園長先生!気付けば息子も大きくなりました・・・第19回 「親バカのススメ」
20年前に誕生した「池端ナーサリー・スクール」。その園長であり創設者の池端友佳理さんのそばにはいつも日系三世のご主人・マークさんと現在21歳で大学在住中の健人くんがいた。母親であり、教育者であり、また国際結婚移民をした友佳理さんとその家族の笑いあり、涙ありの人生をシリーズで振り返ります。
文■池端友佳理 (池端ナーサリー・スクール園長)
先月、友人から新春の挨拶に年賀状が届いた。私が結婚した当時(いや、もう20年以上も前の事なのだが)、私たちの結婚式の写真を見てその友人がマークに「友佳理さん、本当に綺麗な花嫁さんね〜。」と言ってくれたのに対し、マークは「YES!本当に綺麗過ぎて見とれていて、誓いの言葉が出て来なかったよ」と答えた。「あら、良いわね〜!」と、友人は笑っていたが、私は顔から火が出そうに恥ずかしくて、慌てて「日本では褒められても”そんな事はないよ、化粧が濃くて全て隠れたから”とか”衣裳が良かったから”と、言うものだ」と説明したのだが、マークは「どうして思ったことをそのまま言わないの?」と、不思議に思っていた。友人はその事を覚えていて、年賀状に懐かしいその話を書いていたのだ。
確かに考えれば不思議な話だ。日本人と言うのは、夫婦の事はもちろん、子供の事でも他人様から褒められると率直に「ありがとう」と言う代わりに「いえいえ…」と、否定してしまう傾向がある。
例えば「あら、ちゃんと挨拶が出来て偉いわね〜!」と、誰かが子供の事を褒めてくれたとする。「ありがとう!そうなの挨拶が上手なのよ〜」と言う代わりに、「いやいや、気分屋だから良い時だけはね…」とか「でも、落ち着きがないからね…」などと、ネガティブな事を言ったり、関係のない話まで付け足してしまう事もある。
子供は大人から褒められる事が大好き!ましてやその際、そばに自分の大好きなお父さんやお母さんがいてくれて、それを一緒に聞いてくれるなど、子供にとってはこの上なく幸せな瞬間である。それを、親がぶち壊してしまう事が多いのだ。せっかく褒めてもらった事柄を、世界一大好きなお母さんやお父さんに否定されてしまうなどとは、何とも悲しく、子供なりに屈辱を味わい、何故?と、疑問でいっぱいになるであろう。
日本特有の“謙遜”が当たり前であった私にとっては、マークの結婚式の一件もそうであったが、カナダに移り、自分に子供が生まれてからは何とも”目からウロコ”の日々であった。私は”自分の子を人前で大いに褒めて育てる”北米人の習慣に心から感動し、感心した。いや、決して彼らは褒めようとしているのではなく、心底子供の事をそう思っているのだと思う。自分のパートナーであろうと、子供であろうと自分とは別個の独立した個人である訳なのだから、自分以外の個性を認め、褒める。先ほどの挨拶もカナダ人だと「そうなの。この子はフレンドリーで、いろんな人と交流出来るのよ!」の様な受け答え例も多々見られる。
大好きなお母さん、お父さんは自分の事をこのように認め、褒めてくれている。それは当然子供の自信にも繋がり、その子が向上して行くのは当然であろう。また、親子の信頼関係ももちろん深まる。何て素晴しい事なのだろう。
日本人だとそんな事を言えば「親バカ」だと思われる…と懸念が先立つのかも知れない。この様な事を書いている私自身、自分の家族を褒める事を難しく思っている。しかし、『親バカ』って、何とも素敵ではないか!!子供は褒めよう!!周りを気にする必要はない、と私は思う。
大人だって、褒められて悪い気がする人など、決していないはずなのだから。
池端友佳理 – 京都出身。大阪の大学看護科を経て同大学病院の産婦人科で看護師として経験後、1990年に渡加。伴侶は日系カナダ人三世。一人息子(大学生)の母。1993年に自宅で池端ナーサリー託児所を開設。1999年日系文化会館内に池端ナーサリースクールを設立。園長を勤める傍ら、カナダ唯一の産後乳房マッサージ師として活躍中。