園長先生!気付けば息子も大きくなりました・・・第12回 「あいさつ」
20年前に誕生した「池端ナーサリー・スクール」。その園長であり創設者の池端友佳理さんのそばにはいつも日系三世のご主人・マークさんと現在21歳で大学在住中の健人くんがいた。母親であり、教育者であり、また国際結婚移民をした友佳理さんとその家族の笑いあり、涙ありの人生をシリーズで振り返ります。
文■池端友佳理 (池端ナーサリー・スクール園長)

私が自分自身日々の生活の中でも、子育てしてきた中でも、またナーサリーを運営して行く上でも、特に重要視しているのが挨拶、そして”感謝の気持ちを伝える”事である。生きて行く上で不可欠なコミュニケーションの一つであり、人間関係の基本である。
挨拶の出来る子になるように、と親は当然思い、子供が小さな頃から何とかしようとする。例えば、人から何かもらったり、してもらったりしたら「ありがとう」と言うのが礼儀であり、当たり前の行為。これが子供に対しての場合、「ほら、”ありがとう”は?」となる訳である。子供がもじもじしていて言えないと親が代わりに「すみません」と謝る結果となる事もしばしば。これには「こんにちは」「さようなら」などの挨拶も同様である。親にすると言って欲しい時に子供はもじもじして挨拶が出来ない事が多い。
実は、子供と言うのはなかなかシャイなものである。大抵の子供は挨拶を言う事を期待されていると感じるその瞬間、その子が注目を浴びている訳であり、緊張の瞬間と感じて声に出来ないことなどはよくある事。
心配しなくても大丈夫。子供は親の姿をよく見ているものである。お母さん、お父さんがいつも気持ち良く挨拶していれば子供もいずれそうなる事、間違いない。朝起きて、まず、一日の始まりである挨拶を心がけてみよう!!子供が朝起きて来て「おはよう!」と家族の中で挨拶が交わされる環境があれば、必ず「おはよう」が言える子供になる。朝、子供が起きても親が忙しさのあまりいい加減な「おはよう」で始まり、またいきなり「早く、早く!!」と言った雰囲気の中一日が始まれば、子供だって挨拶どころではない。朝はどんなに忙しくても、眠くてしんどくても、笑顔で明るく「おはよう」が言える家庭環境であって欲しい。子供にとってはそれが最高の挨拶の学び場となる。健人が中学や高校の頃、朝寝坊気味で私もイライラして起こしがちであったが、それでも意識して不機嫌そうに起きて来る健人に対し、笑顔で「おはよう」を言うと健人も引きつった嫌そうな顔で「おはよう」と必ず言っていた。前の日にケンカして寝てしまっても、「おはよう」を笑顔で言うとお互いの気持ちも和むものだ。これは親子げんかでも、夫婦げんかでも効果はあると思う(笑)。
健人が初めてナーサリーで高校生ボランティアを毎日する事になった夏の初日。私は園長の前にやはり母親であった。どうも心配で、健人に向かって「子供達や保護者の皆さんに会ったら”おはよう”って元気に言いなさいよ」とおせっかいにも言ったところ、とてつもなく呆れた顔をされた。「お母さん、何当たり前の事を今更言ってるの!?大体、お母さんみたいなデカイ声で挨拶されたら、みんな、イヤでも挨拶し返さなきゃいけないんだよ。知ってる?お母さんの声、デ・カ・過ぎ!!」と、逆に説教をされてしまった。なんだか、良い様な、悪い様な…。挨拶は家族や先生、そして周りがしっかり、元気に楽しくしていれば子供達も自然にできる様になる…と、そう言う事、かな(苦笑)。
お礼も同じ。注目されると恥ずかしいけれど、本当は子供達程お礼が上手な人はいない。だって、子供達って、みんな「ありがとう」を言ってもらうのがとても好き。言われるのが好きだから、言うのも上手。子供達が何かしたらみんな「ありがとう」って言う。お礼を言われると子供達はとっても嬉しくて、”誰かに何かをしてあげるのって、すっごく良い気持ち!!嬉しい気分になっちゃう!!”と思うもの。だから、子供はすすんで何かをしたいと思い、実践する。その時、周りにいる人達がちゃんと感謝の気持ちをその子に伝えれば、その子は益々お礼を言ってもらおうと頑張るし、同時に、誰かがその子に何かをすればお礼の言える子になる。日本人は感謝の気持ちを伝えるのが苦手とよく言われる。特に昔ながらの人は「いつも感謝はしているけれど、今更改めて感謝の言葉を言うなんて、照れくさい(恥ずかしい)」と言う人が少なくない。しかし、何かをした時、その瞬間に「ありがとう」と一言言われるだけで、気分が変わる。大変なことをしていても、報われる思いがするものだ。
子供達も小さな頃から感謝する事もされる事も気持ちの良いものと認知すれば、それが心に刻み込まれて行くものだろう。
実際、私が病院で看護師として働いていたときは「ありがとう」の重みを心から感じていたし、その言葉を生き甲斐として頑張っても来た。私達の普段の生活からは何とも思わない基本的な事でお礼を言われる事も多く、目からウロコのことも山ほどあった。感謝の気持ちを言葉で伝える事の大切さを短い期間にたくさん学んだ気がする。その気持ちを、ナーサリーでは、身近なところから、時間をかけてしっかり子供達に教えてあげたいのだ。
感謝の気持ちは押しつけであってはならない。心から有り難いと思い、それを他の人にもしてあげたいと思うことが出来れば本物なのかも知れない。
ナーサリーの年長組さんでは給食の後、お当番さん達が床の雑巾がけをしてくれる。『いっぱい汚れているね、でも、お掃除をしてくれる人がいて良かったね。お掃除の人が困らない様に、次はみんな汚さない様に食べようね。』そんな感謝の気持ちから、次は自分の行動も見直そうと心がける様になる。
その連鎖の気持ちが大切であり、子供達にも分かち合ってもらいたい部分である。
ありがとう、の気持ちは押しつけではなく、自然に養い、また、他人への思いやりの心として伝えて行って欲しい。そのためにはまず、周りの大人から…私もお父さん・お母さんも、先生達も、感謝の気持ちを忘れず、子供達に接して行きましょう!!
池端友佳理 – 京都出身。大阪の大学看護科を経て同大学病院の産婦人科で看護師として経験後、1990年に渡加。伴侶は日系カナダ人三世。一人息子(大学生)の母。1993年に自宅で池端ナーサリー託児所を開設。1999年日系文化会館内に池端ナーサリースクールを設立。園長を勤める傍ら、カナダ唯一の産後乳房マッサージ師として活躍中。
















