5月のトロントの本屋さん 今月のテーマ「疲れた時に読みたい本」

今月のトロントの本屋さんもバンクーバーから岩崎ゆかりがお送り致します。
早いもので2021年も5月を迎えました。日本ではゴールデンウイーク明けに春からの新生活の疲れが出て心身に不調がでる5月病が心配されます。カナダにいる我々としてはコロナ対策に振り回されて「もう疲れた、やってらんないよ」と思わず叫びたくなります。コロナ禍のもと、二度目の春を迎えるも、いつも影のように離れてくれません…。
1日が終わり疲れた時は活字を追うのも実はしんどい、でも読みたい!しかも、人物相関図や時代背景を深く考えなくてもよく、サラッと読めて、疲れを癒してくれるのがこちら、みなつき作・二ツ家あす画『同居人はひざ、時々、頭のうえ。』(既刊7巻、ほるぷ出版)。人混みが苦手で担当編集者が次々と辞めていく偏屈ミステリー作家・朏素春の元にやってきたのは、刺身に釣られた猫だった!いつもなら無視のはずなのに、ネタに悩んでいる素春は家へと招き入れます…。人・素春視点と猫・陽視点の2つから綴られるエピソードは、人から見ると不可解に見える猫の行動を陽視点で謎解きをしてくれています。もちろん、観察期間から仲良くなるまで2つの視点で描かれ、2度幸せを感じられる、癒し満載の漫画です。
長編小説だと先が気になって、「あと数ページだけ」と思いながらついつい読み進めて夜更かしをしがちです。寝る前に「少しだけ」を叶えてくれるのが短編集の良い所です。発想のぶっ飛びと共に疲れも吹き飛ばしてくれるのがコチラ。森見登美彦著『新釈 走れメロス 他四篇』(KADOKAWA)。近代日本文学の名作5篇を、時は現代・所は京都で正に新たな解釈で綴る怪短編です。こちらだけでも楽しめますが前作『夜は短し歩けよ乙女』に登場する脇役の方たちが短編主人公になっており、スピンオフ感あり原作を読みたい欲も搔き立てる1作で3度美味しくなっております。
忙しいから疲れているのに、瞑想の時間なんて作れないし怪しくないの?と特に余裕の無いときは新しいことへの挑戦を躊躇いがち。荻野淳也著『心のざわざわ・イライラを消すがんばりすぎない休み方 すき間時間で始めるマインドフルネス』(文響社)でハードルを下げてマインドフルネス始めてみましょう!日常の一コマで使えるように具体的な例と心を静めるちょっとしたアイデアも紹介されています。
さて最後に紹介するのが、テーマと共に頂戴した「闇を感じる本」です。遠野遥著『破局』(河出書房新社)は第163回芥川賞受賞作でもあります。ラグビー、筋トレ、セックスに勉強、異様なまでのルーティンをこなす主人公は、あっち側ではなくこっち側にいる人間だと思っていた。そう彼女と出会うまでは。真綿を絞めるように『破局』へと向かう様は自分が世界の中心にいてすべてを自己完結できると感じる現代の闇を映しているように思います。
それでは次号でお会いしましょう。
トロントにある日本の本屋さん Blue Tree Books
Blue Tree Books(J-town内)では、日本の本や雑誌を販売しております。話題の本はもちろんのこと、英語・その他言語のテキスト等も取り扱っています。店頭にない商品も、もちろん日本から取り寄せいたします。是非気軽にお越しください。3160 Steeles Ave E, Toronto(J-Town内)
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