震度5弱の夜、200年の土蔵に走った3メートルの亀裂。“命の蔵”の修繕|東北の小さな酒蔵の復興にかける熱い想い【第161回】

12月8日の午後11時15分に発生した青森県東方沖地震ですが、私の蔵のある二戸市も震源に近く、震度5弱の強い揺れが来ました。スマホの緊急地震速報が夜遅く鳴り響き、そこから強い揺れが来ました。東日本大震災以降、多くの地震が来ていますが、その中でも強く感じる揺れでした。
真冬の夜中でしたので、雪も降っていますし、蔵の安全確認は次の日の朝にしました。お酒など貯蔵しているものは一切割れていませんでした。発酵中のもろみもこぼれていませんでした。ある程度は予想通りでしたが、最後の最後に確認をした、200年前の土蔵の仕込み蔵が大きな被害を受けてしまいました。
200年間、どんな地震でも割れる事の無かった土蔵の壁に3メートル以上の大きなヒビが入り、中がくっきりと見えるほど割れていました。土蔵の中は全く無傷だったことが幸いでした。しかし、外の壁は雪や雨もあり、そのままにしておくと浸食されて崩れていきます。
修繕を急いでしなければいけませんが、土蔵をそのまましっかりと直す職人はなかなかおりません。様々な方々に聞きながら、どのように修繕していくか、悩んでいるところです。
私の蔵の日本酒を発酵させている土蔵の蔵の外壁ですので、酒蔵にとって「命」ともいうべき場所に大きな被害を受けてしまい、私の心もかなり落ち込んでいました。しかし、能登の震災はこんなものでは無いくらい大変な被害でした。これしきの事でへこんでいる場合ではありません。とにかく、また大きな地震が来ても土蔵が壊れないように、万全の修理をしたいと思っています。日本全国、そして世界からご心配とお見舞いをいただき、本当にありがとうございます。
今まで200年間、東日本大震災はじめ、大きな地震でもビクともしなかった土蔵の蔵が、なぜ今、このタイミングで大きく損傷したのかは謎です。青森県八戸市の蔵もうちほどではないですが、土蔵の蔵が今までに無いくらい壁が落ちた、と言っていました。今回は東日本大震災の時よりも震源が蔵に近かったことも事実です。東日本大震災以降、たくさんの余震があった事もあります。そういった積み重ねのようなものも土蔵の破損に影響したのではないかと言われています。
しかし、明確な理由は未だにわかりません。大事な事は、これからも起きるであろう地震に耐えられるように、200年の土蔵を補強しながら生き返らせることです。土蔵の蔵の中にはうちのお酒を125年醸してきた「家付き酵母」がいます。土蔵を壊して新しい蔵を建てる事は全く考えていません。しっかりと話を聞いて補強しながら修繕していきます。

オンタリオ取扱い代理店:
Ozawa Canada Inc
現在トロントで楽しめる南部美人のお酒は、「南部美人純米吟醸」とJALのファーストクラスで機内酒としても採用されている、「南部美人純米大吟醸」の二種。数多くの日本食レストランで賞味することが可能。
南部美人 / http://www.nanbubijin.co.jp

本文:南部美人 五代目蔵元 東京農業大学客員教授
久慈 浩介
岩手県の銘酒として知られる「南部美人」は、カナダ・トロントでも味わうことができる日本を代表する酒蔵で、2011年3月11日の東日本大震災で被災した蔵のひとつだ。5代目である久慈さんは震災直後から日本酒を通じて地域復興の様々な取り組みを行ってきた。本連載では久慈さんが体験したことや復興の取り組みなどを寄稿してもらう。













