アスリートのコンディショニング|オリンピック選手もサポートするカナダ公認マッサージ・セラピストが教える身体と健康【第108回】
コンディショニングは、アスリートにとって最高のパフォーマンスを発揮するために必要な体力、技術、精神的な面を向上させるためのトレーニングです。基本的なフィットネスやスタミナ、筋力トレーニング、柔軟性、バランスなどの要素が含まれます。適切なコンディショニングは、怪我のリスクを減らし、長期的なパフォーマンスをサポートするために重要です。それぞれのスポーツに合わせた適切なコンディショニングプログラムを設計し、継続的に取り組むことが重要です。サッカー選手の場合を例にとってみてみましょう。
基本的なフィットネス
サッカー選手にとって、基本的なフィットネスは非常に重要です。適切なエクササイズとストレッチのコンビネーションで瞬発力や持久力を向上させることで、選手の持つフィジカルパフォーマンスを、100%引き出します。
【アドバイス】ここで一番の問題点は、エクササイズに比べて選手のみならず指導者も興味が低いストレッチを、どうしたら真剣に取り組んでもらえるかです。真剣に取り組んでもらえない理由は、今までストレッチの効果を実感した事が無いのが大きいと思います。
なぜ実感しないかというと、そもそもストレッチの目的を教えられることもないので何をもって効いているか理解しにくいのです。体の動きが悪い原因が、どの筋肉の緊張及び関節の硬さからくるか説明して、目的の筋肉が伸びてる感じやストレッチが効いたときの体の変化を見せて自己確認できるようにするのが大切です。
足の速さをUPさせるコンディショニング
サッカーでは、足の速さが勝利を決めることがあります。加速力や素早い足の運び、リアクションタイムを向上させることが必要です。
【アドバイス】サッカーの場合、走った後のケアをせずに練習を続けて下半身に疲れをためている選手が多いです。足の速さをUPさせるのに下半身の柔軟性が不可欠なので、ここが出来ていないと、いくら練習しても良い結果に繋がりません。
なぜ下半身の柔軟性が大切かと言うと、足首・膝・ヒップの関節に疲れが溜まって動きが悪いと、関節の動きが小さくなってしまうので、その分パワーを生み出すことが出来なくなり関節が動かなくなっただけ走るのが遅くなってしまうからです。
逆に各関節を緩めてあげると選手の持っている100%のパワーを発揮できるので確実に走るのが速くなるのです。関節の可動域改善は、筋力や心肺能力を上げるのに比べて簡単かつ即効性のある方法なので、こちらを優先させる方が賢いです。選手の持つ100%のパフォーマンスを見極めてこそ、改善するポイントやレベルが明確になり効率の良いコンディショニングが行えます。
ボールコントロールを良くするコンディショニング
サッカーでは、ボールを自由自在に操ることが必要です。ボールコントロールを向上させることで、ドリブルやパス、シュートなどのプレーが正確になります。また、ボールコントロールが良くなると、ボールを受ける際もボールを見る事なく出来るので素早いプレーを生む出します。
【アドバイス】体にボールを馴染ませる一番良い方法は、柔軟性だと思います。ボールコントロールの基本は、まず飛んできたボールを受ける時に、どれだけボールの勢いを吸収して受けれるかだというので、体のクッションである関節を整えることが大切です。
スタミナ
サッカーでは、長時間のプレーに耐えることが必要です。適切な有酸素運動を行い、スタミナを向上させましょう。
【アドバイス】有酸素運動をする前に、肋骨の間に手の指を当ててマッサージするなどして胸郭を緩めると呼吸が深くなるので効果的ににスタミナ向上が見込めます。
パワー
サッカーでは、パワーが必要なプレーが多数あります。ジャンプ力やシュート力、身体を強く当てるデュフェンス力など、パワーを向上させることで、プレーの幅が広がります。
【アドバイス】相手選手とのコンタクトではパワーの向上を要求されますが、日本人選手の様に比較的小柄な選手においては、逆の発想で肩関節など上半身を中心とした柔軟性の向上により暖簾に腕押しのような状態で相手をかわすアイディアのあります。
柔軟性が高いと、筋肉がより長く伸びやすくなり、関節の可動域が広がります。これによって、運動に必要な幅広い動きやテクニックをより効果的に行うことができます。また、筋肉や関節の柔軟性が高くなることで、運動中の怪我のリスクを低減することができます。
柔軟性の向上は、直接パフォーマンスの向上に繋がっているように見えにくく、地味で時間のかかる作業なので、特に若年層のアスリートには重要視されない傾向が強いです。結果としてアスリート本人も体の疲れを認識出来ずに無駄な練習や怪我を繰り返す事になります。技術的な問題と体が動かない問題を区別することにより目的がハッキリとした効率的な練習を行う事ができるようになります。