ミシュラン2つ星・世界のベストレストラン50に選ばれている名店「傳」|トロントの居酒屋風雲児【第34回】
夏休みに日本に家族で一時帰国をしましたが、先日、友人の結婚式の為に4泊5日という短期間でしたが日本にまた行ってきました。今回は一人旅だったので、前回は子供がいて行けなかった競合店や気になる店のリサーチに時間を使うことが出来たので、短いながらも充実した旅になりました。
前回の帰国時にどうしても行きたかった店がありましたが、超人気店の為に予約ができなかったことをTORJAに書いたところ、その記事を読んだ姉が、今回の帰国に合わせて食通の友人経由で、予約を取ってくれました。なんて、いい姉でしょうか!!という事で、今月はこのなかなか予約の取れない人気店のお話をします。
そのお店は東京は神宮前にある日本食「傳」。今年3月に発表された今年の「アジアのベストレストラン50」の2位に選ばれた店で、「世界のベストレストラン50」でも今年は17位と日本の最高位に輝いた今日本で一番注目されているお店です。ミシュランの2つ星も獲得しているという事もあり、夜の予約は無理でしたが、週末のみたまにオープンするランチに今回は初めてお邪魔することができました。
私たちの案内された長いテーブルには計10名のお客様、そして個室に5名ほどいましたが、私たちのテーブルの半分はヨーロッパ、アメリカ、中国からの外国人の方でした。横に座られていた方はその日の夕食はミシュランの星付きの懐石、翌日も超有名な寿司屋、すきやばし次郎に予約を取っているとおっしゃっていました。やはり日本だけでなく世界からも注目されているレストランという事がすぐにわかります。
ランチはおまかせのみで1万5千円から、その日は8品プラスデザートという構成でした。ドリンクのメニューは毎日変わるということで、ビール・日本酒・ワイン・焼酎などから料理に合う数種類のボトルを持ってきてそこから選ぶスタイルとなっていました。
料理の印象は創作的な和食で、あまり和食に慣れていない外国人の方にも受け入れやすい印象でしたが、その中にも日本の伝統が取り入れられ、盛り付けなど随所にシェフの遊び心が満載で思わず「ワォ!」と口にしてしまう料理の数々でした。シェフと何度かお話しするチャンスがありましたが、「ところてん」など最近は日本でもあまり食べなくなった料理を新しい形で表現する事で、感動して欲しいという試行錯誤のチャレンジは素晴らしいものでした。
そして何よりも働いているスタッフの知識、チームワーク、おもてなしの姿勢は格別なものがありました。キッチンには海外からの研修生も多く受け入れているようでしたが、みなさんが笑顔で生き生きと自信を持って働いている姿はとても印象的でした。シェフの長谷川さんも奥さんのおかみさんも私と同い年という事で、勝手に少し親近感を覚えましたが、29歳で独立してからわずか3年目でミシュラン2つ星を獲得し、その後も様々な賞を獲得されている長谷川さんの活躍は凄いの一言です。
豊富な食材、四季、日本独特の文化といった良さを大切にしつつも、遊び心とおもてなしの精神に溢れた「新しい形の日本料理」を体現し、毎月のように世界各国のシェフとのコラボレーションイベントを行い世界に和食を発信している姿はとても刺激になりました。美味しいだけでなく、楽しい食事はお腹だけでなく心も満たされました。またすぐにでもチーム「傳」のみなさんに会いに行きたいなという気持ちです。
小笠原 克 Ogasawara Masaru
日本ではファッションブランドGapでアルバイトからマネージャーまで7年間勤務、新規店の立ち上げや日本売り上げNo.1店舗での管理職を経験し、2005年にワーキングホリデーでバンクーバーに渡加。ファッション業界からの転身となるが、調理師免許保持や両親の飲食関係の仕事の影響などもあり、大人気居酒屋Guuでワークビザを取得し男前店で副店長を務める。その後2009年トロントでのFC立ち上げ総責任者に任命されトロントへ。寒い冬でも毎日行列のできる大繁盛店となり、トロントの日本食パイオニアとなる。2014年にはKinkaFamily Inc.の副社長に就任し、居酒屋の他、ラーメン、寿司、焼き鳥などのブランドを管理、2015年10月末GuuとのFC契約終了とともに独立・起業。現在は世界で皆に愛される飲食店を開業できるようにと奮闘中。