4歳と1歳の子どもを残し母親が単身留学。それは無謀な挑戦か、それとも新しい家族のあり方なのか?|37歳で人生初の海外留学に挑戦中
夢への挑戦と家族計画の両立
時は遡ること2019年。留学を目指し始めた一方で家族が欲しいという思いもあり、どちらも諦めたくありませんでした。ほどなく念願の第一子を妊娠、出産しましたが、大学院への出願準備も並行して続け、大学院プログラムに合格することができました。さらに2023年に第二子も出産し、当初ポルトガルに子どもたちを連れてワンオペで留学する予定をしていました。
実際に事前に家族でポルトガルを訪れキャンパスや市内を見て回り、複数の保育園の見学をしましたが、預かり時間の制限や、医療へのアクセス、異国の地で暮らす子どもたちのメンタルケアなどかなり負担が大きいのではないかと思うようになりました。
不安がだんだん募る私に「行かないと後悔するから行ってきな」と背中を押してくれたのは夫と実母でした。彼らは、私が単身で留学する間、子どもたちの世話を担ってくれると言ってくれました。夫はいま、毎朝早起きをして娘のお弁当を用意し保育園・幼稚園の送り迎えをしてくれています。東京にいる実母は仕事を休みトロントに来てくれ、料理やそうじ、子どもたちのお風呂など家事をほぼ全て担ってくれています。
長女も幼稚園に通い始め最初は泣いていたものの、少しずつお友達になった子の名前を教えてくれたり、新しく習った歌を教えてくれたりするようになりました。次女も保育園に通い始めましたがすぐに馴染んで、今はランチのおかわりを何度もしているそうです。私の方がむしろ、順応に苦戦しているなと感じています(笑)。
今では毎日のビデオ通話が私たちの日課となっていますが、すっかりパパっ子になった娘たちはパパの奪い合いをして喧嘩をすることもしばしば。夫からは「帰ってこなくて大丈夫だよ」と冗談混じりに言われます。
母親としての役割と自己実現の狭間で
家族のサポートのおかげで幸運にもこうして夢を実現することができたのですがここに至るまでに母親と学生の2つの役割がぶつかる大きな葛藤がありました。
まず、娘たちとは生まれてから1日も離れたことがなく一緒にいることが息を吸うように当たり前になっていたので、それがなくなることには大きな抵抗がありました。
一方、留学先の授業はかなりハードなことで知られ、グループワークや課題などが大量に課されることがわかっていました。寝る時間も惜しんで勉強したいという思いと「そう思う私は母親失格なのでは?」と深く悩みました。
正直、今でも「私のわがままで子どもたちに寂しい思いをさせているのではないか」と自問自答したり、授業がハードすぎてつらいときは「家族に負担をかけて私はどうしてこんなにしんどい思いをしているのだろうか、早く帰りたい」と思ったりすることもあります。
そんな中、私の大きな励みになっているのが、長女が今年の七夕の時に書いてくれた短冊です。「おおきくなったらままになりたい」という夢が、書かれています。この短冊を、今ポルトガルの部屋に飾っています。それを見るたびに元気をもらっていて、娘が大きくなった時にも憧れの存在であり続けられるよう、最後までやり切りたいと決意を新たにしています。
子育て=母親?
そして、娘たちと離れて暮らしてみるという経験を通し改めて自分の状況を俯瞰してみると、「子育て=母親」と固定観念にだいぶ縛られていた部分もあるかなと思います。完璧な選択など存在しません。自分の心に正直に、そして家族と十分に話し合った上で決断することが大切だと思います。たとえ周りから理解されなくても、自分の選択を信じ続けることが、結果的に子どもたちにも良い影響を与えると信じています。そして自分とその家族での挑戦が、新しい家族のあり方、そして社会のあり方を創造していくのだと思います。