東日本大震災から9年|東北の小さな酒蔵の復興にかける熱い想い【第93回】
2020年3月。東日本大震災から9年を迎えます。長いようで短いような9年。区切りの10年まであと1年となりました。今年も政府主催の追悼式典が行われますが、先日のニュースで日本政府主催の追悼式典は10年で一区切りにすると報道されました。確かに10年一区切りですが、心に区切りはありません。すぐさま岩手県の被災地の市長が「市が存続する限り、追悼式典はやり続ける」と宣言をしてくれました。素晴らしい市長だと思います。政府の気持ちもわかりますが、やはり10年という区切りを前にこういった話が出ることが少し悲しかったです。
この9年で被災地にはたくさんの方々が関わってくれました。ハード事業の復興も進み、この後は安定的な発展にどのように努力をしていくか考えるフェーズになってきています。しかし、人口は流出してしまい、被災地に戻る人は少なく、新たに住み始める人も少ないとくれば、未来は明るくありません。そんな現状でも現地に住む人はあきらめずに故郷の復興のために今日も汗を流して活動をしています。9年経過して、10年までの1年間で何が出来るのだろうか。被災地の方々とそれを助けてきた外の人の絆をもっと生かして何かできないか、いつも模索しています。間違いなく震災前よりも、震災後の方が外との絆は深まっています。
震災前に戻るのではなく、震災以前よりさらに良い街にしていくことこそ残された私たちの使命でもあります。そのためには行政だけではなく、民間もさらに元気を出していかなければいけません。
震災から10年の来年は、間違いなく特別な1年になります。オリンピックも終わり、その先に被災地は世界へ何を発信するのか。そこも本気で考えなければいけません。まだまだやり残したこともあります。やれることもまだまだたくさんあります。英知を集結して、本当の意味での「復興とは何か」を世界に伝えられるような被災地になっていかなければいけません。まだ頑張れる、まだ前に進める。進める人が出来るだけ大きな旗を振って、推進力を維持しながら頑張りたいと思います。
オンタリオ取扱い代理店:
Ozawa Canada Inc
現在トロントで楽しめる南部美人のお酒は、「南部美人純米吟醸」とJALのファーストクラスで機内酒としても採用されている、「南部美人純米大吟醸」の二種。数多くの日本食レストランで賞味することが可能。
南部美人 / http://www.nanbubijin.co.jp
本文:南部美人 五代目蔵元 東京農業大学客員教授
久慈 浩介
岩手県の銘酒として知られる「南部美人」は、カナダ・トロントでも味わうことができる日本を代表する酒蔵で、2011年3月11日の東日本大震災で被災した蔵のひとつだ。5代目である久慈さんは震災直後から日本酒を通じて地域復興の様々な取り組みを行ってきた。本連載では久慈さんが体験したことや復興の取り組みなどを寄稿してもらう。