ここまで津波は来ない | 東北の小さな酒蔵の復興にかける熱い想い【第50回】

「ここまで津波は来ないだろう」こういった考え方が実は東日本大震災津波の被災地である岩手県の沿岸部には実際にありました。海のすぐ近くに住んでいるのに「ここまで津波は来ない」と言い切ってしまいます。これはなぜなのでしょうか。
実は岩手県の沿岸部は歴史的に今までも大変多くの津波の被害を受けています。その中でも近年では1960年のチリ地震津波があり、これは大変大きな津波で、沿岸部は大きな被害を受けました。
このチリ地震津波の際に、津波が来なかった地域の人たちの言葉が「ここまで津波は来ないだろう」です。同じ沿岸部に住み、同じ海が見える生活をしていて、大きな津波を経験していない人も実は多くいる、という事です。東日本大震災以降、早稲田大学の協力で津波犠牲者の被災場所を地図上に示したマッピングの分析では、チリ地震津波の浸水エリアよりもその当時到達しなかった地域の6割の人が今回の東日本大震災津波で亡くなっていたという衝撃の事実が判明しました。
過去の津波体験が裏目に出た形です。今まで何度も津波被害にあっていた沿岸部の海に近い地域の人たちは、揺れたら津波が来る、という意識と経験がしっかりとあるために、早期の避難を実践していて、そういう人たちは助かりました。

特に老人たちは過去の経験を良く知っていて、さらには体が動かないこともあり、ここにいれば大丈夫、となってしまい、その避難を助けていた人たちと一緒に流されてしまう例も多くみられました。
さらには東日本大震災津波では、公職者の犠牲も多く出ました。市役所の職員などは、地震が発生すると、自分の家族を逃がしに行くより先に公務を優先して避難誘導をしなければいけません。また、消防の職員は津波が来る防波堤に走り、水門を閉める仕事をしなければいけません。
東日本大震災ではこのような公職者の犠牲者は大変多く出ました。また大槌町役場のように、そもそも役場自体が津波で決壊してしまい、役場で仕事にあたっていた公職者が多く犠牲になりました。役場はもともと津波などの災害が来ない場所に建設されるべきなのでしょうが、小さな自治体は財政難から移転なども出来ずに、内勤の公職者が大勢亡くなりました。
公職者の犠牲をなくさなければいけないのは明らかで、そのためには公務の中に「逃げる」という文字を入れなければいけません。役場の職員が大勢亡くなると、復興の際に大きなマイナスになりますし、何よりも命を懸けてまで行う公務の責任をイチ役場職員に課すのはあまりにも重荷です。もう一度深く考えてみなければいけない問題です。

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本文:南部美人 五代目蔵元
東京農業大学客員教授













