マッサージセラピーは一時凌ぎか?|オリンピック選手もサポートするカナダ公認マッサージ・セラピストが教える身体と健康【第104回】
「マッサージに長年通っているが、一時凌ぎにしかならない!」というマッサージセラピストにとっては極めて耳の痛いご指摘を耳にする事があります。なぜこの様なイメージを持つ人いるのか?考えてみました。
①マッサージセラピーの特性
カナダにおけるマッサージセラピーとは通常オイルを使う「Swedish Massage」を指します。このテクニックは肌に負担がかからない程度のオイルやクリームを使用し、ゆったりとしたリズムで身体の筋肉の緊張をほぐしていきます。筋肉や骨格に沿ってオイルを用いてマッサージをして血流を上げる事などにより身体の深くまで働きかけていくテクニックは、痛みが少なく無理なく筋肉に深く働きかけることができるので、年齢を問わず人気があります。また、一定したリズムの体へのアプローチは自律神経の緊張を和らげてストレスリリースなど体機能のバランスを整える効果も見込まれます。
多くのメリットが見込まれますが、このテクニックだけだと「慢性症状や筋肉レベルを超えて腱や靭帯にまで緊張が及び関節の運動制限がある(四十肩、ギックリ腰など)」などのコンディションのアプローチには弱い一面があります。
慢性症状改善には、「Swedish Massage」の得意とする心地よいアプローチに加えて、深い強い刺激をするなどのアプローチが必要なケースが多いので、基本的に「気持ち良いマッサージ」と「慢性症状に効果のあるマッサージ」は両立しにくいという現状があります。
特性を理解して両方の良いところを使って効果を上げてくれるマッサージセラピストも多く存在します。
これは動画を参考にする時にも当てはまりますが、肩こり一つとっても原因は様々なので、いくら人気の高い情報でも1つの方法で全てのケースに効果のある方法というのはほぼありません。自分に合った方法を見極める為には自分のコンディションを正しく理解することが大切です。
過去のコラムでコンディションを見極める方法を説明しています。
https://torja.ca/aoshima-tadashi-103/
②慢性症状改善に必要な方法を説明していない
なぜ完治しないかと言うと、慢性症状は長年患部に負担をかけ続けた結果起こる症状でなので、病気などの症状と違いウィルスが居なくなったので完治とはなりにくく、痛みなどの症状を改善した後に、その症状を引き起こした根本原因を改善しなければ同じ問題を繰り返してしまうのです。
慢性症状を引き起こす原因は、間違った体の使い方(関節の動かし方、姿勢など)が主なものです。ここで難しいのは、間違った体の使い方は仕事などで仕方なく行われているケースが多いので、問題となる動きを止めてくださいと簡単に言えないのです(やらざるを得ない)。
また、セラピストも安易に「もっとストレッチしてください!」などのアドバイスをして済ませているのも問題です。ストレッチをはじめ自分に合ったコンディショニングを正確に行うには問題点をしっかりと理解するのが大切です(理解すれば、余計な事をする必要性が無くなるので、やることは極めてシンプルになります)。
情報が溢れる今日、「ストレッチ方法なんてネットでいくらでも探せるのでは?」と思われる方も多いかもしれませんし、ネット上の情報を否定する気持ちもありませんが、ここでアドバイスしたいのは、慢性症状の原因は筋肉レベルではなく腱や靭帯といった深いレベルにあるケースが多く、一般的にネット上のストレッチ、エクササイズなど自分の体の動きを使ったアプローチでは改善しにくいことを理解する必要性があるのです。
セルフケアのポイント
①問題点の理解
②ストレッチ、エクササイズの目的の理解
③個々に必要なアプローチの追加
をセットで説明理解する事により、マッサージセラピーの効果を感じて頂くケースが多くなるでしょうし、良いコンディションを維持しやすくなると考えています。
■具体例
ふくらはぎをストレッチの追加アプローチ
①ふくらはぎのストレッチ2種類
ふくらはぎは表面と深部の2層構造なので2種類の違った筋肉をそれぞれ伸ばすには2種類の違ったストレッチが必要になります(膝を伸ばしたポジション+膝を曲げるポジションで足首を甲側に倒すストレッチ)。
②追加アプローチ(ふくらはぎの筋肉付着物をセルフマッサージ)
❶アキレス腱を掴んで横に伸び切るところまで押して1分間ホールドする。
❷膝裏3点指圧…ふくらはぎの膝下3センチくらいのところを深くサグって筋張って触るとビーンとくるポイントを押して1分間ホールドする。