感染性心内膜炎 (心臓の感染症)|カナダと日本の医療制度の違い
セントマイケル病院の医師、ボビー・ヤナガワと川口保彦です。今回は心臓の感染症で怖い病気の一つ、感染性心内膜炎について説明いたします。
感染性心内膜炎とはどういう病気ですか?
感染性心内膜炎(Infective Endocarditis)は、心臓の内側に細菌が感染し、心臓内の構造(弁、筋肉、血管など)に細菌の塊(疣贅)が付着し、時に破壊してしまう病気です。全身の血流に細菌が流れ、各種臓器に菌塊が流れつき塞栓(血管を詰める)を起こすこともあり、非常に怖い病気です。
原因は何ですか?
まず血液中に細菌が侵入することから始まります。歯肉炎や歯科治療(抜歯など)、注射や体内への人工物留置(カテーテル、人工関節、心臓人工弁、ペースメーカーなど)、尿路感染症がきっかけになることが多いです。また、先天的な心臓の構造異常(心房/心室中隔欠損、大動脈二尖弁など)、弁膜症の既往(大動脈弁・僧帽弁の狭窄・逆流)がある場合も起こりやすいとされます。
どんな症状が出るのですか?
初期症状は曖昧で、微熱、寝汗、だるさ、疲れやすい、体重減少などが挙げられます。悪寒や筋肉痛などインフルエンザの様な症状が見られることもあります。手持ちの抗生物質などで一時的に治ってしまうこともあり、症状が隠れてしまうこともあります。しかし、病気が進行すると心臓の構造が破壊され心不全症状(息切れ、胸苦しさ、動悸、むくみなど)が現れることが一般的です。また、菌塊が全身に飛ぶことで脳梗塞を起こすことがきっかけで発見されることもあります。菌が飛ぶ影響で手足の先に赤紫の斑点が見られることもありますが、進行しないと見られないことも多く、少し稀です。
どんな検査や治療が必要ですか?
血液培養検査を行い、どの種類の菌が原因なのかを突き止め、それに応じた抗生剤治療を行います。4週間以上投与することが一般的です。また、同時に心臓超音波検査で心臓の異常を確認し、CT検査で全身への菌の影響を調べることが一般的です。抗生剤治療だけで経過を見られる場合もありますが、弁が破壊されている場合などは心臓手術が必要になります。感染した自己組織を取り除き、人工弁に付け替える治療が一般的です。感染のダメージが大きく取り除く範囲が大きいと、大掛かりな手術になることも稀ではありません。さらに手術後も感染が遷延することも稀にあります。
どうすれば予防できますか?
まず体内に菌が入らないように、手指の衛生を保ち、歯の状態を健康に保つことが重要です。処置の前後には予防的な抗生剤投与が行われることが一般的ですが、上記の心疾患や心臓手術の既往がある方は、医療機関に念押しで申告しておくことが賢明です。さらに、パーティーなどで人から予期せぬ注射薬物をすすめられたりした場合は非常に危険です。薬物のみでなく、肝炎やHIVなどの感染症、そして感染性心内膜炎のリスクを負うことになります。

ボビー・ヤナガワ
トロント大学セント・マイケルズ病院心臓外科チーフ・プログラムディレクター。トロント大学医学部卒、トロント大学心臓外科、米国バージニア州イノバ・フェアファックス病院、ニューヨーク州マウントサイナイ病院でのトレーニングを経て現職。






