフォーマンスと原油価格の関係について見ていきます。
日本ではガソリン価格の上昇が話題になっていますが、カナダではいかがでしょうか?
ご存じのように、カナダはオイルサンド(原油成分が吸着した砂)から石油を精製し、アメリカなど海外に輸出している国です。そのため、原油価格の上昇は基本的にカナダ市場にとっては追い風となります。
今回は直近の原油価格の話題と、カナダ株への影響などについて紹介します。一緒にみていきましょう!
最近の燃料価格の上昇
まず、原油価格のニュースについておさらいします。
原油価格は、2020年3月のコロナショックで急落し、その後は一時的に反発したものの低迷する傾向にありました。価格上昇のきっかけになったのは、2020年11月のワクチン開発の話題です。原油価格はそれ以降上昇し続け、記事執筆時点(2021年10月)まで値上がりし続けています。
原油価格の指標として使われやすいアメリカのWTI(West Texas Intermediate)先物は80ドルを超えています。この価格は2014年以来、7年ぶりの水準です。
同様に、カナダの原油価格指標であるCCI(Canadian Crude Index)やWCS(Western Canadian Select)も同じように上昇し続けており、この現象が世界的であることがわかります。
一説によると、現在の原油価格上昇は、世界的な景気回復のほか、特に欧州で天然ガスの高騰に伴い、代替のエネルギー源として原油の利用が増えているためと言われています。
加えて、OPEC(石油輸出国機構)が原油の増産に慎重なほか、アメリカのシェールオイルの動向も原油価格に影響を与えているとのニュースもあります。
原油価格が上がるとなぜカナダ株は値上がりするの?
カナダ株には原油に関与する企業が多数あります。これらの企業の株価が上がることで、市場のパフォーマンスを底上げします。
例えば、Suncor EnergyやCanadian Natural Resourcesなど、カナダの代表的な原油採掘事業者は、売り上げが原油価格とほぼ相関しており、コロナショック直後の2020年6月の四半期決算を底に、売上と純利益を伸ばしてきました。
また、燃料パイプラインを擁するEnbridgeの業績も原油価格と緩い相関があり、やはり2020年6月を底に業績を回復させてきました。
トロント総合指数のセクター比率を見ると、原油関連銘柄から構成されるエネルギーセクターの時価総額比率は全体の13%で2番目の大きさです(2021年9月末現在)。これは無視できない比率です。
ワクチンのニュースが出た2020年11月以降のパフォーマンスを見ると、カナダのエネルギーセクター(iShares S&P/TSX Capped Energy Index ETF)のパフォーマンスはトロント総合指数を大きく超えています。
それまではハイテク銘柄(特にShopify)のパフォーマンスが高く、原油関連銘柄は大きく低迷していましたから、たった1つのニュースで相場の雰囲気ががらりと変わったのが印象的ですね。
今後の見通しはどうなる?
原油価格は世界の需要以外にも米国の金融政策などにも影響を受けています。
2021年10月現在、アメリカは近い将来の利上げを予定しています。一般的に利上げは米ドルが強くなり(米ドル高となり)、原油を含む資源価格の下落を導く可能性があります。
しかし、コロナパンデミックからの経済正常化は、さらなる原油需要をもたらす可能性があります。加えて、天然ガスの価格高騰がいつ終わるのかも気になるところです。
このように、原油価格を決める要因は複数あり、将来を予想するのは難しいです。もしかしたら原油価格は今後しばらく高止まりするのかもしれませんね。
まとめ
今回は最近の原油価格の上昇をテーマにカナダ株との関係を紹介しました。
正直なところ、わたしはここまで原油価格が上がるとは思っていませんでした。2020年は「これからクリーンなエネルギーの時代」などと言われ、電気自動車や自然エネルギー関連銘柄がよく買われていましたよね。ちょうどその頃にオイルサンドに関する記事を書いていたように思います。
当時の状況からすると現在の原油価格はちょっとびっくりですね。相場の先行きを予想するのは難しいなあと思いつつ、今回のお話は終わりにします。