マッサージセラピストにとってのホームラン狙いor アベレージ狙いとは?|オリンピック選手もサポートするカナダ公認マッサージ・セラピストが教える身体と健康【第111回】
WBCからずっと好調を維持して世界を驚かすプレーを連発している大谷選手が夏に入ってからスィング軌道が変わったのではないか?という話があります。シーズン初めは流行りのアッパースウィングでホームランも増産していましたが、最近レベルアッパースウィング(平行スィングからアッパースウィング軌道に移る)くらいになっている感じがあるので長打狙いより確実性を意識する様になったのではないかというのです。過去にシーズン46ホームランを経験して自分の打球飛距離には自信がある大谷選手なので確実性を上げればホームランと打率の両方をアップさせる可能性があるのでは?というのです。
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痛みが軽減しても根本的問題解決に繋がらない。
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時間をかけてコンディション内容を説明して体の状態を理解してもらいながらのアプローチは、時間がかかりますが痛みをマスクするだけでなく根本的問題解決が見込まれます。
私が、どんな問題も解決します的なホームラン狙いをアピールをするセラピストが多いのですが、私の場合はアベレージ狙いを徹底する様に心がけています。アベレージ狙いで一番大切なのは患者さんのコンディションを深く理解することです。
痛みを止めるのだけが目的でなく、痛みの起こったメカニズムを探って、何が原因で痛みが起こったのか?自分で予防する方法は?などと話を進めて患者さんの表現する訴えの理解を深めます。
30年以上トロントの患者さんをサポートした多くの経験から、似た様なケースとの擦り合わせが出来るのもアベレージを上げるのに非常に役立ちます。コンディションのアセスメントの次に取り組むのは、出来るだけ簡単な方法で痛みをリリースすることです。
理由は、私を訪れる患者の多くは慢性化した症状に悩まされているので、基本的に1回のトリートメントで全て解決するのは難しいですし、本人でもできる様なテクニックだけを用いてコンディションを改善する事により、「自分でも簡単にできるんだ!」「自分でやってみよう!」に繋げたいからです。
コストを抑える為にも、自分で出来るところは自分でやるのが良いと考えるので、私は出来るだけ難しいテクニックは一切使わずに、ここがこうだからこの問題が発生していると説明して、ここをこうすれば問題解決すると、自分で出来る対策を説明して自分で練習してもらいます。1回で理解できなくても、2~3回練習すれば誰でも出来る方法です。
ボディーメカニクスに基づいて当たり前の事を当たり前にやるだけなので、成功する確率が高くなります。少なからずも必ず効果が上がる方法を練習してもらうので時間がかかっても必ずゴールに近づきます。
下半身の問題を例に具体的に説明します。
下半身のアセスメント
① 膝のお皿を触って上下左右に動かしてスムーズに各方向に動くか?確認する。
下半身に問題が起こる主な原因は、足首、膝、ヒップの主要関節の緊張からスタートするケースが多い。膝のお皿の動きが悪いのは膝の動きが悪いだけで無く下半身に疲れが溜まっている事を意味します。膝の動きの悪さが他の関節に負担をかけてしまうからです。動きが悪いと関節に摩擦が生じて炎症が起こり痛みや様々な問題を引き起こします。
膝のオススメセルフケア
②膝のお皿が硬い場合はお皿の上下の筋状部分の緊張を5分程度のセルフマッサージで緩めるとお皿の動きが良くなります。再度お皿を触って効果を確認しましょう!
定期的に膝のお皿の動きをチェックして動きを良くすれば下半身に疲れを溜めない効果が見込まれます。
このように、実際に体を触って状態を観察して行うアプローチは成功確率が高くなります。
オリンピックで金メダルを獲ったアスリート、サッカーワールドカップでプレーした選手達やバレエのでプリンシパルダンサー達、肩こり腰痛の一般の患者さんも皆同じ対応をしています。
アスリートの場合、事前に試合期間中に起こる事も想定して対応策を身につけてもらうスタイルを実践していますので、たとえ世界チャンピオンでも基本的に要請があっても試合等に帯同することはしません。結果的に選手達が人任せで無くコンディショニングも含め自分達で試合に挑む姿勢が身につくようになったと感じています。
昨年の冬季オリンピックにおける、フィギュアスケートりくりゅうペアも、オリンピック数ヶ月前から2人でオリンピック期間中コンディションを維持できる様に色々な練習をしてもらいました。結果は皆さんもご承知の通り、見事な活躍をして今年春の世界選手権優勝へ繋がりました。