FIFA World Cup Qatar 2022|オリンピック選手もサポートするカナダ公認マッサージ・セラピストが教える身体と健康【第100回】
11月20日から開催されるFIFA World Cup Quatar 2022に出場権を得たTeam Canadaの選手たちをサポートする機会に恵まれました。カナダのトップ選手たちから学んだ気づきについてお話しします。
まず始めに私が興味を持ったのは、これらのトップ選手と、そうでない選手とは、どこが違うのか?という疑問です。マッサージセラピストの目線から考えてみました。
トップ選手から感じること
①カラダ … 身長は180〜190㎝の見事な体格。ディフェンダーは体格良く、走るポジションの選手は体が細くバランスが良い、などポジションに合った体に作り上げられている。
②余裕 … TVや雑誌のインタビューや試合で人前での振る舞いに慣れているせいか身のこなしに余裕がある。人の話をよく聞き話すスピードがゆっくり。1億円クラスの大きなコントラクトをもらっているせいかも?
③おしゃれ … シンプルな着こなしだが、オシャレな感じ。少年サッカー選手を始め多くのサッカーファンの憧れの的であり、いつも注目されている認識をしっかり持っている。高価なものを身につけるのではなく、自分に合った着こなしを身につけている。
華やかで優雅な感じが羨ましい反面、トッププレーヤーならではの悩みも聞かせてもらいました。
④傷 … 長年トッププレーヤーとして戦ってきた印。体に刻まれた多くの古傷の跡。傷は完治しても違和感は引きずっている。
⑤プレッシャー … 年棒数億円という大きなコントラクトを持つ選手もいて羨ましい気もするが、プロとして年棒に見合う活躍を常に求められる。今年のようにWorld Cup Quatar 2022のカナダ代表にも選ばれている選手は、ワールドカップ前に怪我をしたくないなど悩みは尽きない。
これらは表面的に見たトップ選手の印象ですが、マッサージセラピストとしてコンディションを詳しく観察してみると???な点が一杯ありました。
②膝の周りに慢性疲労が溜まっている。
③腰の動きが悪い。
といったTORJAの本コラムでも再三お話ししている「基本中の基本」と私が考えているポイントのコンディショニングが全く出来ていなかったりします。
このコンディションで世界トップ選手として活躍出来ているのが不思議ですし、プロのサッカーチームに長年所属してきて多くの優秀なトレーナーに管理されてきた体なのに私が簡単に見つけられるようなポイントが存在しているのも大きな謎です。
では、これらのトップ選手たちは不運にも今まであまり優秀でないトレーナーに長年コンディションを見てもらっていたのか?常識で考えてプロチームのトレーナーのレベルが低いとは考えられません(どのチームにも知識と経験の豊富なトレーナーが存在しています)。
それでは、どこに問題点があるのか?
わりと知られていませんが選手の体の管理はドクター、セラピスト、トレーナーなど何人かのチームで行われます。それぞれに専門分野がありコンディショニングにあたるコンセプトやスタンダードが微妙に違うために、ドクターの診断ではOKですが、マッサージセラピストのスタンダードからするとNGということが生じるのです。
これは誰が正しい正しくないという問題ではないので表面化しにくいのですが、①検査する人、②痛みや怪我を回復する人、③運動機能を回復する人、④将来的な怪我の予防をする人などと、役割の違いからくる判断基準の差から発生しています。
結果的にサポートチームとして選手へのアプローチを総合的にまとめる人が必要になり、多くの場合、検査、診断が終わり回復段階で選手に接する事になる私が、今までの治療方針、治療経過を理解した上で将来的な問題の再発予防まで含めてケアするケースが多くなります。
将来的な再発防止策として私が確実にサポート出来るポイントは、選手の持つフィジカルパフォーマンスを100%引き出すコンディショニングなので、他の人があまり気にしない体の細かい不具合まで徹底的に改善する姿勢を貫いています。
その結果として、走るトップスピードが時速3㎞速くなったり、気がついてみたらシーズン通して怪我をしなかったりとトップ選手自身が自分の変化に驚くようなことが起こります。今まで必死に練習して何年も出来なかった事が細かいコンディショニングをする事によって簡単に改善されて選手たちが驚くのです。
ここで皆さんにお知らせしたいのは、世界レベルで活躍するトップサッカー選手でも、完璧なコンディションでプレーしている選手は少ないであろうという事実です。
逆を返せば、今回お話ししたようなことを理解して現在トップ選手と比べて自分が劣っている点を効率よく改善していけば、将来的に怪我で長期間休んだり、自分の能力を100%発揮せずに練習するなどのロスが省けるので、これから世界レベルを目指しているサッカー選手たちが目標を達成する確率が高くなるのは間違いないと思います。
結果的に大きな怪我を防ぐことにも繋がり、選手に怪我はつきものという風潮を変えていくきっかけになれば良いと考えています。このような考え方は、サッカーに限らずあらゆるスポーツ、バレエをはじめとしたダンスなどにも共通した成功への近道でしょう。