なかなか改善しない厄介な症状|オリンピック選手もサポートするカナダ公認マッサージ・セラピストが教える身体と健康【第109回】
先日、トロント総領事公邸にりくりゅうペアと一緒にお招き頂き、佐々山総領事ご夫妻、松井領事、鈴木副領事、山本国際交流基金トロント文化センター山本所長とりくりゅうペア世界チャンピオンへの軌跡や日本の若いアスリートの将来などについてお話しさせて頂きました。りくりゅうペアからは、2人の現在の立ち位置を十分に理解した、今シーズンの意気込みも聞くことができて大変有意義な時間となりました。
さて、今月のテーマは、なかなか改善しない厄介な症状です。
なかなか治らない肩こり
肩こりに悩まされている患者さんが非常に多くいます。その多くが長年苦しんでいて、色々な事を試したが根本解決されずに、半分諦めている様な状況にあります。なぜ肩こりが治りにくいのか考えてみましょう。
肩こりは、肩や首の周辺の筋肉の緊張や疲労によって引き起こされる症状です。長時間のデスクワークやパソコン作業、悪い姿勢、ストレス、運動不足などが原因となり、肩の筋肉が硬くなります。一般的に肩こりの緩和や予防には、次のような方法があるいうことになっています。
❶正しい姿勢を保つ:デスクワークや作業中は背筋を伸ばし、肩をリラックスさせた姿勢を保つことが重要です。
❷ストレスの管理:ストレスは肩こりを悪化させる要因の一つです。リラクゼーション法やストレス管理の方法を取り入れて、心身のリラックスを促すことが重要です。
❸マッサージや温湿布:肩の筋肉をほぐすためにマッサージを受けるか、温湿布を貼ることで血流を促進させることができます。
慢性肩こりがこれらだけでは改善しない理由
❶筋肉をほぐすだけでは不十分?
筋肉を筋肉繊維、筋膜、腱から構成されます。一般に言われる対策は筋肉繊維の緊張緩和にフォーカスした情報が多いため筋膜や腱に溜まった緊張は取れにくいです。実際には筋肉繊維より腱などに慢性疲労が溜まっているケースが多いのです。
❷ストレッチやヨガなど自分で体を動かして体の緊張を緩めるには限界がある。
筋肉繊維と腱を比較すると筋肉繊維の方が柔らかいので一緒に引っ張った場合、筋肉繊維から伸び始めて腱を伸ばすのは非常に難しいです。腱は硬いゴムの部分なので柔らかい筋肉繊維は伸びても硬い腱の部分は伸びないことが発生します。
これが腱の緊張が取れない理由であり、腱は関節近くに存在するので関節の動きを妨げて関節周りの炎症を起こす原因となり問題を大きくします。ストレッチなどで筋肉を緩め、直接腱を緩める作業を追加すると効率良く慢性的な筋肉のコリを緩めることができます。
直接腱を緩める方法
腱の場所を正確に把握して1分ほど強く押しすぎないように圧を1分程度持続して加える(腱の場所は、XX筋の腱などのワードで検索すれば簡単に見つかります)。
巻き肩の問題
巻き肩の人に姿勢を治しなさいというと、普通背中を伸ばして肩を後ろに引く動きをします。
巻き肩というのは肩が前に引っ張られている状態なので、本当は後ろに引っ張るのでは無く、前の緊張を緩めなくてはいけません。
この様に改善するべき点と真逆の対策をとっても巻き肩は、なかなか改善されません。胸の筋肉などを緩めるなど肩を前に引っ張るグループを改善することにより事により巻き肩を根本改善が見込まれます。
この2つの例のように、長年信じてきた情報や、SNS上などで発信されている情報には正確で無いものや、あなたの求めている情報とピッタリと一致しない物がたくさんあるので、再生回数が多いなどを頼りに情報収集しているとゴールに辿り着くことは出来ませんし、最悪の場合体を改善するタイミングが遅れて大きな問題になってしまうことも考えられます。
この様に長い間改善しない症状には理由あり、その多くは改善すべきポイントが外れているか、刺激の仕方などアプローチが間違っています。解決策としては、自分で問題点を観察してみるのも良いと思います。
痛みの出る動きを観察するだけでも大切な情報が得られる!
❶関節を動かして、どの角度で痛いのか観察できれば、痛みの原因となる筋肉が限定されます。
❷動作のどのタイミングで痛いか観察できれば、動き始めに痛ければ筋肉の問題、動作の最後や物を持ち上げた時痛ければ腱の問題と見分けがつきます。
❸1日のうちどのタイミングで痛いか観察できれば、
一日中痛い・・・慢性炎症?
朝痛い・・・就寝時に筋肉が萎縮して痛い?
夜痛い・・・over use により炎症を引き起こす?
などの判断基準となります。
この様な情報をベースに日々のコンディショニングを行えば、長年同じ問題を抱えている事は少なくなると思います。