園長先生!気付けば息子も大きくなりました・・・第24回 「卒園式」
20年前に誕生した「池端ナーサリー・スクール」。その園長であり創設者の池端友佳理さんのそばにはいつも日系三世のご主人・マークさんと現在21歳で大学在住中の健人くんがいた。母親であり、教育者であり、また国際結婚移民をした友佳理さんとその家族の笑いあり、涙ありの人生をシリーズで振り返ります。
文■池端友佳理 (池端ナーサリー・スクール園長)
6月、カナダでは卒業シーズンである。ナーサリーでも卒園•修了式を挙行した。式の2ヶ月ほど前になると、各クラスで園児達が歌や発表の練習を始めるのだが、その時点ですでに胸が熱くなる。リハーサルの段階でも涙が出て来た。リハーサルが終わったあと、「先生、どうして泣いてたの?」と年長組の園児達が抱きつきながら私に尋ねる。
「だってね、先生みんなの事が大好きだからよ。ナーサリーに入って来たとき、みんなはまだちっちゃくて何にも出来なかったのに、今ではみんな本当にしっかりしてきちゃって、こんなにちゃんと上手に発表が出来るようになったでしょ。それがとってもとっても嬉しくて、涙が出て来ちゃったのよ。」
園児達は顔を見合わせて笑っていた。
1歳半からスタートし、小学校に入るまでナーサリーに在園すると最長で計4年半もの年月をともに過ごして来た事になる。
言葉も話せず、よだれかけやオムツをしてヨチヨチ歩きで通っていた子達が、少しずつ言葉が出て来て、おしっこやうんちがオマルで出来るようになり、まねっこもうまくなり、歌もだんだん上手に歌え、一人で靴を履いたり、服の着脱が出来るようになり、はさみが使えるようになったり、字が書けるようになったりするその全ての段階を見続けるのだ。
いつも先生を困らせていたやんちゃ坊主たち、好き嫌いが多くて涙しながらも最後は食べられるようになった子たち、シャイでいつももじもじしていたけれど人前で発表が出来るようになった子たち、言葉が出ないと親御さんは心配していたけれど、ゆっくり、でもしっかり伸びて行った子たち、帰り際に必ず事務所に寄って私にハグをしに来てくれた子たち…..どの子も一人一人、たくさんの想い出がぎっしり詰まっている。
卒園•修了発表会では皆、ステージの上にしっかりと立ち、胸を張って立派に堂々とした態度で発表する。その成長ぶりに感動し涙が溢れ出て止まない。そして、その子達は園から巣立って行く….喜びと嬉しさの反面、この子達は9月からもう来ないんだ…そう思うと何とも言えぬ寂しさもこみ上げてくる。真っ赤に腫れ上がった目で最後の記念撮影となった。
しかし、嬉しい事に多くの園児達が戻って来てくれる。ナーサリーでは小学生対象に日本語のサマーキャンプを行っているので、毎年夏に卒園生に会えるのも楽しみの一つである。卒園したあとも子供達の成長ぶりを追い続ける事が出来るのはこの上なく嬉しいものだ。また、卒園生が高校生になるとボランティアをしに帰って来てくれる事も増えて来ている。昨年は夏の終わりに毎年開催している夏祭りに12人もの卒園生が遊びがてら…と言いつつボランティアをしに来てくれたのだ。一人一人私にハグをしてくれてぽろっと一言「やっぱりここに帰ってくるとホッとするんだよね〜〜!」「ほんとだよね〜」
この後、私の顔がまた涙でくちゃくちゃになったのは言うまでもない。
池端友佳理 ー 京都出身。大阪の大学看護科を経て同大学病院の産婦人科で看護師として経験後、1990年に渡加。伴侶は日系カナダ人三世。一人息子(大学生)の母。1993年に自宅で池端ナーサリー託児所を開設。1999年日系文化会館内に池端ナーサリースクールを設立。園長を勤める傍ら、カナダ唯一の産後乳房マッサージ師として活躍中。