東北の小さな酒蔵の復興にかける熱い想い 第41回
2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピック。東京の悲願でもあり、2013年にブエノスアイレスで開催された国際オリンピック委員会総会で開催が決まった時、私もテレビを見ながら「TOKYO」と書かれた札を見て、とてもうれしく思いました。
おそらくその時は東京だけではなく、日本中が「オリンピック」という人類の宝を自分が生きているうちにもう一度日本で見ることが出来る、という感激を共有したと思います。そんな、東京オリンピック・パラリンピックですが、日本の戦後復興を世界に示した1964年開催に続き、2度目の東京での開催となります。2020年の東京オリンピック・パラリンピックは、くしくも東日本大震災からの復興がアピールポイントの1つだったと思っています。東京で開催されますが、東北をはじめ、日本中がこのオリンピックに東日本大震災から復興した日本の姿を世界に発信したい、と考えてくれて招致をしてくれたからこそ、ブエノスアイレスでの国際オリンピック委員会総会でのスピーチの一人に右足切断の絶望の中から立ち上がった被災地宮城県気仙沼出身のパラリンピアン佐藤真海さんがいたのだと思います。
そのスピーチは、今でも東北の復興の象徴として私たちの心の中に残っています。最初の東京オリンピックは「戦後」からの復興、そして2回目の東京オリンピックは「震災」からの復興。どちらも日本が世界に「復興」の道を通して、日本人の心意気を発信していくための、価値ある大会になるものだと信じていました。
しかし、ニュースなどでもたくさん報道されましたが、今日本はこの震災からの復興を力強く発信していかなければいけない東京オリンピック・パラリンピックに対して急速に失望感が広がっています。あの招致が決まった時の高揚感は、残念ながらほとんどありません。
その理由は、様々あります。会場である新国立競技場の建設計画が当初予定よりも大幅な予算の増加により白紙撤回されたり、大会エンブレムも様々な問題が生じて撤回されてしまいました。
どちらも一旦決まって発表してからの撤回と言う事で、国民の信頼を大きく損ねてしまいましたし、被災地の住民は、被災地復興という大きな目標をこの東京オリンピック・パラリンピックに重ねていた人も多く、特に残念に思っている方々も多いです。
そして、私も思いますが、「被災地の復興」「東日本大震災」を東京オリンピック招致のために上手に利用しただけなのではないか、という疑いの目も強くなっています。本当に被災地の事を考えて招致してくれたのか、それとも震災に苦しみ、いまだに避難生活をしている20万人近くの人たちの不幸を利用したのか。
被災地の復興、そして日本全体が東日本大震災の苦悩から復興する姿を世界に示す東京オリンピック・パラリンピックなら、ぜひその姿勢をこれからもっと示してほしいですし、それを世界にどんどん発信してほしいです。このままでは被災地で苦労して生活している人たちの希望を裏切る事になります。ぜひ逆風の今こそ、日本人がみんな力をあわせて東京オリンピック・パラリンピックを成功に導きましょう。
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本文:南部美人 五代目蔵元
東京農業大学客員教授
久慈 浩介