〝いただきます〟の意味 | トロントの居酒屋風雲児【第26回】
今年のトロントの冬はなかなか寒いですが、日本も各地でかなりの雪のようですね。四季があり、季節によって色々な変化を見れるのはトロントのいい所でもありますが、あまり極端に寒い日が続くとお店への客足も遠のくので、ほどほどにして欲しいものです。
オンタリオ州では今年から最低賃金の大幅な値上がりがあり、飲食店を始め色々なビジネスで今後の不安を耳にしますが、これからのトロントはどうなっていくのでしょうか。この物価上昇はどこまで続くのでしょうか?
景気がこのままいい状態であればいいのですが、日本のバブル崩壊のようにはなって欲しくありません。食材費の高騰、人件費や家賃、税金の値上がりなどここ最近色々な変化がありますが、この変化に柔軟に対応し、長くお客様に愛される店作りを精一杯頑張るしかありません。
まだまだこの厳しい寒さは続きそうですが、寒さに負けず、雪にも負けず、この冬を乗り越えたいと思います。

日本人の私からすると新鮮な魚やカニなど獲れたてを食べるのはやはり鮮度がいいので美味しいですし、何より贅沢なご馳走です。私もよく休日にT&Tなど水槽のあるスーパーマーケットで活きたダンジネスクラブやロブスターなどを買って家族や友人と食べます。
その際、調理前には皆んなにまだ生きているよぉなどと見せてから、用意していた鍋に生きたままのロブスターを入れて塩茹でしますが、この調理方法がスイスでは禁止される事になったのをご存知ですか?
ロブスターを含む甲殻類を生きたまま熱湯で茹でる調理法を禁止する規則を設けたとのことで、調理前に電気ショックなどを与えて失神させてから調理しなくてはいけなくなるそうです。
動物愛護活動家や一部の科学者は、ロブスターなど甲殻類は複雑な神経系統を持ち、生きたまま茹でられればかなりの痛みを感じるはずだと主張し、スイス政府は「生きたロブスターを鍋に放り込むのはレストランでは一般的だが一切禁止する」と命じたとの事で驚きです。

しかしこのような活動は実はトロントでも行われています。以前働いていた会社で寿司ブランドがあり、その店で活きたロブスターを捌き寿司を握っていましたが、この調理方法が残酷だと言われ、動物愛護活動者の一団が営業中の店にいきなり入ってきてプラカードを抱えて抗議活動を行った事がありました。
その店以外にも韓国レストランで活きたままのタコを食べる〝サンナッチ〟を提供している店も標的にされていました。私も韓国で食べたことがあり、少し残酷な気もしましたが、そういう文化もあるんだな、面白い体験をしたな程度にしか思いませんでした。ですが、そうは思わない方も多くいるのは事実だと思います。

日本では普通に食される馬肉やクジラも日本以外の方からは冷たく見られる事もあります。現に私の店で馬刺しを提供した際も何名かのお客様から厳しい指摘を受けた経験もあります。
鶏肉、牛肉、豚肉なども同様に屠殺されて私たちの食卓に並ぶので、あまり変わらないのではと思ってしまいますが、カナダのように各国からの移民が集まる国では文化の違い、宗教の違いなどから色々な考えがあるのも事実かと思います。スイスで決定したこの規則も近いうちにカナダでも導入されるかもしれませんね。
私たち日本人が食事の前に言う〝いただきます〟は2つの意味があると言われています。1つは食事に携わってくれた方々への感謝、2つ目は食材への感謝と言われています。果物や野菜にも命があると考え、『◯◯の命を私の命にさせていただきます』とそれぞれの食材に感謝しています。何気なく使うこの〝いただきます〟の意味をしっかりと考えて毎回の食事をしていかなくてはと思います。


小笠原 克 Ogasawara Masaru
日本ではファッションブランドGapでアルバイトからマネージャーまで7年間勤務、新規店の立ち上げや日本売り上げNo.1店舗での管理職を経験し、2005年にワーキングホリデーでバンクーバーに渡加。ファッション業界からの転身となるが、調理師免許保持や両親の飲食関係の仕事の影響などもあり、大人気居酒屋Guuでワークビザを取得し男前店で副店長を務める。その後2009年トロントでのFC立ち上げ総責任者に任命されトロントへ。寒い冬でも毎日行列のできる大繁盛店となり、トロントの日本食パイオニアとなる。2014年にはKinkaFamily Inc.の副社長に就任し、居酒屋の他、ラーメン、寿司、焼き鳥などのブランドを管理、2015年10月末GuuとのFC契約終了とともに独立・起業。現在は世界で皆に愛される飲食店を開業できるようにと奮闘中。





