B級グルメ食べ歩きのプロフェッショナル アジアンヌードルを語る|特集「カナダのアジアンヌードルを食べ尽くせ!麺活特集」
編集部が知る限り、TOKOさんほどトロントとその近郊(GTA)のB級グルメを毎日食べ歩いている人はいないのではないだろうか。今回アジアンヌードルを特集するにあたり、やはりB級グルメの帝王にこの街の麺活事情を聞かねばと麺をすすっているTOKOさんに直撃取材を敢行!
ートロント、マーカム、リッチモンドヒル、スカボロー、エトビコ、ミシサガ・・・隣り合った街でもそれぞれ特色あるアジア料理店がありますよね。この大都市のアジア料理の魅力はどういったものでしょうか?
奥も深いですが種類も多いですよね。香辛料も色々あるので、地域が違うだけで味が違いますし、家庭料理のような良さもあります。アジア人ですし馴染みやすいのもあるとは思いますが。同じ広東麺を食べるにもお店によって味が全然違うこともよくあります。
90年代は今の半分の値段や5ドルで食べられるものが多かったです。最近は金額もかなり上がりましたが、今でも中華系はボリュームもありますし、コスパがいいですね。
「多民族都市トロントには世界中の麺が集まり、食べることが大好きな人には最高」
ーその中でも特にアジアの麺類の魅力としてはどのようなものを感じますか?
トロントの一番いいところは多民族都市という事ですので世界中の料理があります。中華系ヌードルと一口に言ったとしても、中華料理は民族や地方によって様々です。日本人が慣れている広東系、辛いことで有名な四川と本当に多岐に渡ります。元々トロントに来た移民は香港広東系ばかりでしたが、最近は北方の人も増えたので中華のバラエティーが広がってきた感じはあります。また、トロントのチャイナタウンで一番古いイーストチャイナタウンは、今ではベトナミーズタウンに変わってきています。ですので、いまはトロントの麺類は中華系とベトナムが圧倒的に多いですね。他は韓国の冷麺やフィリピンのビーフン、バッチョイなどもありますね。
このように、中華というと安い細い麺や太めの上海ヌードル、広東焼きそばを思い浮かべがちですが最近は種類が増えてきました。特に中華系の中で増えてきているのは「過橋米線」という雲南省が発祥の麺です。中国の伝説で、役人になるための試験を受けていた夫に妻は毎晩夜食を作っていたのですが、冬はとても冷え込むため、夫のいる場所へ繋がる橋を渡ると夜食が冷めてしまうということが悩みでした。そこで油を多くしてみたところ、冷えた油が蓋になったおかげで麺が冷めることなく夫に届けられた、という逸話がある麺です。
もう一つ中華系で面白いのはインドチャイナ系のものです。結構辛いのですが、四川系とはまた違ったタイプの辛さです。他には牛肉麺というものがあります。とても濃いしょうゆベースのスープに牛肉の煮込みと野菜が乗っている麺で、これも徐々に増えてきています。
ベトナム系だとやはりフォーが多いですね。トマトスープを使ったもののように工夫を凝らしているものも多く、カナダでもかなり受け入れられているため、その進出には目を見張るものがあります。
マレーシア、インドネシア、シンガポールのような東南アジア系ヌードルですとグルメマレーシアというお店とOne2Snacksというお店がお勧めです。One2Snacksは週に4日しか開いていないお店で、入るとキッチンとカウンターが7、8名しか座れないようなスカボローにあるお店です。そこのカレーラクサが本当に美味しいんです。カレー味が好きな日本人には是非試していただきたいですね。他にはミーゴレンという太麺を甘口のソースで炒めたものや、チャークイティオという平たい麺を炒めたものもあります。
変わり種でいきますと、ストリング・ホッパーというものがあります。南インドやスリランカで広く食されている麺で、茹でるのではなく、蒸すタイプのものです。蒸した麺はマトンカレー等を混ぜて食べます。GTAで食べられるのはスカボローにあるHopper Hutというお店が美味しいですね。カレーが好きな方には足を運んでいただきたいお店です。
ーチャイナタウンの中ですとお勧めのお店はありますか?
チャイナタウンですと、有名ですがKing’s Noodle、Swatow、Rol Sanが美味しいです。King’s Noodleはもう有名ですが、Swatowも捨てがたいです。いっぱい飲んだ後の深夜のパイコー麺は絶品ですよ。Rol San点心のお店ですが、麺類も美味しいです。Landing Noodlesは最近流行りの広東系以外の麺がメインのお店で、試す価値ありですね。
ーダウンタウンとスカボロー、ミシサガ、リッチモンドヒルでは麺類に違いはありますでしょうか?
