園長先生!気付けば息子も大きくなりました・・・第23回 「子供達の個性と模倣」
20年前に誕生した「池端ナーサリー・スクール」。その園長であり創設者の池端友佳理さんのそばにはいつも日系三世のご主人・マークさんと現在21歳で大学在住中の健人くんがいた。母親であり、教育者であり、また国際結婚移民をした友佳理さんとその家族の笑いあり、涙ありの人生をシリーズで振り返ります。
文■池端友佳理 (池端ナーサリー・スクール園長)
只今日本に帰国中。6年ぶりの帰国なので、色々なカルチャーショックを受けながら良い所や悪い所を再発見。それらを小出しにまた紙面上で書き出して行きたいと思うが、今回は私のかわいい姪っ子の幼稚園参観日に行く事が出来たのでその事について少し触れてみたい。
まず、4歳児クラス31名の園児達を1人の先生が面倒見ていた事に衝撃を受けたが、子供達はとても落ち着いており、団体生活の規律の良さに感心した。その姪の幼稚園で今回は製作(クラフト)の場面を見学する事が出来たのだが、実は先日ひょんな事から、私の保育園時代の製作作品を見つけて、驚いていた所だったのだ。いわゆる製作帳の様な既に出来上がったものがあり、年齢に合わせた能力を使って、切ったり貼ったり、塗ったりできるようになっている優れものである。平面ではあるが、 先生が手を加えなくとも、 日替わりで季節に合わせた作品が出来上がる。さすがは日本、かゆい所にまで手が行き届く配慮・・・と言いたい所だが、このやり方はカナダの保育士資格を得るための学校では教えられない内容である。
これで育って来ているのは私たちの時代だけかと思っていたが、今回の参観日でも同じ様な製作帳が使われていた。今回はロケットに乗って宇宙へ出発!と言うタイトルであったが園児達は作品例を見ながら忠実に模倣していた。ロケットのてっぺんの部分や炎、星や惑星からバックグランドの色までしっかりまねして切り貼り塗りしていた。ロケットの左翼と右翼の微妙な差まで指摘されながらもしっかりよく見て配置すべき所にしていた。
私の保育園時代の製作帳も全く同じ様な内容であった。例えばあじさいの製作。紫色の折り紙でお手本通にいくつか花びらを作り貼っている。同じクラスの子供達はみな同じ紫色(色紙を貼る部分の周りは紫色のあじさいの絵が描かれている)の色紙で花びらをおり、指定の場所(点線で貼るところが指定されている)に同じ向きで貼ったのだろうか。ピンクや黄色の色紙を使う選択はなかったのだろうか?
また別の製作はフルーツバスケットで、バスケットの中に奇麗に色々な果物の絵が貼られている。横にはやはり例が示されておりその通りに果物を貼れ、と言う事だ。好きな場所に置いては行けなかったのだろうか?極端な話、果物はバスケットの外に置いたって良い訳ではないか。非常に不思議な気分であった。それを当たり前のように聞き入れ、指示に従っていたのか。自分のやりたい事を通す私の事だからきっとだだをこねて先生を困らせていたに違いない。
さて、ここ数回に渡って、個性についてしつこくお話して来たがまさにこれもこの事なのだ。日本とカナダの保育で大きく違っているものの一つに製作もの・・・つまりクラフト関係もあるのではないかと思う。日本のクラフトは見た目も素晴らしく、非常に凝っている。ただ、作り方を指示し、こうしてああして…と決められたものを作る事が多く、また次は何をしたら良いの?」と日本人は聞く子が多い様な気がする。逆にカナダでは先生の指示を全く聞かずに勝手に好きなように進めてしまう子が多いのも感じる。カナダは基本、子供達の好きなようにさせる傾向にある。どこにどんな色で何をしようと子供の想像力に任せるのだ。自分で考え、自分の思い描く作品を自由に表現させる。ただ、私は模倣等を否定している訳ではないし、先生の指示に従うのも非常に大切な事であると思う。日本でも模倣だけの保育をしている訳ではないだろう。
私どものナーサリーでも出来るだけ双方の良い点を取り入れようと、製作にも活かせるようにしている。先生達も子供達の個性を大切にできるように、ユニークで見た目も楽しい作品が出来上がるように工夫してくれている。 押し付ける事なく、子供の感性が豊かに育つように。家庭内でも同じ事。固定観念を脱ぎ捨て、子供が感ずるままに表現できる環境を作って行くべきなのであろう。
池端友佳理 ー 京都出身。大阪の大学看護科を経て同大学病院の産婦人科で看護師として経験後、1990年に渡加。伴侶は日系カナダ人三世。一人息子(大学生)の母。1993年に自宅で池端ナーサリー託児所を開設。1999年日系文化会館内に池端ナーサリースクールを設立。園長を勤める傍ら、カナダ唯一の産後乳房マッサージ師として活躍中。