中華系のくくりで言いますと、違いというよりはリッチモンドヒルやマーカムは新しいエリアですのでお店が広くてきれいな場所が多いです。値段自体は土地や色々なものが安いのであまり変わらないですね。ダウンタウンはぐちゃぐちゃしていますが、息が長いお店が多いので安心はできます。
スカボローはやはり安い東南アジア系のお店が多いですね。たまに、「ここ入ってもいいのかな?」と思ってしまうようなお店もあります(笑)。
ーそうなんですね(笑)。スカボローではどの辺りに行くとお店が見つけやすいのでしょうか?
シェパード×ミッドランドあたりから東は上海料理、チベットチャイニーズ料理もあってとても散策のし甲斐がある場所です。
Taste of Western Chinaというチベット料理を提供しているお店もあります。ここは通な日本人もたまにみかけますね。日本人にも馴染みのある上海系ヌードルでしたらShanghai Dim Sumというお店もいいです。小さいですが、味は美味しくて何回でも行きたくなりますね。辛いので有名な四川系ですとフィンチ×レズリーにあるHot Spicy Spicyという名前の通り激辛なお店があります。
フィリピン系ヌードルのバッチョイであれば是非Coffee Innをお勧めしたいです。ただ、バッチョイは豚や鶏の内臓系が入っているので好みが分かれます。フィリピン系はたくさんあるのですが、普通の料理を出すところと宴会料理を出すところの2種類があります。フィリピン家族が行くような安くて美味しい場所ですとSampaguita Village Family Restaurantというところもいいですよ。
2181 Lawrence Ave E, Scarborough
「美味しいお店を探すには週に1回は新しいところに行くようにしています」
ーGTAのお店を知り尽くしているのでは、と思うくらいたくさんのお店をご存知ですね!そんなTokoさん流のこだわりを教えてください。
実は、食べ物にあまりこだわりがないのです(笑)。結局好き嫌いだと思うのですが、私が食べて美味しければ何でもいいと思います。ある意味職業を間違えたかもしれませんね(笑)。
とにかく食べるのが好きなので何でも1回はトライをしてみるようにしています。そこで気に入ればまた行きますし、そうでなければ最終確認の意味を込めてもう1回行くか、一切行かなくなります。お店を選ぶ際は高くて有名な店ではなくあまり知られていない、ちょっと小汚いようなお店に行くようにしています。勿論、美味しいけど思ったのと違うといったことはたまにありますが、基本的には失敗は無いですね。
麺に関して言いますと、椎名誠さんの著書に「何が好きというよりも細長いものを食べるのが好き」という名台詞がありましたが、私も似たような感じです。その上、麺って例えば自分で作っても結構できちゃいますよね。めんつゆとラー油とネギを麺と混ぜるだけでシンプルなのに美味しいです。
「食べ歩きは味の幅を広げるチャンス」
ートロントにはラーメンカルチャーが完全に浸透しましたよね。今後期待することはありますか?
ラーメンはどうしても手間が掛かってしまうので値段も自ずと上がってしまいますが、逆に値段を下げるためにシンプルに安いものをだせないのかな、と考えてしまうことはあります。パイコー麺のようにシンプルな麺にお肉をドン、と。
私個人の意見ですががっつり煮干し系をやってほしいです、私のために(笑)。ですがアジア系以外の方は煮干しの臭いが苦手な方が多いので難しいかもしれませんね。
トロントのラーメン屋さんはどこも美味しいので今後をとても楽しみにしています。ただ、ラーメン屋さんで食べている時に働いている方と話すことがあるのですが、皆さんあまり食べ歩いていないのがわかります。高いところに行けとは言いませんし、皆さん忙しいとは思うのですが、せっかくトロントにいるので特にこれから飲食をやっていこうと思っている方はこの他民族都市だからこそもっと食べ歩いた方がいいと思います。
日本人は決まった所やイタリアンに行きがちですので、まずは何でも試してみるのがいいのではないでしょうか。メニューを決めるのはオーナーさんですが、食べ歩きをすることで味の幅が広がるので、レストラン業界にいるならプラスになるはずです。
お店を散策することで最近出てきているラーメンブリトーのような面白いものもできてくると思います。Chino Locosというお店では中華系ヌードルをブリトーにくるむという創意工夫をしているように、これから色々なフュージョン料理が増えてくると思います。Union駅の目の前にもペルー料理と日本料理のフュージョンレストランができる予定ですね。
せっかくトロントにいるので色んなものを食べて実験してみたら、面白いのではないかなと思います。